アニメ『ラブライブ!』シリーズの絢瀬絵里役や『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズの月読調役などで人気を博し、卒業を発表したばかりのfripSideの2代目ボーカリストとしても10年以上の活動歴を誇る声優の南條愛乃。11月10日に発売されたニューシングル「EVOLUTiON:」は、アニメ『進化の実〜知らないうちに勝ち組人生〜』のオープニングテーマ。彼女が“南條愛乃”名義でテレビアニメのオープニングを歌うのは、2012年12月のソロデビュー以来、今回が意外にも“初めて”のこと。

「“グリザイア”シリーズをはじめ、これまでにエンディグテーマは何曲も歌わせていただきましたし、アプリゲームのオープニングテーマを歌わせてもらったこともあるんですけど、アニメのオープニングテーマは一度もなかったんですよね。来年ソロ10周年を迎えるのに1曲もないんだと思ってて…。いろんな方がオープニングテーマを歌われているのを見て、ちょっと置いてかれてる感はありましたね」

待望のオープニングテーマの決定にSNS上は「初!」や「おめでとう!!」というコメントで沸いたが、本人にはレコーディング中の何気ない会話の中でぬるっと知らされたそう。

「私、事務所からはソロの楽曲としか聞かされてなかったんですよね(笑)。レコーディング中にディレクターさんとの会話の中で“オープニング”という単語が出てきて。「え? オープニングなんですか?」って驚きつつ知りました(笑)。私にとっては記念すべき初のオープニングテーマなんですけど、『やったね!』ってみんなで喜ぶ瞬間はなかったです。ただ、ファンの方々が、私以上に喜んでくれて。急にプレッシャーを感じたりしましたけど、曲への向き合い方としてはエンディングテーマを歌わせてもらった作品と変わらずに頑張ろうっていう思いで歌わせていただきました」

■歌った当時の私の心境とリンクしているところがあった

レコーディングに臨む姿勢は変わらずも、求められるものは違っている。彼女がこれまでに歌ってきたエンディングでは、登場人物の心の奥深くを描いたバラードが多かったが、本作は、“言いわけレベル:15,000,000,000”や“勇者スキル”など、アニメ主題歌らしい単語が並ぶ、疾走感あふれるロックチューンとなっている。

「遊び心に溢れた歌詞になってるんですけど、歌った当時の私の心境とリンクしているところがあって。特に“何が大切か見極めて進め”というフレーズ。コロナ禍になって、それまでは当たり前だと思っていた常識が一気に崩れていったし、自分と価値観が合う人をより大事にしていきたいなと思うようになった。この歌詞を見た時に、今の自分が考えていることと重なると思ったし、この強い曲調と進化というパワーワードで、誰かの背中を押すような曲にもなりそうだなと。曲調が強いだけじゃなくて、誰かにとってのエールになるという意味でも、アニメのオープニングらしいなと感じたし、アニメ本編と同じく、歌詞にも“ワンパンチ”“摩訶不思議”といったパロディ要素が入っていて。ちゃんと『進化の実〜』のオープニングテーマを歌ってるんだなっていう実感がありましたね」

■一度、見失ってしまった自分の軸を再認識したい

恐れや迷いを捨てて、新しい扉を開く呪文“EVOLUTION”=“進化”というフレーズをパワフルにエネルギッシュに歌う彼女。プライベートでは何か“進化”したことはあるのだろうか。

「いや、退化してますね。コロナ禍に入って、”何もしないをする”生活を送ってたので(笑)。ただ、変化はしてるなと思います。否が応でも自分が何を大事にしたいかを見つめ直す時間があって…。振り返ってみると、20代後半は自分にとって忙しい時期が続いていました。ところてんが押し出されるようにお仕事をしていたし、自分の生活を犠牲にして、自分を押し殺して仕事をしていたんですね。その結果、何が手元にあるんだろうなと思ったら、個人の南條愛乃の生活には何も残ってなかったんです。もちろん、いろんな経験はさせてもらったんですけど、だからと言って、仕事しかない生活は虚しいなと感じて…。だから、30代に入ってからは、自分個人も大事にしようと思ったし、自分のペースを壊してまで、自分を見失いながら仕事をするのはやめよう!と思って。今後また、がむしゃらに仕事がしたいという時期が来るかもしれないけど、今は自分がちゃんと見えてる、認識できる状態で仕事をしたい。そのことに気づけたのは、大きな変化だなと思いますね」

