浅草九劇とBS松竹東急がタッグを組み、演劇作品を上演したあと、同作をテレビドラマ版として放送するプロジェクト「演劇で、テレビドラマで、」の第1弾「君しか見えないよ」が6月1日(木)から6月11日(日)にて浅草劇場で上演される。山本卓卓が作劇、かもめんたる・岩崎う大が演出を担当し、主演を川島海荷が務める。他にも、岩谷健司、郡山冬果、浜名一聖、岩崎、ベンガルが名を連ね、ドラマ版は、7月9日(日)21:00からBS松竹東急で放送される。主演を務めた、川島に本作の見どころを聞くと、「今までに演劇をたくさん見てきた人にとっても、新しい体験をしてもらえるような作品になっています」と新たなジャンルに挑戦したことをあかし、舞台演出を担当した岩崎にこだわりを聞くと「あえて演劇っぽくない動作を入れたりしましたが、意味がお客さんに伝わるよう、役者さんと一緒に作っていきました」と岩崎ならではの演出ポイントを語ってくれた。

■台本を読んだ時に感じたそれぞれの“不安” 川島「単純なお芝居じゃないと痛感しました」

――本作品への出演が決まった時の心境をお聞かせください。

岩崎う大(以下:岩崎):最初は演出のみのオファーを受けていたのですが、忙しくてきちんと台本を読めていなくて…。台本を読んでみたら、内容が難しくて「自分にできるのかな」と不安も出てきました。後から、「出演もしてみませんか?」とお話もいただいて、ディレクター役で出演することになりました。

川島海荷(以下:川島):出てくるキャラクターの個性が強く、それぞれ役の設定も違うので、きちんと整理しながら惑わされないように、自分勝手に演じることができるのか不安でした。稽古が始まると、台本だけでは見えなかったところも見えてきて、単純なお芝居じゃないと痛感しました。

――どのようなところに不安を感じましたか?

岩崎:本作にコメディー要素を取り入れるために、オファーをいただいたと思っていたので、僕の演出で素敵なお話が崩れてしまわないか不安でした。しかし、台本を読んだらコメディーのお話ではなかったので、台本に沿って素敵な作品に仕上げるのが僕の使命だと思いました。

川島:冒頭は、舞台上に私一人の空間で、かなり長いセリフでスタートすることに不安を感じました。舞台でこんなに長いセリフいただいたのは初めてかもしれないです。

■稽古中にメタファーから“休憩”の声が…「ホラーでした(笑)」

――お二人が演じる役について教えてください。

岩崎:劇中に出てくる、ピン芸人・タランチュラ米櫃とは兄弟という設定で、タランチュラのボケに対して、乾いた笑いをする業界人の象徴のようなディレクター役でした。演劇のザ・脇役って感じです(笑)。

川島:主演を務めさせていただいているのですが、この作品はメタファーの世界も描かれているので、リアルな家族の会話とメタファーの世界に挟まれた複雑な役です…。

――稽古中で印象に残っているエピソードはありますか?

岩崎:ベンガルさんが、稽古中に突然舞台袖の方に歩いて行ってしまって、みんなポカンとしていたら、「休憩じゃないの?」と聞こえちゃいけない声が聞こえてしまっていました (笑)。今からもう一回確認しようとし話していた時だったので、心配になりました…。

川島:ホラーでした…。もしかしたらメタファーの世界から休憩の声が聞こえてきたのかもしれないです(笑)。

■かもめんたる・岩崎の細部にまでこだわった舞台演出…川島「役作りの手助けになりました」

――岩崎さんは舞台演出を担当されましたが、こだわりのポイントをお聞かせください。

岩崎:この物語の内容は、すごく演劇っぽくて、演劇でないと成立しない内容になっています。そこに、演劇っぽいお芝居をつけてしまうと、「演劇ってこういう感じだから嫌い」と苦手意識を持たれている人もいるので、あえて演劇っぽくない動作を入れたりしました。ですが、物語が崩れないように、そのシーンの意味がお客さんに伝わるよう、役者さんと一緒に作っていきました。

――岩崎さんの演出をうけてみて。川島さんはいかがでしたか?

川島:本当に、一人一人のキャラクターを細部まで見てくださっているなと感じました。細部にこだわっていただいたおかげで、演じる役の設定も明確になり、役作りの手助けになりました。

■舞台&スペシャルドラマと新たな挑戦となる本作「舞台にいる登場人物と、ドラマに出てくる登場人物が同じ人物ということが、新鮮で面白い」

――本作は、6月に舞台を行った後、テレビでもスペシャルドラマとして放送されます。舞台とテレビでどのような違いがありましたか?

岩崎:舞台では演出を担当しましが、ドラマは担当していないので、ドラマでは監督に言う通りに演じることを心がけました。舞台とドラマが重なった時に、皆さんがどのような印象を受けるのかが楽しみです。

川島:舞台では、役を作り上げるというより、その場で起こっているできごとに対して反応して、会話をしていく形だったので、ドラマでも、その形を変えずに、一貫性を持って撮影していけたらと思います。視聴者の方は、舞台にいる登場人物と、ドラマに出てくる登場人物が同じ人物ということが、新鮮で面白いと思います。

――最後に、本作の見どころをお聞かせください。

岩崎:演劇っぽい物語に演劇っぽくない僕の演出がされていたり、今回共演した人たちが、みんな初対面だったり、とても珍しい作品になっていると思います。この作品を見たお客さんがどのような反応をするのかが僕自身も楽しみなので、最後まで妥協せずに一番いい形を目指したいと思います。

川島:今までに演劇をたくさん見てきた人にとっても、新しい体験をしてもらえるような作品になっています。実際に演じていて、「これはなんだろう?」と思う瞬間もあり、難しいところもあるんですが、お客さんにも同じ体験をしていただいて、それぞれの解釈で、スペシャルドラマを見て確認するのも楽しみの1つだと思います。ぜひ劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。