主演作「顔だけ先生」(毎週土曜夜11:40-0:35、フジテレビ系)も放送中の神尾楓珠がゲイの高校生・純を演じた映画「彼女が好きなものは」が、12月3日(金)に公開される。原作は浅原ナオトの小説「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」。純のセクシャリティーを知らずに彼と付き合い始めるボーイズラブ好きの同級生・紗枝を山田杏奈、妻子を持つ純の恋人・誠を今井翼が演じ、繊細な恋物語が描かれる。本作で“合間に役が抜けなかったのは初めて”というほどの熱演を見せた神尾に、真摯(しんし)な思いを聞いた。

■「人は誰かの助けがないと生きていけない」撮影を通じて得た気付き

――純の抱えている葛藤は、一言では言い表せない複雑なものでしたね。

神尾:純としては、これまでの歴史で“普通”とされている価値観に沿っていない自分が受け入れられない。その“普通”に沿った方がいいんじゃないか、という悩みから「普通になりたい」というセリフが出てくるんだと思います。何が正解かは分かりませんが、“お母さんを失望させないように生きなきゃいけない”とかいろいろな悩みや葛藤があるから、純を演じるのはめちゃくちゃ難しいなと思いました。

――純という人物に対しては、どのような印象を持ちましたか?

神尾:純は普段から学校で気を使って過ごしていて、引け目も感じながらも周りに合わせて生きている。大人びていて、なかなか高校生にできることではないと思います。僕も高校生活を円滑に進めるために自分の意見をあまり言わず、劇中の言葉で言うと「世界を簡単にしようとしていた」わけですが、純はもっと自分を隠して生きていますよね。でも結局は紗枝(山田杏奈)にも亮平(前田旺志郎)にも、いろんな人に助けられていて。“結局人は誰かの助けがないと生きていけない”ということに、この作品で初めて気付きました。

――紗枝を演じる山田杏奈さんとは、今回が3回目の共演だとか。

神尾:お互いに細かいことまで言わなくてもいいので、やりやすかったです。山田さんは冗談を言っても乗ってくる明るい方ですね。キスシーンの前後も、もう照れたりしません(笑)。純が紗枝にキスをしたのは、自分の中で何かが変わればいいという、賭けのような思いがあったのだと思います。愛情というよりはきっかけのキスですよね。

■役に没頭したことが自信にもつながった

――純の恋人である誠を演じた今井翼さんの印象は?

神尾:「若い頃の今井さんに似ている」と言われたことが何回かあるので、その2人が並んでいてもいいのかな?と思いました(笑)。今井さんも「系統は一緒だね」と言っていました。現場では納得がいくまで監督と話されていて、すごくまじめな方なんだなと。ただ、クランクインの日はすごく緊張されていましたね。あれだけのキャリアがある方でも緊張するんだなと驚きました(笑)。今井さんは本当の恋人のように感情を向けてくれました。ベッドシーンは特に話し合いもしていなくて、今井さんがどんな感じで来るのか分かりませんでしたが、結構ちゃんと来てくださったので「あ、良かった」と。緊張はしませんでした。純と誠にとっては何回もしていることですから。

――撮影中はどのような心境でしたか?

神尾:どんよりとはしていました。合間には(前田)旺志郎が盛り上げてくれましたけど、それに100%乗っかることはなくて。普段は乗るんですけど、今回はなぜか乗れなかったです。これまで“合間に役が抜けない”ということはなかったのですが、そこまで没頭して役とシンクロできたことは自信にもなりました。

――草野翔吾監督も「どこか影があって空気がぴったり」とコメントされていました。

神尾:本読みの段階でそう言ってくださったので、現場に入っても自信を持って演じられました。監督とは作品や純に対する解釈が一緒で、ひたすら褒めてくれましたね。僕は褒められると伸びるタイプなんです(笑)。

――完成した作品をご覧になって、いかがでしたか?

神尾:演じているときは「もっと繊細に演じなきゃいけないかな」と思っていましたが、実際に見ると繊細過ぎて、これで伝わるかな?という不安はありました。今、不安です(笑)。現場では分かりやすく演じたつもりなんですけど、映像ではあんまり変わっていないような気がして…。伝わっていたらうれしいです。

――神尾さんがお気に入りのシーンはどこですか?

神尾:好きなシーンは…何だろう。紗枝が全校生徒の前で話をする体育館のシーンは、いち観客としても良かったですね。病室でお母さんに感情をぶつけるシーンも、感情の演技が大変だったので印象に残っています。あの場面はとても大切で、純が唯一、裸の感情をぶつけるところ。今まで我慢していた時間や熱量の分だけ感情が出ないとおかしいので、思いっきり感情を出すことを意識していました。