『潜水艦カッペリーニ号の冒険』で“陽気なイタリア人”を演じる3人が二宮和也との撮影を振り返る「二宮さんは現場の先生でした」<インタビュー>
日本、ドイツ、イタリアを中心とする枢軸国とアメリカ、イギリスを中心とする連合国の間で戦われた第二次世界大戦だが、国内の政権が変わったことでイタリアは連合国につくことに。そんな中、状況を知らず物資輸送のために敵対する関係になった日本に向かっていたイタリア人が…。歓迎されると思って日本に到着した彼らの前に、愛国心を誓った日本海軍少佐・速水洋平(二宮)が立っていた。
今回は二宮とのシーンも多かったイタリア人3名にインタビューを実施。アベーレを演じたペッペ、シモーネを演じたベリッシモ・フランチェスコ、アンジェロを演じたパオロに、二宮との思い出や、撮影の裏側について聞いた。
――今回はオーディションで選ばれたとのことですが、そのときの思い出を教えてください。
ベリッシモ:結構、人が多かったんですよ。イタリア人じゃない人もいて。僕たちはみんなバラバラで受けました。
ペッペ:役は3人分ありましたが、この人になりたいとかで応募したのではなく、このうちのどれかになるかも…くらいの感じで。
パオロ:そして自分が何をできるのかをいろいろ聞かれました。ギターやマンドリンが弾けるのか、料理がどこまでできるのか…とか。僕はオペラができるので、それを伝えましたね。台本にオペラを歌うシーンがあるのを見つけ、僕は出演できるならアンジェロの役だなと勝手に思っていました(笑)。
ペッペ:オーディションで歌った?
パオロ:全然歌っていない(笑)。
ベリッシモ:でも歌わなくても分かると思う。普通に話している声からして発声がすごいから。で、アンジェロの役になったわけだし。
――自分たちの役を聞いたときはいかがでしたか?
ペッペ:なんか不思議でした。パオロは音楽ができるのに料理上手なキャラクターになっていて、ベリッシモは料理人なのに楽器を扱うシモーネだったり。
ベリッシモ:これは監督のこだわりですね。いまだに謎ですが…。
ペッペ:僕が演じたアベーレは柔道ができる役なんですが、これも僕はできなくて…。
パオロ:僕は合気道と空手ができるんだけど、それを披露する場はなかったですね。
ベリッシモ:なんかみんな自分とは違う特技を持った人になっていて。僕もマンドリンの練習をしたり大変でした。でもそれが楽しくもあったかな。一生懸命練習して。
パオロ:僕も料理の勉強をして。ベリッシモはシェフだし、ペッペの実家はレストランなので、2人にいろいろ教えてもらいました。
ペッペ:お互いにサポートしあって支え合いました。
――だから3人仲がいいんですね。
パオロ:撮影ではよく話をしたよね。現場ではこの二人がいたからすごく楽しく過ごせました。
ベリッシモ:みんな世代が違うんですよ。20代、40代、50代って。まぁ僕が20代ですけど(笑)。
ペッペ:本当に冗談ばかり言っていて。でも3人とも初めてのお芝居だったのに、緊張はあまりしなかったです。きっと一人だけだったら慌ててよいお芝居はできなかったかも。二人のおかげです。
――二宮さんとのシーンも多かったですが、二宮さんの演技はいかがでしたか?
