テレビドラマや映画主題歌、CM曲を多数手掛け、その歌声を一度は誰もが耳にしたことがあるであろう緑黄色社会。そんな緑黄色社会の5枚目のシングル「陽はまた昇るから」は、4月22日(金)公開の「映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝」主題歌だ。

■しんちゃんが頑張って走ってる画が浮かんで、感動した記憶があります

全員が作曲をする彼女たちだが、今作の作曲はベースの穴見が手掛けた。

小林壱誓「制作サイドの方が自由に作っていいよと言ってくれたので、映画の台本を読んでメンバーそれぞれが四者四様の曲を書いていきました。それで選ばれたのが(穴見)真吾が書いた『陽はまた昇るから』でした」

穴見真吾「映画の中に出てくる陽が昇るシーンがすごく印象的で、それを浮かべながらまずはリズムやコード感を構想して作っていきました。いろんな世代の人が一緒に楽しめる映画だと思うので、リズムがあった方が合っているのかなと思ったのと、楽し気なんだけど切ないメロディーも垣間見えるようなバランスの曲にしました」
 
イントロにサビのフレーズが飛び込んでくる展開といい、サビの決意を畳みかけるような展開といい、温かみと力強いインパクトが共存する楽曲だ。

peppe「自分の曲を作ることに難航していて、『どうしよう』って思ってるときに真吾のデモが最初にあがってきて、歌詞はまだついてない状態で最初に聴いたんですけど、『あ、しんちゃんが見える!すごい』って思って」

穴見「言ってくれたもんね『軽く田舎っぽさ』が感じられるって」

peppe「そう。しんちゃんが頑張って走ってる画がすごい浮かんで、感動した記憶があります」

長屋晴子「あるあるなんですけど、それぞれが曲を作って、それを提出する期限が決まっているときに誰かのデモがLINEで送られてくると焦るよね(笑)」

peppe「めっちゃ焦る! 大体そういうときって自分の曲を作り終えるまで他のメンバーの曲は聴かないんですけど」

長屋「私も。その曲に左右されちゃったりとかするので。それもあって私は作ってもしばらくみんなに送らなかったりする(笑)」

peppe「4人だけの曲の報告LINEグループがあって。でも今回はなぜか『聴こう』って気分になった。聴いて良かったですね。それで、『あ、もういい曲あるな』って安心した」

穴見「まだ主題歌になるか決まってもなかったけどね(笑)」

■言葉としての面白味があるんだけど、しんちゃんっぽさもある

そんな穴見の楽曲に歌詞を付けたのはギターの小林。その経緯を聞くと――。

穴見「最初のコンペの段階で壱誓が『俺歌詞書くよ』て言ってくれて、そこからすぐに書いてきたのでびっくりしました」

小林「自分の曲より先にやりました(笑)。別の曲のレコ―ディングが夜に終わって、そのまま朝まで書いて。真吾を驚かせたいなと思ったんです」

穴見「その日のレコーディングが結構長くて、23時ぐらいに機材を全部しまい終わって帰って。家に着いてすぐ寝て朝8時ぐらいに起きたんですけど、朝の5時、6時くらいに歌詞のLINEが来ていて、『マジか!』と思いました。すごくいい歌詞で、特にサビの『晴のち雨のち腫れのち七色』っていう一行に感動しました。言葉としての面白味があるんだけど、しんちゃんっぽさもある」

小林「『クレヨンしんちゃん』作品というよりは、真吾が言ったように家族で見に行く映画だと思ったので、大人の目線で子どもたちに未来を期待させたいなと思って書きました。アニメの制作サイドの方と打ち合わせをしたときに、今まで『クレヨンしんちゃん』では寂しさや悲しさをあまり見せないようにしてきたんだけど、今作は劇場版30作品目ということもで、これまで見せてこなかった弱々しい部分や『ちゃんと5歳なんだよ』というところを見せていきたいとおっしゃっていたんです。だから、そういった感情に寄り添える歌詞にしたいと思いました。あと、“普通”があることの奇跡を描いている作品だとも思うので、寂しさや悲しさはなぜ感じるのかというふうに考えていって、それはきっと普通に幸せを日々感じているからなんだよと逆説的に伝えたかった」

