11月12日(土)放送の「世にも奇妙な物語’22 秋の特別編」(夜9:00-11:10、フジテレビ系)で、土屋太鳳が主演を務める「元カレと三角関係」が放送される。本作の原作は、SF短編集「死んだ彼氏の脳味噌の話」に収録されている同名の短編コミック。彼氏・アキラとのマンネリ化した関係に悩む28歳の女性・ミカのもとに、元カレ・ジュンと名乗る小さなロボットが突然現れる。ジュンはバイク事故を起こし、入院中で瀕死の状態だった。しかし脳波で遠隔操作できるロボットを使い、ミカのもとにやって来たのだ。最初は戸惑うミカだが、徐々にジュンの優しさに惹かれ…ロボットとの切なくも温かい、奇妙な三角関係が描かれる。「ザテレビジョン マンガ部」では、作者・Ququ先生にインタビューを行い、作品がドラマ化された感想や創作の裏話を語ってもらった。また、「死んだ彼氏の脳味噌の話」コミック本編に加え、ドラマ化に際して描き下ろされた「元カレと三角関係」の追加エピソードも掲載する。

■ドラマ化の報を受け「焼き肉を食べに行きました」

──「世にも奇妙な物語」で、ご自身の作品がドラマ化されると決まったときのお気持ちはいかがでしたか?

まずは驚きました。作品発表から2年以上の時間が経っており、また単行本の出版時には非常事態宣言で多くの書店が閉まっており、中々多くの人に手にとってもらうことが難しい状況だったからです。にもかかわらず、読んでくださった人の中に「これをドラマにしたい」と思ってくださった方がいたのか、と思うと、嬉しさもこみ上げてきました。

しかも、子供の時から親しんでいた「世にも奇妙な物語」というタイトルで…。告知の際にも実感しましたが、ここまで幅広く、老若男女に親しまれているタイトルも中々ないように思います。自分の作品がその中の一話になるのはとても嬉しいです。オファーのお知らせを頂いた当日は、とりあえず大きな公園に行って空を見た後、久しぶりに焼き肉を食べに行きました。

──「世にも奇妙な物語」で記憶に残っているエピソードや、お好きなエピソードがあれば教えてください。

子供の頃とても楽しみな番組で、ビデオに録画して何回も見るくらい好きでした。今でも、あの音楽を聞くとワクワクとドキドキが混ざったような不思議な気持ちになります。

好きなエピソードとしてすぐ思いつくのは「ハイ・ヌーン」(1992年)です。一見普通の男が定食屋に現れ、メニューを片っ端から全部頼んで食べていく、というだけの話ですが、子供ながらに「なんでこれだけでこんなに面白いんだ?」と感動したのを今でも覚えています。話を牽引する謎が、「こいつはもしかしてメニューを全部頼もうとしてるんじゃないか?」から「全部完食できるのか?」というように段々変わっていき、男が食事するだけなのにハラハラしました。そして意外なオチ。屈指の人気回でリメイクもされていることを後で知ったのですが、それも納得できる回です。

もう一つ、圧倒的に記憶に焼き付いているエピシードは「ママ新発売!」(2001年)です。理想のママを買いに、子供たちが何でも売っているデパートに友達と行くという話です。全編通して息つく間もないギャグの連続で、視聴者を一瞬も休ませない疾走感がクセになる回でした。それだけでなく風刺にやたらエッジが効いていて、しかもちゃんと人物が成長する構成が心地よく、何度も繰り返しビデオで見た記憶があります。

■短編集の統一テーマは「愛の可能性」

──コミックス「死んだ彼氏の脳味噌の話」には、ドラマ化された「元カレと三角関係」をはじめ、ほろ苦い読後感を残す短編が多数収められています。こういったストーリーは、どのようなきっかけで思いつくのでしょうか?

