人間を食べて生きる怪人“喰種”と、彼らを取り締まる喰種対策局CCGの戦いを描いた衝撃作「東京喰種トーキョーグール」。喰種に襲われ半喰種と化した大学生のカネキ(窪田正孝)を追うCCG捜査官・亜門を演じた鈴木伸之に、映画の舞台裏や作品に込めた思いを聞いた。

――最初に脚本を読んだ感想を教えてください

原作の前半の部分が忠実に描かれていたんですが、漫画やアニメもあるので、映画の亜門を演じるにあたり、何を一番心掛けていけばよいだろうかと疑問から入りました。監督から、亜門は真っすぐな男で、人生の目標が明確なタイプなど、いろんなヒントをいただいたんです。原作で亜門はキリスト教の神父に育てられたという設定なので、参考になるかなと意味が分からないまま「新約聖書」や「旧約聖書」を読ませてもらいました(笑)。

――正義に固執する亜門を演じて何か感じたことはありますか?

信じることの“怖さ”みたいなものは感じました。みんな自分なりに正しいと信じて行動するんですが、それぞれの正義の概念が違っている。だから衝突してしまう。「東京喰種」の世界観は僕らの世界に通じることがたくさんあるので、すごく意味がある作品だと思いました。

――亜門はロングコートなど衣装も独創的でした。

撮影が夏場だったんで、暑かったんです。このコートの下にはスーツを着て、シャツは第1ボタンまで留めてネクタイを締めている。とにかく暑かったですね。CHRISTIAN DADAさんの特注のオーダー品なんです。作っていただいた時はもうすごくうれしくて。丈が長くて着た時にすごくかっこ良かったし、アクションの時もすごく映える。ただ外のロケの日は暑いなーと(笑)。CCGはクインケを入れたケースを持ち歩くんですが、あれも原作に忠実に作られていて結構重いんです。手袋をするシーンもありましたし、亜門の上司・真戸呉緒役の大泉洋さんと二人で「暑くて倒れちゃうよ」とぼやいてました(笑)。漫画の世界を日常に持ってくると、いろんな事が起きますね。

――大泉さんとは共演シーンが多かったですね。

大泉さんとは今回初めての共演で、お会いするのも初めてだったので、まずすごく嬉しいという気持ちでした。僕バラエティー大好きで、「しゃべくり007」(日本テレビ系)に出ていた大泉さんの回を見ていたのですが、何でこんなに面白いんだろうって思うくらい面白いです。現場でお会いしたら、イメージはもうそのまんまで。でも役に入ると狂気じみたキャラクターになりきって、どれが本当の大泉さんなのか分からないぐらいでした。大好きな映画「アイアムアヒーロー」(2015年)もすごく良かったし。あらためて素敵な方と近くにいさせてもらったと思います。

――大泉さんにから何か学んだことはありますか?

一緒のシーンのテストの時、「鈴木君、もうちょっとこうやったほうが伝わるよ」というアドバイスは何度ももらいました。例えば、視線もぱっと動かすのではなく、少しずつ変えた方がお客さんに伝わりやすいとか。どれも自分の中で腑に落ちる部分だったので、すごいありがたかったです。大泉さんはお話するととんでもなく面白いですけど、根はすごい真面目な方なんだと感じました。

――宿敵のような存在になる主人公・金木研役の窪田正孝さんとの現場はいかがでしたか?

窪田さんとは「HiGH&LOW」シリーズ(2015年ほか、日本テレビ系ほか)以来の2回目なので、今回また一緒だねみたいな話もしつつ。あとは一緒に休憩中ごはんを食べたり、他愛もない話をしたり。映画では敵味方ですが、普通に俳優の先輩後輩として接しさせていただきました。

■ ハードな撮影となったアクションシーン

――今回の撮影で、初めて経験したことは何かありますか?

ワイヤアクションです。実は高い所がとにかく苦手なのですが、30メートルくらい一気に飛ばされる撮影もありました。ワイヤーを固定するハーネスという器具をつけ、ワイヤーでグーっと引っ張られて一気に飛ばされるんですが、一番上まで上がった時に一瞬ふっと無重力のようになる所があるんです。落ちる前のフッと止まる瞬間がとても怖かったです。

――「東京喰種」ならではのアクションシーンは何でしょう?

亜門たちCCGは、クインケという喰種から採取した細胞で作った武器を持っています。それを持って戦うのが、「東京喰種」ならではの戦い方で、そこは新しいなと思いました。アクションシーンはCGもたくさん使うので、本当はないものに対してよけたり、見えない敵に対して向かって行くので、そこが撮影の難しさではありました。ただクライマックスで戦う相手が窪田正孝さんで、ないものを本当に見えるようなお芝居して頂き、とても助けられました。

――クライマックスの撮影は、どのくらいの時間をかけたのですか?