長屋「これまで壱誓の歌詞は、自分たち目線だったり、上にある理想や未来を歌っていることが多かったけど、今回はしゃがみこんで5歳の子どもの目線に合わせているような印象があって、ここまで目線を低くした曲ってなかったなって思いました。だからこれまで届けられていなかった層にも届けられる曲だと思います」

■全部きれいに必要なもの、輝いている言葉だけが入ってる

その想いを届ける長屋の歌声もまたエネルギッシュだ。レコーディングの際に意識したことはどのようなことだったのだろうか。

長屋「やっぱり届けたい層がすごく広い曲だったので、どんな人にも届くような明るい声色にしました。あと、曲が持っている遊び心をちょっとしたニュアンスで入れたくて、それも意識しました」

穴見「小林“先生”の歌詞は本当にメロディーが意図したように乗ってくれるんですよね。歌詞によってメロが良く聞こえる。それに、一個も穴埋め的な場所がない。全部きれいに必要なもの、輝いている言葉だけが入ってる感じが素晴らしいですよね」

小林「でもギリギリまで完成しなかったんです。二番以降がなかなか浮かんでこなかったんですよ」

長屋「二番って難しいよね」

小林「本当に。カラオケ屋で書きました。別の部屋の歌が聞こえてくる中で、自分も時々好きな曲を歌いながら(笑)。二番で一番よりいいことを言いたくてなかなか書けなかった。メロディーとアレンジから、『ここが聞かせどころだな』って分かっちゃうところにどんな言葉をはめるかがめちゃめちゃ大事。今回だと『心の声すら聞こえるよ それでも声が聞きたいんだ』ってがっと落ちる部分にあたるわけなんですけど、ここが最後まで埋まらなかった」

長屋「いかにも『大事なこと言いますよ』みたいな感じになるからね」

小林「そう。やっぱりその期待値を超えていかないといけないから」

穴見「この『心の声すら聞こえるよ それでも声が聞きたいんだ』っていうのは、このご時世のことも言ってるんでしょ?ライブだったり」

小林「そうだね」

穴見「ここもぐっときましたね。これは壱誓あるあるな気がするんですけど、歌詞にお客さん側のメタファーがどこかに登場するんだよね」

小林「自分がファンだったら何がうれしいかなっていうのも考えるからね」

■大人になるって悪くないよということも描きたかった

そんな小林の歌詞について、メンバーそれぞれにグッときた歌詞を聞いてみると、子どものころの自身の気持ちと重ね合わせたり、さまざまな想いがあふれた。

長屋「『晴れのち雨のち腫れのち七色』のくだりは特に好きです。あと二番の『大人になれる それはイイことなんだよ』っていうところも好き。子どものときって大人になるのが楽しみな反面、大人というものが漠然とし過ぎて怖かった部分もあった。この曲によって少しでも不安を取り除いてあげられたらいいなと思いました。私は実際、大人になってすごく楽しいですし」

peppe「私もそのAメロの諭されている感じが好きですね。この歌詞を聴いてから、悲しいことがあるとこの歌詞が浮かんできて『悲しくなれるってことは悲しむ人の気持ちを守れる人になれるから大丈夫だ』と思うようになって自分が救われていて。あとサビの『焼き付けるんだ 受け止めるんだ 乗り越えるんだ』って畳み掛けるところは、実際にしんちゃんが『だぞ〜』って言っている姿が浮かんでくる感じがして、好きポイントです」

