舞台「信長の野望・大志 -冬の陣- 王道執行〜騎虎の白塩編〜」が、11月8日(木)から東京・北千住のシアター1010にて公演を開始する。本作はコーエーテクモゲームスの人気歴史シミュレーションゲーム「信長の野望・大志」を原作とする舞台で、今年5月に初演「春の陣」を上演。「冬の陣」はその続編となる。

「春の陣」で浅井長政を討ち取った織田信長だが、将軍・足利義昭が発した信長討伐に呼応して、今度は武田・上杉連合が敵として現れる。歴史上では実現しなかった武田家、上杉家の同盟だが、本作は平成の記憶を持つ者が己の運命を変えるべく歴史に抗う物語。史実とは異なる“もしも”の展開と、織田・徳川サイド、武田・上杉サイドのそれぞれの視点から見た2種の公演(ダブルストーリー)が大きな見どころとなる。

さらに、「冬の陣」に続く最終章「本能寺の変」が、2019年5月(東京・1010シアター、埼玉・戸田文化会館)にて上演されることも発表された。そこで対決するのはもちろん織田信長と明智光秀。日本史に刻まれる一大事変に2人はどう向かっていくのか。

約40人の役者が稽古に励む中、信長役の鶏冠井孝介、明智役の谷佳樹に「冬の陣」の見どころ、役への気持ち、そして最終章「本能寺の変」へ向かう心境などを語ってもらった。

■ 明智の暗躍は前作以上? 新兵器とは?

――約半年ですぐに続編の公演となります。前回から心構えの変化などはありますか?

鶏冠井:前回はシミュレーションゲームからの舞台化ということで、最初はどういうものになるのか想像ができなかったんですよ。歴史と違う動きをするということで、台本が出来上がるまで本当に何も分からなくて。続編の今回は、前回出来上がった基盤を行くんですが、やっぱり色々歴史と変わっていくから先の読めない部分が多く、「ここでこういう風になるのか!?」と、今すごく驚きながら稽古をしています(取材時、10月中旬)。

谷:前回の明智光秀はキーになる人物でありながら、裏での動きが多かったんですよね。今回も要所要所で出番はありつつも、武田・上杉サイドとの関わりはなさそうだし、そんなに出番は多くはないだろうと思っていたんです。でも、いざ台本を読んでみたら前回以上に「こやつは何なんだ!?」という動きをたくさんしていて。いや、自分の役ですけどびっくりしました。

鶏冠井:明智は前回よりも不気味だよね。暗躍の仕方が。

谷:そう。前回、短銃を隠し持ってましたけど、また新しい武器を持ってるんですよ。この時代にはない新兵器を隠し持っていて、それを使って明智は一体何をするのか。殺陣とかの立ち回りも十分見応えがあるんですが、明智光秀としてはその思惑や駆け引きの会話の部分をより濃く見せていけたらと思います。例えば策士っぽい動きを意識して作ろうかなと思っています。

――今回、織田・徳川軍に対するのは武田・上杉軍で、これは歴史好きにとっては夢のある“もしも”ですよね。

鶏冠井:これ、本当にドリームマッチじゃないですか。

谷:軍神と言われた上杉謙信と風林火山の武田信玄が手を組むというのは、最強タッグですよ。

鶏冠井:もし本当に手を組んでいたら、信長の勝ちはなかったと言われているくらいの武将2人だからね。

――史実では、武田信玄は信長討伐の出陣中、病が悪化して病死してしまいます。それがなかったら、野田城を落とした後も侵攻は止まらなかっただろうと。

谷:そうなんですよね。信玄の死が武田家にとっても、歴史にとっても大きな変わり目になるんですけど、「冬の陣」ではまたそこがすごく面白い展開になってくるんですよ。「マジか!?」っていう流れで。

鶏冠井:僕もそこは「おお!」ってなったところです。

――最終章「本能寺の変」が発表されたこともあり、織田・徳川軍の勝利という結果は分かりつつも…。

鶏冠井:ただでは勝たせてくれないんですよね、平成の記憶を持つこの敵は。

――「春の陣」でも思ったのですが、歴史と全く違う方向に進むのかと思いきや、やっぱり史実の結果に向かっていくのか?という揺らぎが面白いですね。歴史を知っているとその揺らぎに「え!?」となる場面が何度も訪れて。

