舞台『ブルーロック』が5月4日(木・祝)より開幕する。原作は「週刊少年マガジン」で連載され、“史上最もアツくイカれたサッカー漫画”として話題を集めている。日本をW杯優勝に導くストライカーを育てる“ブルーロック(青い監獄)”プロジェクトを舞台に、全国から集められた300人の高校生FWが生き残りを懸けて戦う物語だ。このたび、主演の潔 世一役・竹中凌平と、劇中で潔と互いに影響を与え合うチームメイト・蜂楽 廻役の佐藤信長にインタビューを実施。作品の見どころから、人気作品の舞台化に挑む心境、演じる役への思い、2.5次元を演じる面白さまでたっぷり聞いた。

■“エゴイスト”な主人公に共感、「役者って結局、承認欲求の塊」

──舞台『ブルーロック』に出演が決まったときはどう思いましたか?

佐藤信長 注目度の高い作品なので「僕で大丈夫かな」という不安もありましたけど、うれしかったし、楽しみな気持ちが大きかったです。ただ本番が近づくにつれてちょっとずつ「本当に大丈夫かな」という不安がまた……。でもここからもうちょっとブラッシュアップしていくので、お見せする頃には楽しみになっていると思います。

竹中凌平 オーディションのときに「サッカーやったことありますか?」と聞かれて、きっぱり「ないです」と言ったので、これは落ちたなと思ったんですけど、同時になぜか「行けたな」という手応えもあって。だから決まったときは、うれしいと同時に、どこかで「やっぱ受かったか」という気持ちもありました。今、(稽古で)潔を演じているのが楽しいので、改めて受かってよかったなと思っています。あとは出演が決まったとき、周りの人が自分以上に喜んでくれて。だから周りの期待に応えたいという気持ちもありました。

──竹中さんは潔 世一役、佐藤さんは蜂楽 廻役ですが、演じる上でご自身の役をどのように解釈していますか?

佐藤 蜂楽は、普段は自由奔放でのほほんとしているけど、サッカーのことになると一番熱くなれる男なんじゃないかと思います。そういった意味では、自分も好きなことにはとことん突き進むところがあって気持ちはわかります。サッカーは未経験でしたが、やってみるとすごく楽しいので、蜂楽の「サッカーばっかりやっていたい」という気持ちを全面に出して演じようと思っています。

竹中 潔は、サッカーをしているとき以外は普通の高校生だけど、サッカーのこととなるとすごく思慮深い人。一人一人に対する分析力もすごいし、自分に対しても分析するし……占い師とか向いてるんじゃないかな(笑)。でも情熱を持っていますよね。あとはやっぱり、ものすごくエゴイスト。

──その“エゴイスト”な気持ち、竹中さんは理解できますか?

竹中 わかります。役者って結局、承認欲求の塊だと思うんですよ。表には出さないけど、みんな心のどこかにはエゴの部分、強い自我みたいなのは持っているんじゃないですかね。

──佐藤さんは“エゴイスト”になる気持ちは理解できますか?

佐藤 僕は趣味が車で。サーキットに走りに行ったときは「一番速く走りたい」「自分が一番速い」と思っているので、そのときはエゴイストですね。仕事の面で言うと、自分が与えられた役に関して「自分が一番適している」と思っています。最初は不安ですが、稽古を重ねて本番を迎えると「この役ができるのは自分しかいない」って。

■潔と蜂楽の関係性は?「板の上で、お互いが感じたようにやっている」

──それぞれから見た、相手の役とご本人の役の共通点についても聞かせてください。まずは竹中さんから見た、佐藤さんと蜂楽の共通点から。

竹中 どっちも緊張とかしなさそう。

佐藤 確かに蜂楽は緊張するどころか楽しむタイプだけど、僕自身は……ゲネとか初日はすごく緊張するけど、確かに始まってしまったら楽しめちゃうタイプかも。でも今回は実際にボールを触るシーンがあるので、そこが終わるまでは緊張しそう(笑)。

竹中 あはは(笑)。いつも楽しそうにしてるじゃん?

佐藤 本当!?

竹中 えっ、楽しくない?

