7月17日に開幕した、新日本プロレスの真夏の祭典「G1 CLIMAX 27」。今回、同大会に出場する永田裕志選手に、G1前の「公開練習」後インタビューを行った。自ら「最後の参戦」と銘打った今大会への意気込みや、「公開練習」に込めた思いなどを語ってもらった。

――今回が「最後のG1」と宣言されましたが、やはり最後ということは意識されますか?

特に意識してるわけではないんですが、周りの見方が「永田裕志、今年も公開練習」って(意識している感じ)。関係者の方やマスコミの方が、「最後のG1」ということですごく僕を後押しというか、背中を押してくれてますので。僕が今回のG1に向けて体調を整える上で、いい形で追い風になってますね。

――今日の公開練習を行って、コンディションはいかがですか?

今、日本列島は暑いじゃないですか。そんな中でG1を想定して、暑さに耐える練習をやっています。例えば、暑い時間帯に多摩川でランニングするとか、灼熱の道場で体を動かして重いものを持ち上げるとか、そういう練習を毎日やってる中で、ここ数年で一番いい状態が作れていますね。

この暑さの中でも汗をかくことが心地よく感じますし、そうやっていっぱい汗をかきながらガンガン、バーベルを上げている中で、(バーベルの)重量が増えてきてますよ。だから、そんなに暑いと感じないんですよ。逆に、自分の意思に反して体の方が動きたがってるので、とてもいい状態が作れてます。

――G1初戦の相手であるYOSHI-HASHI選手が、先日の公開練習でキックボクシングを行っていました。

彼にとっては一つの新境地というか、自分を変えるきっかけとしてキックボクシングをするのはいいですけど、「世間にYOSHI-HASHIをアピールする」という意味ではちょっと弱いかな。やっぱり、僕が最初に公開練習をやった時は、まず自分が何をやったら世間に届くかを考えていたんですね。

僕が公開練習をやり始めた時は、「G1 CLIMAX」の最終戦ですらお客さんが入らない時期だったので、そこにお客さんを入れなきゃいけない。

「世間の目をG1に向ける」という使命感のもと、ある意味ヘンテコなことやったり、奇抜なことをやったり…。「何でこんなことを?」というようなことをやっていたのは、そういうところも意識していました。

YOSHI-HASHIはまだ、自分を高めることで精いっぱいなんだなと感じますね。「G1を世に広める」というところまで考えがいってないようなので。でも、本人が新日本プロレスの大黒柱になりたいと思うのであれば、そういうこともそろそろ考えた方がいいんじゃないかなと思いますね。

――ある意味、永田選手がこの公開練習の流れを作ってきたと思いますが、その点に関して自負はありますか?

今は公開練習をやらなくても、山手線に「G1 CLIMAX」の広告が出してもらえるぐらい会社が大きくなってきたので、(公開練習自体)必要ないのかもしれないですけど、そういう部分では選手が会社のことを考えずに自分のことだけを考えればいいので、選手にとっても非常に良くなってきていると思いますね。

そういう意味で、僕が公開練習で世間にアピールする役目は終わったかなと思ったのですが、そうはさせてくれなかったというか(笑)。やっぱり永田裕志の公開練習が風物詩になってしまったので。その辺は苦しい時に「新日本プロレスに注目させたい」っていう思いでやったことが実を結んできたので。

――永田選手がいろいろと奇抜なことをやってきたからこそ、YOSHI-HASHI選手のキックボクシングも注目されていると思います。

そうですね。今の若い選手がどんどんアピールできる土壌にしてきたという意味では、僕が今年を入れて19回「G1 CLIMAX」を毎年盛り上げてきたことを含めて、一つの下地を作ってきたという自負があります。

――来年以降の公開練習はどうされるんでしょうか?

