注目の劇作家11人が「人生最悪の一日」をテーマにオリジナルストーリーを書き下ろし、気鋭の映像作家が演出を担当。物語の舞台は、小劇場の聖地・下北沢。プロットが発表されるや、業界内外から熱い注目を集めているテレビ東京の新ドラマ「テレビ24『下北沢ダイハード〜人生最悪な一日〜』」が7月21日(金)、放送をスタートする。このチャレンジングな企画を送り出すテレビ東京・濱谷晃一プロデューサーに、放送直前に話を聞いた。

――このタイトルの意図から、ドラマ企画についてうかがいたいのですが。

下北沢にある小劇場のようなスケールの小ささと、ハリウッド映画の“ダイハード”というスケールの大きさ、この食い合わせの悪さがすごくいいかなと。このギャップがこのドラマのタイトルにふさわしいと思いました。「人生最悪の一日」というサブタイトルがついているのですが、“下北沢で最悪の出来事に巻き込まれる人”がこのドラマの共通のテーマです。

もともとは、「すすきのダイハード」という企画を温めていたんです。すすきのの風俗ビル火災に巻き込まれるサラリーマンの話。建物の中では映画「タワーリング・インフェルノ」的な危機的状況なのに、外野からは、仕事の休憩中に風俗に行っている人達という偏見。”寄り”で見ると悲劇なのに、“引き”で見ると喜劇。壮大なギャップを描きたかったんです。

――そこから下北沢に舞台が移ったのは?

「すすきのダイハード」の妙は、ワンシチュエーションパニックにあるのかなと。だったらワンシチュエーションで物語を作ることに長けた劇作家に書き下ろしてもらったら面白いんじゃないかと。11話の連続ドラマでやるのなら、毎回設定も変えてもらいたいし。僕が小劇場好きだったこともありますが、テレビドラマを劇作家に、オリジナルで書いてもらうことにも意味があるのかなと思いまして。それならば、歓楽街のすすきのから小劇場の聖地、下北沢に引っ越そうと。結果として、このタイトルになりました。

――下北沢では現在再開発が進んでいますが、それを意識したところはありますか?

僕が大学生だった20年前、演劇を観に行ったり、友達のライブに行ったりと、下北沢には思い出がたくさん残ってます。その町で再開発が進む中、画として残したいという思いはありました。でも逆に、再開発が進むことによって風情を帯び始めた感もありますよね。今だから撮れる風景、今しか撮れない景色もあるといいますか。本編でも下北沢という町の景色はふんだんに出てきますし、劇場やライブハウス、お店も借りて撮影してるので、たくさん登場します。冒頭の、古田新太さん、小池栄子さんの掛け合い部分も、下北沢駅近くのオレンジというカフェバーで撮影していまして、徹頭徹尾下北沢ロケにできたら良いなと思ってました。実際には、他のロケ地にもお邪魔しましたが(笑)。

――脚本家・劇作家11人を選定するにあたって意図したことを教えてください。

有名な方ばかりでなく、若手にも書いてほしいし、バラエティー豊かな方がいい、と思いました。テレビドラマとしての「下北沢ダイハード」という企画テーマがガチッとある中に、飛び込んでもらうわけですから、自分の演劇とテレビの相性が悪いと考えた方とか、テレビのロジックに修正されることを心配した方もいると思います。でも、最終的にこの挑戦的な企画に11人の劇作家が賛同してくれたことが嬉しいですね。普段は前衛的な演劇をやられている方もいて、「よくこの作家さんに声かけたよね」との声もいただきましたが、そういうオーセンティックな演劇をやっている方たちの演劇本来の魅力と、ニッチに走りがちな僕の企画とで化学反応が生まれたらいいなと思っています。

――打合せで、決まり事や設定についてお話されたことはありますか?

