よしながふみによる同名人気漫画を、西島秀俊・内野聖陽のダブル主演で実写化した劇場版「きのう何食べた?」。本作で、磯村勇斗が、ドラマ(2019年ほかテレビ東京系)でも大好評だったジルベールこと井上航を演じる。

――ジルベール役が決まったときはどう思いましたか?

セクシャルマイノリティーを演じるという意味での責任は感じました。ただ、たまたま筧さん(シロさん/西島)とケンちゃん(ケンジ/内野)、大ちゃん(山本耕史)とジルベールが同性愛者だったというだけで、作品自体は日常や食事にもフォーカスを当てているので、役柄としては自然体でいられたんですよね。日常生活を切り取っているからこそ、この役を演じてみたいなと思ったんです。

――今回の劇場版で、ジルベール役は3回目になりますね。

筧さんとケンちゃんと大ちゃんと4人で食事をするシーンがクランクインだったので、あぁこんな雰囲気でジルベールってこんな立ち位置だったなと思い出しながら演じました。ジルベールはわがままなんですけど、彼の言っている言葉って同性愛の方たちの気持ちを代弁している部分があるんですよね。普段は隠したり遠回しにしたりすることや悩みを、彼はストレートにぶつけることができるので、魅力的だなと。ただ、それがすごく子供っぽくて(笑)。扱うのが難しいのが難点でもありますね。

■「あまり相談はしない、自分で解決しちゃうタイプ」
――劇場版では、お互いに心の内を明かせなくなってしまったシロさんとケンジの様が描かれていますが、磯村さん自身は悩んでいることがあったら話しますか?

僕自身はあまり相談はしないです。自分で解決しちゃうタイプ。基本的に考え過ぎてワーッってなっても、寝て起きたらどうでもよくなっちゃうんですよ。自分が悩んでいることって、本当はどうでもよかったりするんでしょうね。劇場版では、筧さんとケンちゃんが、お互いに“言えない”時間を通して愛の深さを確認し合うんです。亀裂が入ったり誤解を生んだりして、それでもお互いを信頼して愛し合っていくというのは、どんな形でも変わらなくて誰にでもあることなんだろうなと思います。

――本作を見ると、日常の中にあるささいな幸せの尊さを実感します。磯村さんは日々の生活を送る中で、どんなことに幸せを感じますか?

これじゃなきゃ幸せを感じられない、ということは僕にはないんです。ちょっと遠出して食べたかったカレー屋さんに行くとか、不意に入ったお店がすごくおいしかったとか、お風呂上がりに夜風に当たってぼーっとしている時間とかも幸せ。いろんなところに幸せってあると思うんですけど、それを自分がどう感じられるかですよね。僕自身はその幸せな瞬間を結構若い頃から気付くことができました。でも、そればかりじゃなくて、退屈だなぁって思う瞬間もありますよ(笑)。同じことを繰り返すのが嫌いなんですが、そんな時間を過ごしているときもあります。

■「何でも決め付けてしまったら退屈になってしまう」
――本作を見終わった後、大切な人を思い浮かべる人も少なくないはず。磯村さんが大切にしている人を教えてください。

僕が大切にしたいと思う人は、自身を分かっていて大切にしている人ですね。自分をほったらかしにしている人は性格にも出ると思うので、接していると何となく分かるんです(笑)。自分を愛せない人は他人も愛せないですから。僕に愛をくれる人に対してはありがたみを感じるし、愛を返したいなと思うんですけど、無理はしないですね。すぐ返すこともあるし、月日がたって何年後かに返すこともあるだろうし。お芝居でも同じですが、決め付けたり縛ったりするのではなく、そのときに感じた気持ちを大切にしていきたいです。何でも決め付けてしまったら、それこそ退屈になってしまいますから。

取材・文=横前さやか