それは若い選手たちに任せますよ。僕が今回を最後にしようと思ったきっかけは、自分の手でこの業界に引き入れた岡(倫之選手)、北村(克哉選手)の可能性に期待をして考えた部分も大きいので。

まだ今年デビューしたばっかりで、連日試合しながら試行錯誤して、うまくいくところも失敗するところもある中で、彼らがG1に出たとしたら、突発的にすごいことをやっていきなり階段を駆け上がっちゃうんじゃないかなという可能性を感じたんです。

だから、来年2人にはG1に出てほしいし、その時の公開練習は自分たちで考えた方がいいですよ。

――公開練習を考えることもプロとして大切なことだと。

そうです。自分を高めること=「G1 CLIMAX」をいかに注目させるか。本当のエースや柱になる人間っていうのは、それが必要なんですよ。これまで公開練習でやゆされたりツッコミを入れられたことが、自分をそうした人間として成り立たせてくれたのでね。

大きなことをやった時は、周りはああだこうだ言いますよ。でも、それは(団体の、ひいてはプロレス界の)中心だから言われるわけであって、中心じゃなかったら言われないです。

今回二人をパートナーとして呼びましたけど、そういうことを学んでもらえればなと。これをやってる意義をくみ取ってくれればと思います。

――今年で19回目の出場となりますが、永田選手にとって「G1」とは?

これまで18年間、夏の一番暑い時期に、一番過酷なシングルマッチの連戦を闘ってきたわけですけど、その中で一度も欠場せず、大きなけがもすることなく、18回やってきたっていうのは、やっぱり自分の強さであり、プロレスラーとしてよくやってきたなと。だからこそ、今年もけがなく完走して栄冠を勝ち取りたいですね。

G1って、かつて他の団体の選手が「所詮、新日本プロレス内の運動会だ」なんて言っていて、確かに新日本プロレスの中での出来事かもしれないですけど、同時にプロレス界一過酷なリーグ戦なんですよ。

それを18年続けてやってきて、今年19年目にチャレンジするんですけど、栄冠を勝ち取って完璧な状態で終わらせることで、(現在の)マット界の第一人者としてやってきた意義を感じられますね。

――過去18回出場したG1の中で、特に印象的なことは?

やっぱり2001年に自分が優勝した時ですかね。あの時はそれこそ、今、僕が彼ら(岡選手、北村選手)に期待していることでもあるんですが、若い選手がああいう舞台に立つと、参戦前の力以上のものが出るんですよね。それで自分のステータスを上げていくというか、自分の強さを世間にアピールしてきた部分があって。

僕は3回目の出場でいきなり優勝したんですよ。その時、G1に優勝することで、これだけ世間の恩恵というか、いろんな見返りというか、世間の永田裕志を見る目が変わるのかってことをすごく感じたんです。だからこそ、今回優勝することでそれをもう一度味わいたいなと思いますね。

――今年のG1で楽しみなことは?

どの選手がっていうことじゃなくて、闘う選手一人一人に、永田裕志の痛さ、怖さ、強さをフルにぶつけてやろうと思いますよ。それに彼らが耐えられるのかなと。

先ほど「G1は過酷だ」って言いましたけど、僕的には要領良くってわけじゃないですけど、「これだったらこうするな」って自分の中でアイデアが出てくるので、あんまりそう感じないんですよ。

別に手を抜くということじゃなくて、フル参戦しながらもオンとオフをうまく切り替えながら闘い抜ける体力と知力が自分にはあるので。だから、そういう中で他の選手が「過酷だ」って言うほど僕は過酷だと思わないんです。「そういう永田裕志は強いな」って自分自身でも感じますし。

――最後のG1ということで、2度目の優勝を目指されていると思いますが。

それがなかったら出ないですね。毎年、優勝を目標にやってるので。これで優勝する目標がなくて、「1勝か2勝でいいや」って感じて出るんだったら、やらない方がいいですね。

岡や北村にも、「もし来年や再来年にG1参戦するなら、絶対優勝するつもりでやらなきゃダメだよ。じゃなきゃ出る意味がないよ」って言ってます。

――それを背中で示す意味でも優勝を目指すと。

そうですね。背中で語りますよ。何年か前、“親父の背中”って言いましたけど、今回も親父の背中で世の中のありとあらゆる人たちを僕に注目させますよ。そして、栄冠をとってみんなで喜びましょう!