参考になればと、ピンチの状況やロケ場所のアイデアメモは用意しておきましたが、そこから選んでくれた人は誰一人いなかったです(笑)。でも結果的にそれで良かったですね。キャッチボールをしながら、自分のテーマに引き寄せてもらった方が、劇団のカラーが出て良いなと感じました。

全く志向の異なる11人が、“ダイハード”というテーマをどんな切り口で見せてくれるか、実際、バランスよく分かれてくれたと思います。どの作品も劇団のカラーが出ていて、面白いと思います。

――演出の方についても聞かせてください。

僕が関和亮(せき・かずあき)監督のファンで、関さんの撮るミュージックビデオはすごいなといつも思っていたんです。バカリズムさん脚本の「かもしれない女優たち」(2015年フジテレビ)を見て、映像が非常に面白い、誰が撮っているんだろう?と思ったら、その演出も関さんで。他の人が脚本を書いたコメディーを上手に撮れるのは貴重だと思います。

スミスさん、山岸聖太さんは、関さんに推薦いただいた中から、今回の企画を面白く演出してくれそうなお2人にオファーさせていただきました。監督の中には、作家性を発揮して脚本を直しすぎてしまう人もいますが、今回は脚本家ありきで、劇作家の世界観を大切にしようと進めている企画です。役割分担がはっきりしている方が上手く行くだろうと思いましたし、関さんが「アーティストが書いた歌詞を映像ディレクターが変えるということはない」とおっしゃる通り、素材をどうやって料理するか、今回は脚本家と演出家のマッチングも良かったと思います。

――7月21日、第1話放送です。この放送順は、どのように決まりましたか?

バランスですね。最初から変化球で入ると、見方が分からなくなりそうだから、ピンチ脱出型のテーマが強いものを頭に置こうとか、男性主人公が続いたら次は女性で行こうとか、全体のバランスで。後半に行くほど異色回が増えていくかもしれません。物理的に先に撮影したものから優先的に放送している傾向も多少あるかもしれないです(笑)。

――第1話「裸で誘拐された男」(主演・神保悟志)、第2話「違法風俗店の男」(主演・光石研)と風俗モノが並ぶことになっていますが・・・。

確かに…裸のおじさんが続くから、それが嫌いな人は見ない番組になっちゃうかも!(笑)。でも、各々全く違う面白さはあります。第1話の「裸で誘拐された男」は、最後まで見てもらうと、脚本(西条みつとし)の構図に一つ発明があるんですよね。ネタばれになるから詳しくは言えないけれど、舞台作家じゃないと思い浮かばなかったような発見がある作品なので、そこをぜひ見てほしいです。第2話の「違法風俗店の男」は追い詰められてひたすらジタバタする光石研さんを楽しんでいただきたいです(笑)。

――古田新太さん、小池栄子さんのエピソードを聞かせてください。

以前、下北沢で舞台を見た後、先輩と焼き鳥屋で飲んでいたんですが、そこで役者仲間とくだを巻いている古田さんと出くわしました。それが今回、ナビゲートブロックを思いついたきっかけです。演劇の人たちはホントに下北沢の大衆的な居酒屋で飲んでいるんだなぁと思って。あと印象的だったのが、古田さんが今回参加した11劇団すべてを知っていたことです。古田さんは、松井さんが書く戯曲は変態みたいなのが多いけど、今回どんな脚本になるか楽しみだねって言ってました。実際に松井さんが「女装趣味の夫を書きたいです」って言ってきた時は、なるほどなーって(笑)(松井周・作は第3話「夫が女装する女」)。古田さんは、演劇への愛が非常に深くて、若手の人のこともよく知っている。打ち上げに、劇作家のうち8人の方が来れたんですけど、古田さんと小池さんを囲む会のようになっていて、非常に楽しそうでした。

――オープニング、エンディングの音楽、映像も楽しみです。

オープニングは、ダイハード感というか、疾走感や高揚感を意識しました。凛として時雨の「DIE meets HARD」は、よく聴くと「下北沢」「ダイハード」というフレーズが“空耳する”、面白いつくりの歌詞になっています。映像は関さんが下北沢という街のPVのように作りたいという話をされて、街並みをスチールで沢山撮影してコマ撮りでつなげました。エンディングの雨のパレード「Shoes」は、町と希望をテーマに書き下ろしていただきました。あたたかくて、どこか懐かしさもある、ドラマに良い読後感を与えてくれています。下北沢在住40年の柄本明さんが自転車で街をブラブラする、何とも味わい深い映像が下北沢をノスタルジックに見せています。ドラマのロケ期間中にプライベートの柄本明さんと何度も遭遇しました。もう下北沢の日常風景なんですね(笑)。