二宮和也主演の最新主演作「ラーゲリより愛を込めて」が12月9日(金)より全国公開される。それを記念し、二宮が過去に主演を務めたドラマが動画配信サービス「TVer」にて期間限定で配信中だ。これを機にジャニーズ屈指の”演技派”と呼ばれる二宮の名演を振り返る。

■「流星の絆」の、二面性を見事に表現した人物造形

様々なウェブメディアが発表する「平成の好きなドラマランキング」や「再放送してほしいドラマランキング」に、必ずといっていいほど名前が挙げられているタイトルがある。2008年に放送されたドラマ「流星の絆」(TBS系)だ。

本作は、「白夜行」や「探偵ガリレオ」シリーズなどで知られるベストセラー作家・東野圭吾による同名推理小説を映像化したもの。幼少期に両親を殺害された三兄妹が、時効が迫る14年後に真犯人を追い詰める復讐劇だ。三兄妹の長男・有明功一を二宮和也、次男・泰輔を錦戸亮、二人とは血の繋がらない妹・静奈を戸田恵梨香が演じた。

特筆すべきは、“クドカン”こと宮藤官九郎が脚本を担当している点だろう。ハラハラドキドキするミステリーでありながら、コミカルな描写もふんだんに盛り込まれており、そのバランスが非常に良い。功一が働くカレー屋の店主・林ジョージ(尾美としのり)、そこに訪れるハヤシライス好きの客・行成(要潤)や謎の女性・サギ(中島美嘉)、静奈に粘着する上司の高山(桐山健太)など、周囲を固めるキャラクターも個性的でインパクトがあり、随所に遊び心が効いている。

メインとなる3人のキャラクターも、もちろん魅力的。特に二宮が体現する功一の人物造形が豊かだ。二宮はそれまでも「南くんの恋人」(2004年、テレビ朝日系)や「山田太郎ものがたり」(2007年、TBS系)などでの好演が評価されていた。上記2作ではどちらかといえば憧れの対象となる存在だったが、彼の凄さはアイドルでありながらごく普通の役も演じられるということ。序盤の功一はどこか人生を諦めているかのような悲壮感に溢れ、普段の二宮が背負っているオーラは鳴りを潜める。

一見、冷たい印象も受けるのだが、泰輔や静奈の前では急に人としての温かさを帯びるのがすごい。興味のない他人に見せる顔と、大切な家族に見せるお兄ちゃんとしての顔を、二宮は巧みに使い分けている。家族の前での功一を演じる際にはコミカルな演技も自然にこなし、どこか抜けていて親しみやすい愛されキャラを確立した。一方で、両親を殺された悲しみは怒りとなって功一の心を巣喰い続けており、時折見せる鋭い顔つきが油断した視聴者の心に突き刺さる。この作品が約15年たった今も愛されるのは、ミステリーでありながら青春ドラマの要素も併せ持つこと。また、その二面性を見事に表現した、二宮をはじめとする実力派キャストの功績によるものであろう。

■二宮の重厚な演技は日曜劇場に映える

二宮は「流星の絆」以降も、数々の名演で日本の映像界に貢献してきた。2015年に公開された山田洋次監督の映画「母と暮せば」では、日本を代表する名女優の吉永小百合と共演。二宮が演じた浩二は原爆で亡くなっており、亡霊となって吉永演じる母親のもとに現れるという役柄だ。二宮の好演により引き出されたお茶目で愛すべき息子の姿は作品に和みを与えるとともに、息子を失った母親の悲しみを際立たせた。

同作で二宮は「日本アカデミー賞」の最優秀主演男優賞を受賞。2018年には「検察側の罪人」、2020年には「浅田家!」とコンスタントに注目作に出演し、いずれの作品でも二宮の演技は国内の映画祭で評価されている。

観る者を作品世界に引き込む二宮の重厚な演技は、TBSドラマの看板でもある「日曜劇場」枠でも大いに重宝されてきた。2018年4月期の「ブラックペアン」で演じた渡海征司郎は腕のいい外科医だが、他の医者が手術中におかしたミスをお金でカバーすることから「患者を生かし、医者を殺す」と評される、いわゆる“ダークヒーロー”だ。普段はとにかく気怠げで誰に対しても皮肉めいた態度を取る、見るからに嫌な奴。だが、執刀中は誰も手出しできないほどの集中力を発揮し、その場の空気を一瞬にして張り詰めたものに変える、二宮の只ならぬオーラに息を呑む。二宮はどちらかといえば童顔だが、この作品での色気は凄まじく、誰もが渡海というキャラクターに魅了された。

それから3年後、今年2022年4月期放送の「マイファミリー」で演じた鳴沢温人も渡海と同じで好人物とは言いがたい。「ハルカナ・オンライン・ゲームズ」というゲーム会社の最高経営責任者であり、業界内でも“時代の寵児”と呼ばれる男。しかし、家庭を顧みず、妻と娘との信頼関係は一切築けていない。こういう不完全なキャラクターを演じさせたら二宮の右に出るものはいないだろう。誰もが憧れるスターでありながら初期段階では嫌な奴になりきって、ちゃんと観る人をイラっとさせる。だが、回を追うごとに役の魅力といえる部分を徐々に引き出し、最後には好きだと思わせてくれるのだ。本作では娘が誘拐されたのをきっかけに、父親としての覚悟や家族への愛が芽生えていく温人の成長をグラデーションの演技で映し出した。名俳優たちが集う日曜劇場を、座長として引っ張っていくだけの力が二宮には備わっている。

■予告から早くも名演に期待!映画「ラーゲリより愛を込めて」

そんな二宮が主演を務める映画「ラーゲリより愛を込めて」が12月9日(金)より全国公開となる。本作は実話に基づく、再会を願い続けた夫婦の11年に及ぶ愛の物語。二宮が演じるのは、第二次世界大戦後、身に覚えのないスパイ容疑でシベリアの強制収容所(ラーゲリ)に収容された主人公の山本幡男だ。

過酷な環境下で、山本は日本に残してきた妻と4人の子どもたちとの再会を願い、仲間を励ましながら強く生きる。予告編だけでも山本が知的で穏やかな人柄の中に、「絶対に生きて日本に帰る」という決して消えることのない決意を携えた人物であることが伝わってきた。今作でも二宮の演技が多くの人の心を揺さぶることは間違いない。ぜひスクリーンでその名演を味わうとともに、TVerにて配信中の出演作もチェックし、二宮が俳優として積み上げてきた実績を振り返ってほしい。

■文/苫とり子