最新研究に基づく新事実を織り交ぜた再現ドラマと古舘伊知郎の実況で、歴史の謎をひもとく特番「古舘トーキングヒストリー〜幕末最大の謎 坂本龍馬暗殺、完全実況〜」(夜9:00-11:10、テレビ朝日系)。1月5日(土)放送の同番組で“再現ドラマの実況役”を務める古舘伊知郎に、番組への思いや撮影の裏話、共演者について、また番組テーマ「坂本龍馬」の印象などを聞いた。

――「忠臣蔵」「本能寺の変」に続くシリーズ第3弾「坂本龍馬暗殺」ということですが、これまでと比べていかがでしたか?

古舘「このシリーズは、自分自身でもやりがいを感じていますし、周囲からの期待も感じるんですが、今回はいつにも増して面白い番組になっていると思います。坂本龍馬のいた時代は(現代に)近いので、リアルなんですよね。本当にこうだったんだろうなという現実味が感じられる。かなり真実に近い形で再現できていると思います」

――坂本龍馬という人物について、どんな印象をお持ちですか。

古舘「坂本龍馬というのは、日本を変えたいという理想を掲げるロマンティスト。それでいて、前向きで、海運業に目を付ける先見の明をもったビジネスマンであり、リアリストでもある。カリスマでありヒーローでもあるという、まさに幕末を代表する人物なんです。

実は私は以前から、過去の小説や映画では、坂本龍馬という人物が綺麗に描かれすぎているのではないかと思っていたんですが、今回の番組では、これまで描かれることのなかった龍馬のさまざまな面が見えてきたんです。まさに、カリスマの三面鏡ですね(笑)。龍馬を演じた(渡辺)大さんが、年齢的にも(当時の龍馬と)近いし、本物の坂本龍馬に見えてきて。実際に会ったことがあるわけじゃないけどね(笑)。でも、役者って本当にすごいなあって感じましたね」

――実況役を務める上で、一番気を遣ったことは何でしょうか。

古舘「セリフをしっかりとしゃべることは当然ですけど、これまでのシリーズは、しゃべりが一本調子だったかなという反省があって。やはり、もっと役者さんの芝居を立てないといけないなと。ですから、トーンを落としたり、抑揚をつけたり、“しゃべるという演技”をすることを心掛けました。また、事実を間違えてはいけないという前提を踏まえた上で、セットの雰囲気や現場の空気に応じて、セリフを自分の言葉に昇華して、アドリブで実況した部分もあります」

――「寺田屋襲撃」のシーンは、1カメでのノーカット長回し撮影だったそうですね。

古舘「大変だったけど面白かったです。でも私なんかより、やっぱり役者さんのほうが大変だったと思いますよ。寺田屋に龍馬と一緒に滞在して、徹底的に龍馬をサポートする三吉慎蔵を濱津隆之さん(映画『カメラを止めるな!』主演)が演じているんですが、龍馬と慎蔵の血みどろの逃走劇を、大さんと濱津さんが見事に演じていて。

龍馬は、襲撃の際に指に深い傷を負うんですが、意識がもうろうとする中、500メートルくらいの距離を必死に逃げるんです。もう、よれよれの状態で身を隠しながら、そこからまた走ったり止まったり。これを演じるのは本当に大変なんですよ。しかも撮影は1回で済むわけじゃない。私ももう若くないから、へとへとになっちゃってね。『(撮影用の)サイドカーに乗せてくれ』って頼んだくらいですから(笑)」

それでもやっぱり完璧にできるわけじゃない。正直、みんなが納得できるような出来にはならない部分もあったんですが、1カメで大変な撮影を『もう1回!』とはなかなか言いにくいでしょ? それを、大さんが『もう1回やりたい!』と言ってくれて。そこからみんな一致団結したんです。この寺田屋襲撃のシーンの撮影は、私のしゃべり手人生の中でも、忘れ得ぬ思い出になりました」

――橋本マナミさん演じるおりょうの入浴シーンも、見どころの一つですよね。

古舘「橋本マナミの妖艶な演技と表情というものを、いろんな角度から何度も撮ってましたよ。私のシーンなんか、すぐ『はい、OK!』って終わっちゃうのに(笑)。それくらいこだわってましたね。橋本さんは、とても気を遣ってくださる方で、『(お風呂に)一緒に入りますか?』なんて言ってきてくれて。あれは一生の思い出です(笑)。 おりょうが、なぜ午前3時にお風呂に入っていたのかとか、断片的には分かっていた史実が、今回で全てつながりました。そんな風に、歴史の謎が解明されていくところにも注目してほしいですね」

――見どころが満載ですが、なかでも力が思わず入ったシーンは?

古舘「朝8時半になると、どっと観光客が増えてしまうので、かなり早朝に二条城の前で、歴史的な大転換と言われる大政奉還のシーンを撮ったんです。龍馬という人物にとっても大きな転機になった出来事ですし、それを本物の二条城の前で実況できたというのは、グっときましたね。この大政奉還のシーンも、みなさんは教科書なんかで紹介されている場面を想像すると思うんですけど、これがまたちょっと違うんですよ。そういう細かいところまで見ていただけたらうれしいですね」

――坂本龍馬が好きな人も納得のここに注目してほしい点を教えてください。

古舘「繰り返しになりますが、龍馬は一つの面じゃなくて、さまざまな一面を持っている。それは、新しい事実を用いながら、今回の番組でしっかり再現できていると思います。龍馬に限らず、人は誰しも、仕事の時だったり、プライべートだったり、いろいろな“心の部屋”を持っていると思うんですね。でも、龍馬の“心の部屋”はモダン調だったり、ロココ調だったり、一部屋、一部屋が本当に濃いんです。やはりその点には注目していただきたいと思います。『寺田屋事件』『大政奉還』そして『近江屋事件』。龍馬の人生にとっては特に大事な期間の物語です。ぜひご覧ください」

――ありがとうございました。さらなるシリーズ化が期待されますが、今後実況してみたいと思うテーマはありますか。

古舘「時代的にかなり遠いので難しいかもしれませんが、いつか『卑弥呼』を実況してみたいですね。今や時代が進んで、いろいろな歴史の解析がなされていますが、卑弥呼についてはいまだに邪馬台国の場所すらあいまいなんです。卑弥呼という人物自体、かなり謎めいていて、私もとても興味がありますね。近い時代でいうなら、戦後の時代も面白いかもしれません。戦後の日本も、エピソードには事欠かないですからね」(ザテレビジョン)