EXILE NAOTO(EXILE/三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)が映画初主演を務め、俳優の石橋凌が出演する映画「DANCING MARY ダンシング・マリー」が、11月5日より全国で順次公開中。撮影は新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう以前の3年前。NAOTOと石橋は、過ぎた月日を感じさせないほど、作品の思い出をよどみなく語る。撮影エピソードを尋ねると共に、ミュージシャンでありながら俳優であるという共通項を持つ彼らへ、“演じること”の魅力を聞いた。

■撮影は新型コロナウイルスの前…NAOTO「思い出すだけで楽しい気持ち」

――3年前に撮影された作品です。公開に向けての思いを聞かせてください。

NAOTO:撮影してからすごく時間がたってしまって、世の中も大きく変わってしまいました。最近、撮影のことを思い出す機会をたくさんいただきますが、毎日楽しく輝いている日々だったなと、思い出すだけで楽しい気持ちになるような撮影でした。

初主演ということでプレッシャーもあったんですが、映画そのものがずっと好きでしたし、SABU監督の作品も何本も見ていたので、初めての主演映画でSABU監督の作品に出させてもらえるという喜びの方が圧倒的に勝っていました。すごく輝かしい思い出ですね。

――公開を待つ期間はどんなお気持ちだったのでしょうか?

NAOTO:その間にスペインの「シッチェス・カタロニア国際映画祭」に出させてもらったんです。本当に歯がゆい気持ちではあったんですが、この作品が僕らの代わりに先に世界中を旅してくれて、やっと日本に帰ってきた、という感覚。だから愛着がすごく湧いています。

――石橋さんはいかがですか?

石橋:この作品の後、ドラマや映画に何作品か参加してきましたが、リハーサル中にはマスクを着用しなくてはならないし、現場に入る前には検温をする時代に入っていったんです。この作品はそうなる前だったので、NAOTOくんの言うように楽しい現場でした。

コロナの兆しもない。九州の小倉と台湾の高雄での撮影に参加したんですが、両方とも非常に楽しい現場だったという思い出があります。

――コロナ禍になって、今は打ち上げもできないですが、この作品ではいかがでしたか?

NAOTO:打ち上げというほどではなかったですが、高雄でオールアップした際にみんなでご飯に行きました。僕は、シッチェスで監督と石橋さんと開放的なシッチェスの海を見ながら乾杯したことが一番の打ち上げになっていたように思います(笑)。ご褒美をもらったようでした。

■石橋凌の40年を超えるキャリアにNAOTO「最大限の尊敬」

――お互いの印象をお聞かせください。

石橋:現場でも感じていましたし、出来上がったものを見ても感じるんですが、NAOTOくんは非常に自然体。僕は個人的に非常にやりやすかったです。

NAOTO:石橋さんは殺陣のシーンをやられているとき、すごく極寒なのに一言も寒いと言わないんです。ただひたすら撮影に集中されている姿を見て、身の引き締まる思いでした。役としても“アニキ”なんですけれども、カメラが回っていないところでも“アニキ”として作品を引き締めて、重厚感を与えてくださった存在だと思います。

――NAOTOさんが所属する三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEは10周年を迎えました。NAOTOさん個人はそれ以前からご活躍されていますが、石橋さんは40年以上のキャリアです。

石橋:僕らのバンドは、それまで小さいライブハウスでずっとやっていたんです。歌の内容に社会的なことも含んでいたので、よく「メッセージバンド」と呼ばれて、いわゆるメジャーな路線に乗れなかったんですよ。

だけど10年掛かって、やっと日本武道館のステージに立つことができたんです。時間はかかったんですが、こだわりを持ってやってきて良かったなと思えたのが10年目でした。

――当時の石橋さんにとっては「やっとここまできた」と思える10年だったんですね。NAOTOさんにとっての10年はどんなものでしょうか?

NAOTO:僕らはEXILEの弟分としてオーディションでも注目していただいて、たくさんの人に知ってもらっている中でのデビューだったので、すごく恵まれた道を用意してもらっていたんです。10年続けてきて、なによりも難しいのはみんなに愛されることというより、それをずっと続けていくことだと思うんです。

メンバーともよく話すんですが、三代目J SOUL BROTHERSとして、どこまで自分たちのスタイルを貫き通しながらファンの方たちに愛してもらって輝かせられるか、ということがここからのテーマになると思います。だから40年って数字は、それを続けられていることに対して、本当に最大限の尊敬ですね。

――三代目J SOUL BROTHERSの40周年はどうなっていますかね。

NAOTO:40年って…(苦笑)。すごいですよ。

石橋:いけるいける。

NAOTO:いけます? あと30年ですよ。踊りは少しずつ、今とは違った表現の踊りを模索するんでしょうね。30年といったら僕はもう68歳になるので(笑)。でも石橋さんはまさにやられているわけですから、夢をもらえますね。

■石橋凌「相乗効果が生まれると両方やっていてよかったなと思う」

――お二人とも、俳優でありミュージシャンという共通点をお持ちです。どちらもやっていくことに難しさを感じることはありますか?