社会の常識や他人の評価に惑わされることなく、自分の内心の声を聞き、本来の自分を取り戻すこと。それが、ソロデビュー10周年を前に彼女がやるべき最優先事項なのだろう。

「私は今、何もしないをしているんですけど(笑)、自分はこんなに穏やかだったんだなって感じてて。この仕事をする前は、おっとりしてたはずなんですよね。原点回帰というか、ちょっとずつ自分の呼吸のペースを少し思い出せるようになってきた。20代は忙しく、大きな仕事など、ありがたい経験もできたけど、どこかで自分とはかけ離れていったし、いまだに微妙に引きずっているところがあって…。その辺を自分の中でうまいこと折り合いをつけて、整理していきたい。一度、見失ってしまった自分の軸を再認識したいし、自分らしさを理解した上で仕事していきたいですね」

■人を攻撃する言葉を選ぶのか、自分の大事な人を守る言葉を選ぶのか

ニューシングルのカップリングで、自身が作詞を手掛けた「全ては不確かな世界」には、そんな彼女の心境がより詳細に描かれている。

「自粛疲れもあるのかもしれないけど、個人的には、 世間的にSNS上での言葉も荒れているように感じるし、ギスギスしているなと…。でも、そこで選んだ言葉の積み重ねが、結局は、その人の生き方になり、人生になっていくと思うんですね。人を攻撃する言葉を選ぶのか、自分の大事な人を守る言葉を選ぶのか。どちらを選ぶのかは自分次第だし、じゃあ、どう生きていきたいのか?ということを問いかけるような歌詞になってます」

自分自身の“生き方”を根底にしたアップテンポのポップロックナンバーは、12月22日(水)に発売予定のアルバムにも収録される予定だ。

「私のアルバムはいつも誕生日近辺(7月12日)にリリースされていたので、夏発売だったんですよね。でも、今回は冬に出せることになって。個人的には夏生まれだけど冬のほうが好きなんですよ。夏より断然、秋冬が好きだし(笑)、冬にアルバムを作る機会が次にいつ来るかはわからないので、思い切って冬ソングまみれのアルバムにしようと思ってますね」

■冬が好きな人にはぜひ聴いてほしいアルバムになってます

ライブアルバムやアコースティックアルバムを挟み、オリジナルフルアルバムとしては、前作『サントロワ∴』以来、実に約4年半ぶりとなる1枚は、『A Tiny Winter Story』と名付けられた。同名のリード曲はその名の通りのウィンターソングとなっているが、ある仕掛けが用意されている。

「南條ソロ曲でかつて1曲だけ冬の曲があって、それが「白い季節の約束」だったんですね。6thシングル「光のはじまり」のカップリングで、リリースタイミングは初夏だったんですけど、冬に開催される5周年ライブに繋がる1曲にしたいなと思っていました。冬になっても、ファンの人と同じ気持ちでいられたらいいな、一緒にいたいなっていう曲を書いたんですね。そして、来年10周年を控えているので、今5年越しのアンサーソングを描いたら面白いかなと思って…。「白い季節の約束」が女の子目線の曲に対し、「A Tiny Winter Story」はその時一緒にいた男の子側からの視点となっています。アンサーソングだと気づける誘導として“白い季節の約束”と歌詞に入れたり、「白い季節の約束」で使っていた“横顔”などのキーワードを入れつつ、冬の日常的な穏やかな幸せを歌う曲になったし、他にも、凍てつく冬を表現したアップテンポな曲もある。冬が好きな人にはぜひ聴いてほしいアルバムになってます」

(取材・文/永堀アツオ)