芝居を入れて5日間です。そのうち4日くらいアクションで、朝から翌日の朝までやってました。服の下にハーネス付ける時だけ少し大きいサイズの衣装なんですが、それでもスーツが破けたり、撮影中にクインケが2本も折れたりと、とにかく激しい現場でした。

――撮影にあたって、どのようなトレーニングをしたのでしょうか?

週4日くらい、1日3〜4時は練習しました。今までのアクションは素手がほとんどで、巨大な棒を持ったアクションは初めて。またCCGのメンバーはクインケが無くても喰種と戦える特殊な訓練を受けているという設定なので、ありとあらゆる格闘を学びました。パンチ、キックから後ろ蹴りとか、トランポリンを使ってジャンプしながらのアクションの練習がきつかったです。練習の最後には、棒を持って即興で組み手を20手くらいするのもとてもきつかったんですが、完成した映画を観ると練習が生きてましたね。

――アクション以外に肉体的な改造のようなこともしましたか?

ジムにいったり、ランニングを自主的にしてました。結構追い込んでいたので、あの時は体脂肪率5%位しかなかったんじゃないかな。体を使う作品が多いので、仕事で必要なくても普段から時間を見つけてジムで汗を流すようにはしてます。

――事務所の先輩から身体作りのアドバイスをもらったりもするのでしょうか?

とにかく「つべこべ言わず腹筋一万回やれ」って。一万回やれば自然に腹筋割れるからと(笑)。

――「東京喰種」に出演したことで、何か学んだことはありましたか?

お芝居もそうですし、アクションひとつとっても勉強になりました。あとはやっぱり作品のメッセージ性には僕自身、いろんなことを考えさせられました。自分が正しいと思っていることが本当に正しいのかどうか。自分が正義だと信じていれば他人がどう思おうが関係ないという生き方もあるし、逆にみんなが正しいと感じる生き方こそが正義だとも言える。それって、あらゆる人や物事に共通することだなとあらためて感じました。

――そういう意味では、正義を信じて突き進む中、金木との戦いで何かを感じる亜門も作品のテーマを体現していましたね。

答えが見えていたからこそ、逆に葛藤したり迷いが生まれる。そんなところは作品のメッセージ性にもすごくリンクしていますね。カネキも普通の少年だったのに、ある日いきなり半喰種になってしまう。登場人物それぞれを追い掛けても、また違った面白さが味わえると思います。個人的にスゴイと思ったのは、桜田ひよりちゃん演じる喰種の少女ヒナミがすごくいいセリフを言ってるシーン。素直な子供だから心の声がそのまま表に出てきたんだろうし、きっと誰もが共感できるんでしょう。彼女のお母さんリョーコを演じた相田翔子さんはじめ、女性キャストがすごく活躍するし、共感できる部分もたくさんあると思います。

――鈴木さん本人が、普段、絶対に信じているものは何かありますか?

自分の舌ですかね(笑)。お菓子とアイスが大好きなので、とにかく食べまくっています。おかげで新商品のポテトチップスが出た時は、パッケージを見ただけでなんとなく味が見極められる力がつきました。お菓子とアイスに関する味覚は、他の人より秀でていると思います(笑)。

――「東京喰種」に限らず、最近は「実写化不可能」といわれてきた漫画が次々に実写化されています。無理そうだけど、こんな作品に出たいと思う漫画はありますか?

僕自身はほとんど漫画は読まなかったんですけど、この間、「アメトーーク!」(テレビ朝日系)で漫画芸人の回を見てから、よし漫画読もうと決意して、ジャンルを問わずいろいろ読みはじめています。そんな僕が、昔からはまっていた唯一の漫画が「元祖浦安鉄筋家族」なんです。究極のすべりギャグをずっとやってるだけなんで絶対無理だと思いますが、もし実写にするなら大鉄やりたいですね。ブクブクに太ったフグオとか、小鉄もいいですね(笑)。ちなみに「浦安鉄筋家族」の話なら、何時間でもしゃべれます。

――今後どのような役柄に挑戦していきたいとかありますか。

「海猿」のような男くさい作品をやってみたいと思っています。あとは戦争ものなど、人の命に携わるようなテーマを持った役を演じてみたいです。これまで作品を通していろんなことを教えてもらいました。一つまた一つと違う役を演じることで、自分自身も成長していきたいと思っています。