鶏冠井:その揺らぎを生むのが平成の記憶なんですよね。平成の記憶を持っているが故に、自分を苦しめたり、新しい道を拓いたりしていくわけなんだけど、明智はどうなのよ? 明智は何を考えているのか全然分からないし、平成の記憶を持っていそうなんだけど、信長たちはまだ分かっていなんだよね。

谷:そうなんですよ。見ている側は分かっていても、明智自身は明かしてないんですよね。ただ、今回は明らかに覚醒する瞬間が出てくるので、そこがどうなるのかはお楽しみということで。

――井伊直虎も平成の記憶を持っているんじゃないのかという雰囲気でしたが?

鶏冠井:さあ、どうでしょうね(笑)。

■ やっぱり明智には勝てないかも?

――前回の信長は、信長ではあるが平成の記憶を持った人でもあるという見え方でした。最終的に信長として戦国を生きることを決心しましたが、それによる役作りへの意識に変化はありますか?

鶏冠井:1つの高い壁を越えましたが、それで強い信長になれたかというと、やっぱりそうではないんですよね。平成の人の弱さというか、戦国の世ではまだまだ全然甘ちゃんで、洗礼を受ける場面もまたあったりして。でも、この作品の信長はそういう人物で良いと思ってます。

もちろん信長らしい強さは意識してますけど、現代人の弱さや優しさといったものがあるからこその行動と感じてもらえるように稽古しています。映画やドラマ、漫画とか、色んな作品でオンリーワンの信長がいるように、この「信長の野望・大志」だけの織田信長を作り上げていきたいです。

――谷さんは役作りに関してはどのように考えていますか?

谷:明智は何を考えているのか、心の中がまるで読めない謎多き人物なんですが、今回、彼の根幹みたいなところを描くシーンがあるんですよ。ここが明智の行動のきっかけになったのであろう、というシーンが。そこを明確に体現することができれば、皆さんの明智への感情移入も高まっていくんじゃないのかと思っています。

明智の野望、彼の心がどこに向いているのかをしっかり掴んだ上で、濁っているというか、正義とも悪とも取れる明智を見せたいですね。

――そういうことが描かれつつの、最終章へ、ですね。史実だと信長は本能寺の変で謀反に遭うわけですが、そこに向かうお気持ちはどうですか?

鶏冠井:めっちゃ怖いですよ。本心はどうあれ、「春の陣」では明智ってどんな時でも信長を助けてくれていたじゃないですか。「某に案がございます」と進言してくれたり。長政を殺すとかもあって家臣は怪しんでるけど、信長は分かり合いたいと思ってるんですよ。だからこそ、まともにやったら勝てないと思う。明智には(笑)。

谷:僕という明智は、孝介君が作る信長の優しさに上手く付け入ってる部分がどこかにあると思うんです。明智も信長も、それぞれの戦国武将は作品によって解釈が違うじゃないですか。「信長の野望・大志」の舞台では、平成の記憶を持った優しい信長らしくない信長がいて。僕は信長が陽だとしたら明智は陰だと捉えていて、その差が濃ければ濃いほど本能寺の変が酷いことになると思うんです。

それで役作りで考えていることが1つあって、信長に忠実な明智もいいんじゃないのかなと思ってるんです。忠実で信頼があるほど裏切った時の落差が大きくなって、それは王道な見せ方としてありじゃないのかと。

――久保田唱さん(演出家)に言われるがままではなく、自分で作った解釈を見せる場合もあるわけですか?

