5月13日開幕の、MANKAI STAGE『A3!』ACT2! 〜SPRING 2023〜。同名のアプリゲームを原作に2018年から舞台化され、もうすぐ6年目を迎える人気作品だ。春夏秋冬に分けられた4組が登場する本シリーズで、春組のリーダー・佐久間咲也を演じている横田龍儀に、長く関わってきた作品を通しての自身の成長やキャリアを重ねて感じていることなどを聞いた。

■佐久間咲也とともに成長してきた5年

ーー横田さんは、2018年からMANKAI STAGE『A3!』の佐久間咲也役として長く出演されていますが、今まさに稽古中だとお伺いしました。

横田:そうなんです。この役を演じて、ちょうど5年ほどが経ちました。でも5年演じていたとしてもまだまだ分からないことがあるんですよね。佐久間咲也も、物語が進むにつれて成長しているので、毎回大きな発見があるんです。

ーー共演している役者さんたちとも、より深い絆が生まれているのではないでしょうか。

横田:ここまで同じ作品に出演し続けることは本当に珍しいので、共演者のみなさんは、もはや家族のような存在なんです。空き時間には一緒にゲームをしたり、まるで学校の休み時間のように過ごしていて、現場に来るのがすごく楽しみなんですよ。もちろん、いろんな役をやることで得る経験値は大きいと思うんですが、一つの役を突き詰めるのも、すごく大事な経験だなと思うんです。

ーーなかでも仲良くなった役者さんはどなたですか?

横田:立石俊樹くんは、年齢こそ僕の1歳上なんですが、すごく波長が合うんです。すごく優しい先輩ですし、実は近所に住んでいて、フラッと一緒に喫茶店に行って話したりするんですよね。電話もよくしていますし、出会いは舞台でしたが、普通の友達としてすごく仲良くなれたんです。俊ちゃんは笑い方が面白くて、つられてめっちゃ笑っちゃうんですよ。そんな俊ちゃんとの時間が僕にとってのリフレッシュとなっています。

ーーすごく素敵な関係ですね。

横田:そうですね。そのほかのメンバーとも、コロナ禍になる前はみんなで泊まり込みでゲームをしたり、ご飯を食べたりしていて…(笑)。あらためて青春をやり直している感覚です(笑)。

■自分が中心になるよりも共演者を輝かせる存在でありたい

ーー共演者のみなさん、それぞれが活躍されている方だからこそ、刺激をもらうことも多いのではないでしょうか。

横田:僕は春組のリーダーなので、刺激を与える立場でありたいとは思うんですが、実際は周りの人たちが本当に素晴らしいので、僕が支えてもらっている感覚なんです。それに、この作品が“役者育成ゲーム”ということもあって、ほかの現場に行くときが、自分の役である咲也が違う現場に行っているような感覚になるんですよね(笑)。そこでいろんな経験を積んで、またここでお芝居するような感覚があるんです。

ーーリアル育成ゲームですね!

横田:その通りです(笑)。そして戻ってきたときに、演出の方に「成長したね」と言っていただけるように、より頑張っています。

ーーものすごく役とご自身がリンクしているんですね。

横田:役と僕の性格が似ていることもあって、ファンの人たちも重ねて見てくれるんです。

ーーどんなところが似ているのでしょうか。

横田:咲也は不器用だけど、すごく一生懸命なんです。僕自身、基本的に自分ができる人間だとは思っていないので、とにかく頑張ることしか取り柄がなくて…(苦笑)。それに、自分が中心に立つのではなくて、僕がお芝居をすることで共演した人が輝いている方が嬉しいなって思うタイプなんです。だからか、一度誕生日のサプライズをしてもらった時に、うまく喜べなくて…!

ーーもしかして、“こういう反応をした方がいいのかな”って思ったうえでリアクションをしちゃうタイプですか?

横田:そうなんです!素直に喜んでありがとうっていう方が愛されるのもわかるんですが、褒められることも慣れていないし、喜ぶことも慣れていなくて(苦笑)。

■今でも夢に仮面ライダーを掲げる理由

ーーそれは小さなころからですか?

横田:そうですね。小さなころに、なぜか褒められたらそこで終わりだという思いが僕のなかにあったんです。ものすごくネガティブで、褒められたとしても、“僕はここまでだと思われているから褒められるんだ”って思っていたんですよね。さらに、僕には優秀な姉がいて、僕は不器用だったので褒められることも少なかったんです。そこで、子どもながらに、“僕がお父さんが好きな仮面ライダーになったら、褒めてもらえるのかもしれない”って思ったことがあって。それもあって、いまだに仮面ライダーになることを夢に掲げているんです。

ーー言葉を選ばずに言えば、もし自己肯定感がもっと高かったら、今の咲也には結びつかなかったかもしれない…?

横田:そう思います。今までの僕があるから、咲也を演じられるし、その不器用さ、一生懸命さが愛おしいんです。それに、この役を頂いたときに、「完璧じゃないからいい」と言っていただいたんです。当時はまだまだ経験が浅かったし、なぜ選ばれたのか分からなかったんですけど、それがすごく良かったと知って、このままでいいのかもしれないって思えたんですよね。

ーーキャリアを積んでいくにつれ、頼られることも増えると思うのですが…

横田:すごく不思議な感覚です。なんで僕に聞くんだろうって(笑)。僕は教えられるような立場ではないけれど、自分が経験したことを、役に立つのであれば教えたいって思います。

ーーきっと、そのスタンスに後輩は感謝していると思いますよ。

横田:そうだといいですね。僕自身、後輩だろうが、素敵だなと思うと取り入れようとしちゃうので、後輩だとは思っていないんです。僕自身、後輩だとしても教えてもらうこともありますし、お互いプラスになるような稽古を、お芝居をしていきたいと思うようになりました。

■28歳になった今演じたいのはメッセージ性のある役

ーーものすごくマジメなことが伝わってきますが、もし5日間、何もしなくてもいいよと言われたら何をしますか?

横田:えぇ〜!次の作品の準備がしたいです…! 

ーーでは1か月なら!?

横田:う〜ん…。そしたら、実家に帰りたいですね。実家はすごく田舎で、自然の音がすごくキレイなんです。風の音や、カエルの声など…。そういうところで育ったからか、音にすごく敏感なんです。なので、歩く時もなるべく音をたてないように歩くんですよ。

ーーあはは。そんな横田さんは、今後、どんな役を演じてみたいですか?

横田:28歳になったからこそ、難しい役を演じたいですね。今までの自分の経験からは生み出せないような、改めて見たことのない世界を演じるために勉強が広がるような、視野が広がる役を演じてみたいです。その役を通して、見てくれた人たちがいろんなことを考えるような、メッセージ性のある役を演じていけたらいいなと思っています。

撮影=岡本武志/取材・文=吉田可奈/ヘアメイク=上野彩紗/スタイリスト=齋藤良介