2022年5月、「スター・ウォーズ」シリーズ最新作であるオリジナルドラマシリーズ「オビ=ワン・ケノービ」(毎週水曜日昼4時、ディズニープラスで独占配信)がスタートした。アメリカでは初週、2週目と「#ObiWan」がTwitterのトレンドにランクインするなど大反響を巻き起こし、日本でもファンの間で注目を集めている。そんな同作で、主人公オビ=ワンの日本語吹替えを担当するのが声優の森川智之(もりかわとしゆき)。オビ=ワン役ユアン・マクレガーの映画作品はもちろん、先日公開された映画「トップガン マーヴェリック」でトム・クルーズの吹き替えも務めており、同時期に2つの大作で主役の日本語吹き替えを担当。ほかにもハリウッドスターの声を多数務める、洋画吹き替えのレジェンド声優・森川の活躍ぶりと「オビ=ワン・ケノービ」での注目ポイントを解説する。

■「エピソード1」からオビ=ワンの声を担当

オビ=ワンは、ルークとその父アナキン・スカイウォーカーの師であり、2人を善へと導こうと尽くした人物。誠実さと強さを兼ね備えたシリーズきっての人気キャラクターで、ルークが活躍する「エピソード4〜6」(旧三部作)と、ルークの父・アナキンの物語を描く「エピソード1〜3」(新三部作)でストーリーに大きく関わった。

ドラマシリーズ「オビ=ワン・ケノービ」は、そんなオビ=ワンを主人公にしたストーリー。アナキンと死闘を繰り広げた映画「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」から10年後、アナキンが悪役ダース・ベイダーとなったことなどつゆ知らず、オビ=ワンがひっそりと暮らしている場面から語り起こされる。

この壮大なスペースファンタジーシリーズで、公開順4作目の「エピソード1」からオビ=ワンを演じるのがハリウッドスターのユアン・マクレガー。そして、その声を担当するのが森川だ。


「エピソード1〜3」では、まだ比較的若いオビ=ワンがアナキンと出会い、アナキンを弟のように可愛がりながら悪の帝王シス卿に立ち向かっていく姿が描かれてきた。日本語吹き替え版で聞くことができる森川の低く落ち着いた声は、血気盛んなアナキンとは対照的。オビ=ワンが冷静沈着で、かつ強いフォースを持つ選ばれた存在であることに説得力を与えている。

「エピソード3」のクライマックス、有名なオビ=ワンとアナキンの死闘シーンを日本語吹き替えで聞くと、森川演じるオビ=ワンの「弟だと思っていた。…愛していた」という言葉にアナキンへの愛情と深い悲しみがにじんでいるのがわかる。

■死闘から10年…孤独なオビ=ワン像

一方、ドラマ「オビ=ワン・ケノービ」で視聴者は、そんな頼りがいのある人物像とは少し違ったオビ=ワンと出会うことになる。

アナキンが暗黒卿“ダース・ベイダー”と化したとは知らず、10年もの間、アナキンとの別れに傷ついたまま罪悪感を抱いて暮らしていたオビ=ワン。かつての気高く強いイメージはなく、孤独で、悲哀と後悔に満ちている。

2022年5月に米ロサンゼルスで行われたイベント「スター・ウォーズ・セレブレーション」に登場したユアンはドラマでのオビ=ワンについて「新三部作で僕は、賢くて落ち着いた男を演じましたが、本作(ドラマ)では彼を映画とは違うところに連れていったのです。暗くて、壊れているところへ。それは簡単なことではありませんでした」と語ったが、森川の声にも、そうした鬱屈した雰囲気が宿る。

街で偶然姿を見られオビ=ワンだと気づいた若者ナリに「偉大なジェダイでしょ?」と問いかけられても「ジェダイの時代は終わったんだ」と投げやりに言うばかり。ジェダイマスターとしてアナキンを導いていた頃の若々しく頼もしい口調はすっかり影を潜めている。

だが、もちろんそのままで終わるオビ=ワンではない。ドラマ2話以降、レイアが誘拐されたことをきっかけにオビ=ワンに10年ぶりに活躍の機会が訪れる。レイアを保護した後は、賢く愛らしいレイアの物言いに「10歳らしくないな」と苦笑しながらも声の調子に少しずつ明るさが戻り、寂しげだったオビ=ワンの再生を予感させる。

■ハリウッドスターの吹き替えも多数


声優としてすでに30年以上にわたるキャリアを誇る森川は、ハリウッドスターの吹き替えも非常に多い。

オビ=ワンを演じるユアン・マクレガーの出演作は「エピソード1」と同時期の「リトル・ヴォイス」(1998年)や「マネー・トレーダー 銀行崩壊」(1999年)などを皮切りに、数多く担当。ほかキアヌ・リーブス(「マトリックス」シリーズ、「スウィートノベンバー」など)、ブラッド・ピット(「セブン」「デビル」など)、ジュード・ロウ(「シャーロック・ホームズ」など)、ポール・ウォーカー(「ワイルド・スピード」シリーズなど)と、スター俳優の吹き替えを次々に担当している。大ヒットした「glee」のシュースター先生役(マシュー・モリソン)、「ゲーム・オブ・スローンズ」(ピーター・ディンクレイなど)、とドラマシリーズでも本領を発揮してきた。

中でも特筆すべきはトム・クルーズ作品の吹き替えの多さ。「ミッション インポッシブル」シリーズのイーサン・ハント役をはじめ、「アイズ・ワイド・シャット」「ラストサムライ」「コラテラル」「宇宙戦争」「大いなる陰謀」「ナイト&デイ」などのタイトルがずらりと並ぶ。

現在公開中の映画「トップガン マーヴェリック」でもトム・クルーズ演じるマーヴェリック教官の吹き替えを担当している。5月18日に行われた公開直前イベントに登壇した森川は「声優になる前に(1986年公開の)『トップガン』を見て、トム・クルーズカッコいい!俺はマーヴェリックになるんだと思っていました」と回想。「36年経って、夢が叶いました」と喜びを打ち明けた。

「トップガン マーヴェリック」では、航空自衛隊百里基地の全面協力のもと、同作の吹き替え声優の発表映像も作られた。航空中央音楽隊の演奏が行われる中で森川がうやうやしく共演声優陣を発表し、その後戦闘機に乗り込む演出で、森川自身も「長いことやっていますが、こういった形で発表するのは初めてでした」と思わず感想を漏らすほどのプロジェクトも展開した。

ハリウッド・スターの声を歴任し、今また「スター・ウォーズ」シリーズを代表するジェダイ・マスターを任される日本屈指の声の職人が見せる新たな世界に酔いしれたい。