話によって作り方は様々でした。「死んだ彼氏の脳味噌の話」は、とにかく読者をびっくりさせようという意識が最初にあったように思います。脳味噌が丸裸で送られてきたらびっくりするだろう、と考え、そこから「彼氏の脳味噌だったらもっとびっくりするだろうな」「そのような状況だったらどんな感情を抱くだろう…」と拡げて作っていきました。

逆に、「元カレと三角関係」「君のことが大好きだった」は、多くの読者が共感できる問題意識を考えるところから作った話です。「絶対自分のことを好きだと思っている相手が、そうでなくなったら?」「恋人のことを好きになれなくなったら?」というように、誰もが共感可能な状況設定を考えるところから始めました。


「ケイタ」は、私がネタに困っていたところ、担当編集の方が「こんな記事ありましたよ」と古くなったペットロボットに関する記事を送ってきてくれ、その切なさがインスピレーションになりました。

「セレブ男の飼い猫」「よいこくん」は、短編で描く関係性のバリエーションを広げていきたいなという思いからスタートした記憶があります。次は親子を描いてみよう、猫と人間を描いてみよう…と考えて、その関係の中で起きる問題はどんなことがあるだろう…といった感じです。


ただ、全体的な統一テーマとして「愛の可能性」みたいなものを据えていて、上述の要素をそのテーマに繋げていく形で発想していったことは共通しています。

■影響を受けた作品は「ブラック・ジャック」「ドラえもん」

──現実ではまだ実現していないような、SF的な設定のおもしろさも魅力です。影響を受けたフィクション作品があれば教えてください。

SFというジャンルで言うと、単に思考実験としてのSFでなく、その世界で人間がどういう感情を抱くか、どういうドラマを描いていくかということを描いている作品が特に好きです。それでいうと、王道ですが「ブラック・ジャック」の影響は大きいかもしれません。「ブラック・ジャック」は医療漫画ですが、コンピューターに心のようなものが芽生えたり、猫と話せるようになったりと、SF的な要素が多分にある作品です。そのSF要素が単なるエンターテイメントでなく、人間の感情や普遍的なテーマを描出するために使われ、それが子供の頃に感動した理由だったと思います。同じく王道ですが、「ドラえもん」にもそのような回があり、同じく影響を受けていると思います。

また、今までの私の作品とは距離がありますが、マクロな社会風刺とミクロな人間模様が両立できている作品はすごいなと思います。大きいテーマに挑むと、個人のドラマへのピントが合わなくなってしまうことが多いからです。漫画「WATCHMEN」は、社会風刺を含んだ世界観と個別のキャラクターのドラマを両立していて、始めて読んだ時はこんな漫画があるのかと驚きました。同様の視点では、「ダークナイト」や、毛色は違いますが「ソラリス」などは、世界観とドラマの両立という意味ですごいと思っている作品です。

■描き下ろしでキャラ造形を深堀りできた

──今回、ドラマ化に際しての描き下ろしも掲載させていただきます。このエピソードは「元カレと三角関係」のアキラ視点のお話ですが、どんな思いで描かれましたか?

実は当初アキラ視点というのも決まっておらず、「ジュンが瀕死になってからミカのところに行くかどうか迷って、決断するまでの話」なども考えたのですが、役者さんが演じて下さることもあり「全員を出したいな」と思い、三人がいる家で将棋でもさせてみる…という案が出てきました。ただ、その段階でもアキラのモノローグはなく、淡々と将棋をする話で、結果としてちょっとシュールな話になっていたように思います。そこで担当編集の方が、私らしい心情描写を加えてはどうですかと言って下さったことで、あのようになりました。

アキラの心情を描く中で、漠然と捉えていたキャラの内面が言語化されていったのが面白い経験でした。「アキラのような人間は、ジュンのような粗暴な人間に対して、嫌悪感だけでなく実は憧れもあったりするかも。だからこそ対抗意識も生まれてるのかもしれない…」というように。結果的に、全員の対比をしつつ、個別のキャラの造形を深堀りすることができて、短いながらも自分としては気に入った作品になりました。

──今後はどのような作品を描いていきたいですか?

今までの私の短編集は、SNS上で多くの方に見てもらうことが狙いだったこともあり、「普通の人達」が出来事に巻き込まれていくような話が多かったです。ただ、長い作品を作るとなると「良いキャラクター」というのは避けては通れない要素ですし、私自身もそのようなキャラクターに魅力を感じて育ってきたので、キャラクターが主導していくような物語にも挑戦してみたいです。また、影響を受けたSF作品の話でも触れましたが、個人のドラマだけでなく、社会や世界などの大きな構造を描いた作品にも挑戦したいと思っています。