佐藤 いや、楽しいけど(笑)。楽しそうに見えてるっていうことに驚いた。

竹中 楽しそうだよ。そういうところが蜂楽に似てると思う。

──では佐藤さんから見て、竹中さんと潔の共通点は?

佐藤 僕の中で、潔は真面目で優等生で、サッカーのときだけエゴイストになるというイメージがあるんですが、その真面目なところは凌平くんと似ているなと思いますね。稽古が終わったあとにも自主練をしていたり、実際に自分でサッカーボールを買ってリフティングの練習をしていたり。裏でコツコツ真面目にやっているからこそ、表舞台に立ったときにしっかりできるというのは潔と一緒なんじゃないかな。

竹中 (首を大きく横に振る)努力とかしたことないです!家で台本開いたこともない(笑)。

佐藤 いやいや! 初日からめっちゃ長いセリフ覚えてきてたじゃん(笑)。

──お二人の仲の良さが垣間見えたところで……この作品では潔と蜂楽の関係性がすごく重要になってくると思うのですが、その関係性を築くにあたってお二人がやっていることはありますか?

竹中 何だろう。別にないよね?

佐藤 そうだね。板の上で、お互いが感じたようにやっているだけというか。

竹中 潔は蜂楽に影響を受けることが多いので、無理に「ここをこうしよう」と本人たちで合わせなくても、台本通りにやっているだけで自然とその関係性が生まれてくると思っています。

佐藤 実際、劇中で潔と蜂楽の会話も実はそんなにないしね。「ブルーロック」に関しては、セリフではなく、それぞれのプレーに感化されることが多いので。

■2人の思う俳優としての強みは?

──「ブルーロック」では各人物が、ほかの選手とプレーする中で自分の弱点に気付き、克服していく様子が描かれます。お2人が、俳優という仕事をしていく中で、自身の弱点に気付いて開花したタイミングや、逆に自身の強みに気付いた場面を教えてください。

佐藤 僕、ダンスとか段取りを覚えるのがめっちゃ遅いんです。言われたことをその日に脳内で処理するのが苦手で。始めの頃はそれでめちゃくちゃ焦ってたんですよ。周りと比べて自分が全然追いついてないなって。でも覚えていなくて稽古が止まっちゃうよりは、メモを見ながらでも動いたほうがいいなと思って、当たり前のことですけど、言われたことは全部メモするようになりました。覚えるのは今でも遅いですが、今は「今日はできなかったとしても、次の日にできるようになっていたらいいや」と思えるようになりましたね。

竹中 僕もちょっと似ていて。初めてのちゃんとした舞台出演のとき、全く準備をしないで稽古に行ったんですよ。正直舐めていたところがあったというか……。準備どころか、復習もしなかったし、話も聞いていなかった。

──話も聞いていなかった?

竹中 舞台の経験がなかったから、何を言っているかがわからなかったんです。上手・下手がようやくわかるくらいだったので、なんとなく聞いている感じで。そしたらある日、演出家にめちゃくちゃ怒られて。それを経験したおかげで、今は必要以上に準備をするようになりました。復習も毎日やるようになったし。初めに痛い目を見てよかったなと思います。

──そんな葛藤の日々から見つけた、ご自身の俳優としての強みは何だと思いますか?

佐藤 僕はメンタルの強さかな。どうしても脳内での処理が追いつかなくて怒られることもあるんですけど、ちゃんと家に帰って落ち着いて考えれば、そのデータを引っ張り出せることがわかっているので、怒られているときはしんどくならないように、全部は受け取らないようにしています。

竹中 メンタルの強さは確かに大事だよね。

──竹中さんは、ご自身の強みはどこだと思いますか?