鶏冠井:そうですね。それが舞台の稽古なので。それはちょっと違うということもありますけど、演出家を超えた瞬間があると嬉しいよね。「それもあるか」って言ってもらえると、「よっしゃ!」てなるから。

谷:芝居は無限大で、「はい」のひと言でも何十種類とあるじゃないですか。面倒な時と体調が悪い時は全然違うものだし、大きな道筋が間違っていなければ解釈はどんどん考えるべきなんです。芝居は呼吸というか、役者同士の駆け引きでもあるし、座組の空気でも色々な芝居が生まれてくれるんです。稽古はそれを試せる場であるし、演出家との勝負の場でもあると思ってます。

――本番の公演ごとでも変わりますし、そこが舞台の面白いところですね。

鶏冠井:格好良いな。俺ももっと考えよう(笑)。

――信長と明智がどんな関係に振られていくのか楽しみです。「冬の陣」を経て、最終章が葛藤なのか、憎しみなのか、野心なのか。どんな感情で対決するのかと。

谷:明智は戦国武将の中で一番謎多き人物と言われているじゃないですか。それは僕にとってはとてもありがたいことで、どんな解釈をしても正解にすることができるんですよ。脚本がどうなるかまだ分かりませんが、僕が今思い描いているのは信長をとてつもなく落とし込んで、徹底的に悪に徹する明智です。

鶏冠井:それ、一緒のイメージかも。最終章、織田対明智と聞いて、家臣も城も、全部明智に取られた信長を思い浮かべたから。怖いなあ。

■ 殺陣はもちろん、姫たちの可愛さにも注目!

――前回は殺陣のすごさにも目を奪われました。「冬の陣」でも期待できますか?

鶏冠井:もちろんです。むしろ殺陣は今回さらに多くなってます。場面もそうですけど、手数がすごく増えてるんですよ。

谷:上手くできるか心配なくらいで。

鶏冠井:んなこと言って、また明智が格好良いんですよ。殺陣への注文も「格好良く、斬って舞ってください」みたいなことを言われていて。

谷:そうなんですよ。舞えって言われてもと思うんですけど(笑)。剣舞に近い感じかなと思ってやってます。でも明智だけでなく、武田や上杉、本多忠勝、真田昌幸とかもすごいですよ。歴史上の猛将たちですからね。殺陣は前回以上に見応え十分です。信長も豪快だし、孝介君は剣道経験者だからちゃんと日本の武士っぽい。腰がしっかり落ちていて、僕とは全然違うなって感じます。

鶏冠井:対極だよね。殺陣指導でも、こっちは無骨に、こっちは華麗にと言われるから。

谷:華麗に軽くって(笑)。以前ワークショップで殺陣を習っていたことはあるんですが、剣を持っての殺陣って実はそんなに経験ないんですよ。本当に何作かくらいで。あまり無茶を言わないでほしいです(笑)。

――一騎打ちも大人数の乱戦もまた注目ですね。

谷:あと、姫たちがまた可愛い! オープニングでの舞いは本当に癒やされるし、できればずっと舞っていてもらいたい。武将だけでなく、姫たちには姫たちの戦いがあって、そういう色とりどりな部分にも目を奪われてほしいですね。

鶏冠井:新しい姫もいるしね。

――浪役の仙石みなみさんは上杉の姫ですが、好きな武将に織田信長を挙げていました。信長談義とかされましたか?

鶏冠井:いえ、まだ全然。稽古ではまだそういう面は見せてもらってないですね。仙石さんのお眼鏡に叶う信長になれるように頑張ります(笑)。

谷:そこ、帰蝶じゃないの!?

鶏冠井:帰蝶とも分かり合わないと(笑)。

――帰蝶には明智が近づいていて、どういう結末を迎えるのか。「冬の陣」、そして最終章へ色々気になることだらけです。

鶏冠井:前回すごくご好評を頂いて、続編上演前から次作も決まっているというのは嬉しい限りです。この作品をご覧になってくださった皆さん全員の心に残る作品にしたいですし、「信長の野望・大志」はどの武将でも天下を狙えるゲームだから、信長編の次は明智編、武田編みたいに末永く続くシリーズになってほしいです。

谷:劇場も大きくなっての続編ですが、それはやっぱり初演が評価されたからだろうし、前回で上がったハードルを越えないといけないという気持ちも強いです。そうでないとお客さんも満足できないだろうし、上へ上へと向いていかなければ負けだと思ってます。物語のスケールもどんどん大きくなっていくので、最終章が楽しみと言っていただけるように「冬の陣」を全力でお届けします。

【田中れいな、今年は舞台「信長の野望」でバースデー!劇中歌3曲をプラチナエースの美声で披露する!! へ続く。同記事は近日配信予定】(ザテレビジョン・取材・文:鈴木康道)