ベリッシモ:感動したね。常に余裕があって。
パオロ:プロの俳優だと思いました。
ペッペ:本当に色んなことが勉強になりました。そして優しかったです。僕は知らなかったのですが、同じシーンを何度も違う角度から撮るんですよ。そのために何度も同じ芝居をして…。ただ全体を通してだと二宮さんのセリフがあって僕のセリフがあるみたいなシーンでも、カットによっては僕のセリフから始めるみたいなときもあって。そんなときでも、二宮さんはカメラが回っていないのにセリフを言ってくれるんですよ。これは僕がセリフを言いやすくするためだけなのに。それがすごく演技しやすかったです。
ベリッシモ:本当にすごいよね。僕たちのことまで考えてくれて。
ペッペ:それ以降、僕は二宮さんのマネをして、そういうシーンではセリフを言うようにしました。二宮さんは現場の先生でしたね。
――二宮さんがカンツォーネをイタリア語で歌うシーンもありました。
パオロ:とてもお上手でした。二宮さんは歌もピアノもできるし、音楽をやられているので、耳がすごくいいんだと思います。イタリア語のイントネーションや声の出し方もイタリア人っぽい発音になっていて、本当にすごかったですね。
ベリッシモ:イタリア語のセリフも上手でした。
――二宮さんの作品はご覧になったことありましたか?
ペッペ:見ていましたよ! (クリント・)イーストウッドの映画「硫黄島からの手紙」(2006年)。
ベリッシモ:イタリアでもヒットしたので、多くのイタリア人が見ています。
ペッペ:感動しましたね。すごく面白かった。
ベリッシモ:このドラマもそうですが、イタリアと日本は三国同盟なので。そこには深い思いがあります。
――今回の物語は実話をベースに作られていますが…。
パオロ:こういう物語があったなんて知らなかったです。
ペッペ:歴史の出来事は大体知っているつもりになっていたけど、そこまで深く考えていなかったです。あの時代、実際に世界の色んな所にイタリア人がいて、その人たちがどうなったのかなんて考えたことがなくて…。日本にも多分、多くの人たちがいたんじゃないかな。そんな人のことをこのドラマのおかげで知れて、いろいろ調べて勉強しました。すごくいいきっかけです。
――キャラクターを演じてみて、この物語に共感したことはありますか?
ペッペ:アベーレは、最初は女性が好きで遊ぶために日本に行くんだけど、結局日本で生活したら、そこにいる女性と恋に落ちて日本のことを深く知り、住むことになっていく。性格的にもちょっと似ているんだけど、どんどん日本のことを好きになっていくのは僕と同じです。
パオロ:3人が最初に日本に来たときと物語のラストでは、気持ちはもちろんイタリア人と日本人の関係がかなり変わっていて…。その変化はすごく面白いし、実際にあることだなと思いました。そしてアンジェロはイタリア料理をみんなに教えていましたが、その文化を伝える姿はいいなと思いました。
ベリッシモ:シモーネは最初、日本人のことを信用していないので敵対心があるんですが、少しずつだけど心に変化が出てくる。その変化する姿は見てもらいたいです。そして変化するために色んな発見をしていくのも面白いです。これは僕らイタリア人だけでなく二宮さんが演じた速水などみんなが最初と最後では気持ちがちょっと変わっている。人と出会うってこういうことかなと思います。すごくいいお話しです。
――最後に見どころポイントを教えてください。
ベリッシモ:監督に聞いたら、ここまでイタリア語が多いドラマは今までなかったと言っていて。イタリア語を学んでいたり、なじみがある人は懐かしかったりすると思います。そしてこれまでイタリアに興味がなかった方は、この作品きっかけで興味を持つようになるんじゃないかな。もちろん、字幕もあるし、わかりやすい発音でセリフを言っているので、難しくはないですが…。
ペッペ:イタリアに興味を持ってくれるとうれしいです。あと見てほしいシーンはお風呂シーン。3人で入っているので、女性の方はぜひ見逃さずに楽しんでください(笑)。パオロはこのためにダイエットをしたので。
ベリッシモ:オーディションのときの写真はおじさんみたいだったのに…。すごく鍛えて、本当に凄いよね。
パオロ:10キロ痩せましたね。でもお風呂のシーンはよりいい筋肉を見せられるようにと思っていたんだけど、スケジュール的にその前に歌のシーンがあって…。本当は水を飲まないでお風呂のシーンをやりたかったのに、歌うときは水を取らないと上手にできないので本当に困っちゃいました(笑)。
ペッペ:そんな面白いシーンもあるので、ぜひ楽しんでください。
取材・文=玉置晴子