石橋:ミュージシャンでいるときの自分は自分自身ですが、俳優業はどなたかが書いた本の人の人生を生きる手段。その役柄とかその作品のテーマから学ぶことが毎回あるんです。それは自分が詩を書いたり、パフォーマンスをしたりするときに還元できたらなと思っています。まったく違う仕事ではあるんですが、そういう相乗効果が生まれると両方やっていてよかったなと思います。

NAOTO:僕もすごく感じますね。僕はパフォーマーですが、バラードだったりロックテイストだったり、曲によって「失恋した男」「ハードボイルドな男」などと演じ分けるんです。お芝居をさせていただくようになって、その引き出しをもらったような感覚はありますね。

――NAOTOさんの今回の役は「しがない市役所職員」ですが、パフォーマンスの引き出しとして持ってこられそうですか?

NAOTO:持っていきましょう。そういう曲を作りましょう(笑)。僕が演じる藤本もロックしている部分もあるので!

石橋:NAOTOくんのそのシーン、映画祭で現地の人から拍手が起きていたんですよ。それはNAOTOくんが市役所職員に化けているからだと思うんです。映画を通してキャラクターに共感したから出た拍手なんですよ。

――たしかに、NAOTOさんを完全に市役所職員として見られるからこその良いシーンなんですよね。

石橋:そうです。

――「しがない市役所職員」というキャラクターは、どんなことを意識して演じられたんですか?

NAOTO:ああしてこうしてと細かく言う監督ではなかったんです。でも、そのシーンに関しては監督から「とにかく格好悪くていい。格好悪いことが格好良いんだ」と言っていただいたんです。

藤本は、たぶんこれまでの人生で一度もあんなふうに自分を開放したことがないんですよ。そういう「感情が先に行ってしまって体が追いついていない感じはこうだろうな」というのはイメージして演じました。

■「音楽をやめて俳優として生きていくべきか」石橋凌が松田優作さんに尋ねると…

――石橋さんは「ヤクザ幽霊」という特殊な役どころですが、幽霊役のご経験は?

石橋:あります。豊川悦司さん主演で瀬々敬久監督の「DOG STAR」という作品でした。盲導犬と人とのつながりを描いた映画なんですが、事故で死んでしまった元ボクサー役で、幽霊として出てきました。

――今回の幽霊とはまた違いそうですね。

石橋:全然違いますね(笑)。

NAOTO:あのビジュアルはすごいです。

――短刀が体中に刺さっているんですよね。

石橋:NAOTOくんと山田愛奈さんと3人で、あの姿で台湾の市場を歩くシーンがあったんです。ゲリラ撮影だったので、現地のおばあちゃんが近づいてきて「あんた、こんなに刺さっていて生きているわけない。何で歩いているの?」って、ずっと僕に話し掛けるんです(笑)。とりあえず撮影だから離れてもらったんですが、休憩に入ったらまた近づいてきて「あんたそんなに刺さっていて」って(笑)。

NAOTO:あれはすごかった(笑)。みんな振り返っていましたね。

――たとえ刺さっていなくても着物姿ですし、現地の方からしたら珍しかったでしょうね。ところで、お二人は霊感はありますか?

NAOTO:僕は感じたことないですね。

石橋:僕は経験があります。幽霊を見たわけではないんですが、普通では考えられないようなことが起きたんです。

僕が一度、音楽をやめるきっかけになった出来事です。松田優作さんが亡くなられた後、お葬式があって火葬場にバスで行くときの話なんですが、その日は朝から曇っていたんです。僕は優作さんが亡くなられたのがあまりにショックで、「いったい何が起きたんだろう」というような状況でした。そしたらいきなり、重くのしかかっていた雲が割れて太陽が出てきて、すごく暖かくなったんです。「こういうこともあるんだな」と思っていました。

それから2週間くらい後、バンドのツアーで北陸から東北方面に電車で向かっていたんです。その時にふと思って、自分が俳優をやめてミュージシャンとして活動するべきか、音楽をやめて俳優として生きていくべきかを、心の中で優作さんに尋ねたんです。答えがあれば虹をかけてください、と。そうしたら、俳優一本で生きていくべきか、と聞いたときに山にくっきりと虹がかかったんです。

NAOTO:すごい…。

石橋:僕の中では、その時に決めましたね。

NAOTO:それは信じますよね。僕は経験したことはないですが、そういう話を聞くとこの作品でもあるように、自分には何かお役目があるんじゃないか、とか、そういうきっかけになる瞬間があるのかな、とは感じます。現象としてはまだ現れていませんが、否定もできないですよね。

◆取材・文=山田健史