僕は「G1 CLIMAX」を通じて、世間に永田裕志の強さ、すごさ、しぶとさ、知名度って部分でも十分にアピールできたと思うので、G1に頼らなくても自分の健在ぶりはいくらでも見せられるという自負はあります。

ここ数年はタイトルマッチに出る機会もなく、結構負けたりすることもありますが、そんな中でもいまだに「永田裕志にIWGP挑戦してほしい」って声がなくなりませんからね。それは日々、岡や北村、若いヤツらと闘ってる中で、コンディションを見せられてるからだと思いますよ。

――岡選手や北村選手のためにG1を退くということでもある?

そうですね。普通の新人だったら体作りから始まって、1年や2年じゃG1に出るところまでいかないかもしれないけど、彼らはそういう下地をレスリング界で作ってきてますから。

あとは、いろんな駆け引きとか、技術とか、戦略ってものができるようになれば、早いと思われてもそこで潜在能力を発揮できれば、一気にいける選手だと思います。

――今年は獣神サンダー・ライガー選手が「BEST OF THE SUPER Jr.」からの“卒業”を宣言されましたが、今回それに続いて永田選手がG1を卒業されるということで、ファンとしても寂しい思いがあると思います。ライガー選手の「卒業宣言」を聞いた際、どんなことを感じましたか?

その話を聞いたのが、ちょうど僕が4〜5月のシリーズに参戦してない頃だったんです。その参戦していない間に、自分でも(今年のG1について)いろいろと考えていたんですね。

今年のG1は「出なくてもいい」というわけじゃないけど、もし出られなかったとしても、今、新日本プロレスは層が厚くて、若い選手をどんどん出してますから、そこで僕が出ることで、自分が引き入れてきた若い選手の成長が止まっちゃうかなと、ちょっと考えたんです。

ただ、自分自身「G1に出たい」とか、そういう欲はまだいっぱいあるし、タイトル戦線にまだまだ絡んでいかなきゃっていうのはそれだけの状態を築いてるわけで、すごく悩んだんですけどね。ライガーさんとは別に、やっぱり自分で考えてましたね。

ライガーさんの件は「そうか…」みたいな感じでしたけど、でも自分もやっている中で、結果的には「最後」と言ってしまったことで、やっぱりそういう世代として考えることは一緒だったんだなと。

この前ライガーさんと喋ったら、「おまえは(G1卒業は)まだ早いよ」って言われましたけどね(笑)。「練習見てるけど、おまえはまだまだやんなきゃダメだろ」って、かなり強い口調で言われましたね。「俺とは違う」みたい感じでしたね。

――新日本のみならず、ことし大きなケガで戦線離脱する選手が相次いでいて、そういった状況の中で、あらためてG1という過酷なリーグ戦に対する周囲の目もシビアになっているように思います。真夏の連戦を戦い抜くために、大会期間中に心掛けていることなどはありますか。

特に体力消耗する時期ですから、しっかり栄養を摂りますね。あとは、暑さに耐えられるようなトレーニングもしっかりしています。今はやっぱり環境も良くなったので、室内でもちゃんと空調が効いていて、効率よい練習ができる練習場が多いですけど、そういう場所は極力使わないですね。

新日本プロレスの道場というのは、まさに空調設備などのない、本当にトタン屋根の練習場で。今はさすがに暑さを遮断するような設備もできてきましたけど、それでも夏は40度以上になるようなところで。そういうところでとにかく体をいじめるのが大事ですね。

――今回「最後のG1」と宣言されていますが、優勝に向けて「新必殺技」など、何か秘策はありますでしょうか。

まあ秘策があるとしたら…、それは言えないですよね(笑)。秘策を言っちゃったら秘策じゃなくなっちゃうんで。でも準備していることはありますよ。言わないですけど。

――それでは、最後に今大会の見どころなども含めて、プロレスファンの皆さんにメッセージをお願いします。

新日本プロレスの中で、今非常に若い選手も充実してきて。やっぱり参戦する選手がバラエティーに富んでいるからこそ注目されるというのもあるので、自分のような最年長の人間が、強く戦う姿を見せることで、G1をより盛り上げたいですね。そして、栄冠もしっかり獲りに行きます!