手塚治虫「火の鳥」が初アニメ化「火の鳥 エデンの宙」西見監督の制作秘話に迫るスペシャルトーク動画が公開
■「火の鳥 エデンの宙」とは
“漫画の神様”手塚治虫が終生に渡り加筆修正を繰り返した「火の鳥」。全12編に渡って過去・現在・未来、そして地球だけではなく宇宙を舞台に“生命の本質”を描いた原作の中から「望郷編」が、「鉄コン筋クリート」「海獣の子供」などで知られるSTUDIO4℃によって初めて映像化された。
人間が地球以外の星へ移住するようになった時代。主人公のロミと恋人のジョージは2人だけの新たな生活を始めるべく惑星・エデン17へと降り立つ。しかしそこは荒廃した土と岩しかない枯れ果てた星だった。必死に水源を探し、畑を耕す毎日の中でロミが妊娠。大喜びするジョージだったが、大地震による事故で彼は帰らぬ人となってしまう。ジョージの忘れ形見でもある愛息子・カインが将来ひとりぼっちになることを恐れたロミは、カインに「13年後に目覚める」ことを約束し自らコールドスリープに入る。しかし、システムの誤作動でロミが目覚めたのは、1300年後のエデン17だった。
■西見監督だからこそアニメ化できた作品
30年前に入手した「火の鳥」望郷編の原作を自宅の本棚から持参しインタビューに臨んだ吉田アナから企画の成り立ちを聞かれた西見監督は、「『ブラック・ジャック』は何度も読んでいましたが、『火の鳥』は難しくて今回初めて正面から向き合いました。『好きにやろう』と思ったけれど、こんなことになるとは思わなくてビビっています」と謙虚な回答。
それでも吉田アナが、石などの鉱物が意思を持つ惑星でのアクションシーンについて「『鉄コン筋クリート』のときの高さの演出のように、本当に自分が空を飛んでいるみたいな気持ちになりました」と感想を伝えられると、「あそこは『しめた!』と思いました」と笑顔で自信を覗かせる一面も。
終始、照れくさそうな表情で答える監督に向井が思わず「アニメって、みなさんあんなに自信ない人で作ってるんですか?」と冗談を交えつつ、「西見監督の人間味や『いや、僕なんかが…』というバランス感覚がないと、手塚治虫さんという偉大な漫画家の『火の鳥』をアニメ化できなかったんじゃないかと思う」と分析した。
■ジョージはもともと禿げている設定だった
向井がドラマ「池袋ウエストゲートパーク」世代ということで、同ドラマに出演する窪塚洋介が声優を務めるジョージに最も気持ちが盛り上がったと言うと、キャラクターデザインについて監督は、「原作ではアイパッチで、地球で犯罪を犯してロミと逃亡する人物。たぶんストレスをすごい抱えてるやろうと思って、髪の毛が禿げている設定にしたのですが、プロデューサーから反対されました」と裏話を明かした。
また、漫画では描かれていない部分を映像化するにあたって、「アニメ的な仕掛け、工夫をたくさんした。何もないところでひとりぼっちになる怖さなど、見ている人も同じ境遇になってもらいたいと思っていた」と、苦心した部分を語った。
■「普段漫画を読んでいる時には動かない脳みその部分がぐるぐる動いた」
ストーリーについて、「『なんでこんな展開なんだろう』と気になって原作に戻ったら『こんなことを描いているんだ!』という衝撃が走った」と語る向井。特に宇宙の闇商人・ズダーバンの「文明が栄えるには、ロミたちが作った星はきれいすぎる」というセリフが身につまされ、「戦争だったり、(人間の)核を探ると欲望とか嫉妬とかいろいろなものがあるけれど、それをすごく言い表しているシーンだと思った」と語った。
そして最後には「僕が普段漫画を読んでいる時には動かない脳みその部分がぐるぐると動いた感覚があった。それぐらい壮大なテーマで、でもすごく身近な問題がいっぱい描かれていて、改めて“漫画の神様”のすごさを感じたし、それを映像化したSTUDIO4℃、西見監督のすごさを感じました」と、普段から漫画、アニメに親しんでいる向井ならではの本作への熱い感想を寄せた。