小林「やっぱり『大人になるのって嫌だなあ』ってすごく思ってたと思うんです。『ずっとこのまま遊んでたい』みたいな。だから大人になるって悪くないよということも描きたかった。でも全部『今思えば』なんですよね。『悲しくなれるのも寂しくなれるのもいいことなんだよ』っていうのも、昔は“悲しい”はもう“悲しい”でしかないし、寂しいときは“寂しい”でしかなかった。だから、この曲を聴いて育った子どもたちが大人になったときにこの曲を思い出して、僕と同じように感じてもらえればいいなっていう気持ちで書きました」

長屋「子どもの頃って情報量も少ないし、置かれている社会もすごく狭い。一個悩み事があると一気に絶望しちゃったり、『悩んでいるのは自分だけ』って思って誰にも相談できなかったりする。でも大人になっていざ広い世界に出てみると、同じように悩んでいる人はたくさんいるし、それって普通のことなんだって思うようになりました。例えばSNSでキラキラしたところしか見えなかったりするかもしれないけど、みんなその裏でそうじゃないこともたくさん経験しているから、悩むのが普通なんだと思ってほしいんです。私も子どものときに何回も絶望しましたし。今思えば気にし過ぎだったことも、当時の自分は解決する能力もなかったから」

■歌いたい場所も想像しながら作りました

長屋「原曲は2年ぐらい前にあったってこともあって、『陽はまた昇るから』とのバランスは全く考えてなかったんです。でもレコーディングが終わってから、両方とも時間をテーマにしてるしリンクしているって気付きました」

穴見「『時のいたずら』はみんな元々すごくいい曲だと思っていて。でも出すのは今じゃないと思って置いておいたんですよね」

小林「この曲をカップリングで出せる緑黄色社会すげえなって感じの曲だよね」

長屋「何もひねくれることなく真っすぐに届く歌にしたいなと思ったので、アレンジも使っている言葉もすごくシンプルなんです。届けたいメッセージも簡単で、簡単だからこそ、普段伝えるのが難しかったりもする。それを自信を持って伝えたかった。あと、歌を歌うということについて意外と歌ってこなかったなって思って。今年は結成十周年という区切りでもあるので、改めて自分たちが音楽をやる理由や歌う理由を考えてみました。

この曲を歌いたい場所も想像しながら作りました。最初は時間っていうものだけをフィーチャーした曲だったんです。『どうせ終わるのに、何でこれをやるんだろう?』って思うことがたまにあって。それと、自分の中で友達を作ることに対して、どうせいつかは離れていっちゃうんだから新しい関係を築くのが怖いという感覚が強くあって。だから何か新しいことを始めるのも怖かったんです。でも、それって自分で壁をすごく作ってるし、向こうから離れるんじゃなく自分から離していたなと。友達になったのに、急に『この人、私のこと嫌いなんじゃないか』と思い始めてシャットアウトしたりしていたんです。でも、別に嫌われてたわけじゃないことが分かったし、仮にその関係が終わったとしてもそこで人生が終わるわけじゃない。『陽はまた昇るから』の話にも出ていましたけど、10代のときとかすごく狭い世界で生きてるから、目の前の関係が全てだと思っちゃうところもあるけど、大人になると他にも世界はあるって思える。その変化か大きかったかもしれないです。音楽を作ることに対しても、この曲はいつかはなくなってしまうかもしれないけど、私が楽しい瞬間があったり、誰かが楽しんでくれる瞬間があるなら意味があるって思えるようになりました」

穴見「2年前にこの曲を聞いたとき、特にBメロの部分で、『第六感的に思ってはいたけど長屋が言語化してくれた』っていう気持ちになりました」

長屋「今私たちがなぜ音楽をやっているかって、元を辿ればただ楽しいからというシンプルな理由なんですよね。それさえあれば充分だなと。そういうのって何に対しても言えることでもある気がしていて。今年結成10周年を迎えて、私たち4人や私たちの音楽を聴いてくれている皆さんとの関係性に対してありがたみを感じたときに、Bメロで言ってるようなシンプルな想いが溢れてきました。今はまだ難しいですけど、いつかみんなでその箇所だけオケも抜いてアカペラで歌いたいっていう画も浮かびましたね」

取材・文=小松香里