竹中 何だろう……あんまりセリフを噛まないとか? あと、お客さんの反応に左右されない、芝居がブレないというのを褒めてもらえたことがあるので、そこなのかな。それはさっき話したような失敗が糧になっていると思いますね。本番に向けてどれだけ準備すれば自信を持ってできるのかがわかっているから、積み重ねを大事にして。まぁみんなやっていることでしょうけど。武器はそれくらいしかないですね。30代では自分の武器を見つけたいと思います。

佐藤 それでいうと、“30歳目前には見えない”というのは、凌平くんの強みの1つなんじゃないかなと思います。5年前くらいにも共演したのですが、当時から全然変わっていないから。僕のほうが1歳年下なんですけど、前回共演したとき、自分のほうが年上だと思ってタメ口で話していたら、実は年下だったということがあって。でもそのやりとりを忘れていて、今回も「確か僕より年下だったよな」と思って接していたら、まさかの年上だった。

竹中 普通、それは覚えてるよ(笑)。

──では竹中さんが思う、佐藤さんの強みは?

竹中 全てが型にハマっていないところ。ちゃんとオリジナリティや色があっていいなと思います。

佐藤 ありがとうございます。

──ご自身の強みを言っていただくより、お互いに言い合ったほうがスムーズでしたね。

佐藤 自分で言うの恥ずかしいし、あんまり自分のことは見えないよね。

竹中 うん、自分の強みが見つからなかった。

──しかし、それこそ「ブルーロック」ではそれぞれが、自分自身で弱点や強みを見つけて“エゴさ”を磨いていきますよね。

佐藤 そうですね。でも彼らもやっぱり誰かに何かをもらって開花したり、他人のプレーを見て気付いたりしますよね。それは僕らも稽古中からそうで。ほかの人の演技を見て「この前より精度上がっている」と思って、自分もギアが入ったりしています。

■正解がないから難しくて面白い、2.5次元を演じる楽しさ

──今作も含めて、お二人とも原作のある“2.5次元舞台”に多数出演されています。冒頭に「人気な作品だからこそ不安もあった」ともおっしゃっていましたが、2.5次元作品の魅力や面白さはどのように感じていらっしゃいますか?

竹中 空を飛んだりできるじゃないですか。今作でも、自分ではできないようなスーパープレーをできるし。そういった、現実では絶対に体験できないことを経験できるのがすごく楽しいですね。あとは、現実にはいない人たちが目の前で生きているというのは、見ていてテンションが上がるんじゃないかな。

佐藤 そうそう。僕も自分が出演していない2.5次元作品を観に行ったときに、マンガやアニメでしか見たことがなかった人たちが、生身の人間として目の前に現れる感覚がしてワクワクしました。あとはマンガやアニメだと、セリフを言っている人に寄っている場面で、舞台ではそのときに自分の推しキャラが何をしているのかを見られるのも面白さだと思います。演じる側としても、そこを作る面白さはあります。

──それは同時に難しい点でもあると思うのですが、いかがですか?

竹中 難しいよなぁ。

佐藤 難しい。正解がないから。

竹中 正解はないけど、不正解はいっぱいある部分でもあるじゃないですか。だからどうお客さんに喜んでいただくかを考えるのは難しいですね。それが楽しくもありますけど。

佐藤 ただ逆に言うと、正解がないから何をしても良いんですよね。もちろん、本当に何をしてもいいわけじゃないけど、そのキャラがやりそうなことだったら何をしてもいいし、決まったことをやらなくてもいい。だから毎日いろんなことができて楽しいですね。セリフをしゃべっていない場面でも、そこに注目してくれるファンの方もいますしね。

──では最後に舞台『ブルーロック』の見どころや、ファンの方に楽しみにしておいてほしいところを教えてください。

竹中 すごく熱い作品になると思います。『ブルーロック』という作品自体の面白さはもちろん、見ていて熱くなれたり、何かを感じたりできる作品になっていると思います。ぜひ楽しみに来てほしいです。

佐藤 各キャラクターの覚醒するシーンは、特に僕たちも気合いが入ると思うので、そこは楽しみにしていてほしいです。

竹中 2階席の人はぜひ双眼鏡で、その顔つきまで見てほしいですね。

舞台『ブルーロック』は2023年5月4日(木・祝)から5月7日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼにて、5月11日(木)から5月14日(日)に東京・サンシャイン劇場にて上演。また5月7日(日)17:30開演の大阪千秋楽公演、5月14日(日)17:30開演の東京大千秋楽公演が、DMM TVにてアーカイブ付きライブ配信される。

■取材・文/小林千絵