いつも明るく一生懸命で、ちょっぴりドジっ子。まるで少女漫画から抜け出てきたようなキャラクターで、男女問わず絶大な人気を誇る女優・綾瀬はるか。彼女のこうしたパブリック・イメージは、TVのバラエティ番組をはじめ、新作映画のリリースごとに開催される完成披露試写会や公開初日舞台挨拶で繰り広げられる、ちょっとピントのズレた“天然ボケ発言”によって築かれてきた。

本人そのまま?と思わせる、おっちょこちょいの新人CAを演じた『ハッピーフライト(2008)』(2月23日[日・祝]午後1:15 WOWOWシネマほか)の舞台挨拶では、「私とは真逆の役でしたが、一生懸命やりました!」と綾瀬が宣言すれば、矢口史靖監督が「ほとんど素で演じてましたね」と瞬殺。

そんなやりとりを見て、共演の吹石一恵が評した「周りにいる人全員をツッコミにしてしまうキャラ」という表現は、今では綾瀬の代名詞となっている。

暗いニュースが飛び交う昨今だが、彼女の発言が見出しを飾れば、それを目にした瞬間は誰もがほっこりなごんでしまう。ここまで無害で明るい話題を提供してくれる美人女優(しかもグラマー)は稀少ゆえ、特にオジサマ読者の多いスポーツ新聞や週刊誌の記者たちは、綾瀬の新作会見となればこぞって馳せ参じるように。

かくして、ボケる綾瀬はるかと愛でるメディア、という幸福な関係性が成立して久しい。実際こうした会見場で、彼女にデレるオジサン記者がどれだけ散見されてきたことか! そして気付けば彼らはもれなく自動的に映画のPRに貢献しているのだ。

本人もそれに気付いてか無意識か、のびのびと“天然発言”は続く。密室型ミステリー『インシテミル 7日間のデス・ゲーム(2010)』(2月24日[月・休]午後0:45 WOWOWシネマほか)の試写会では、観客が映画を鑑賞する前の挨拶で「皆さーん、いかがだったでしょうか?」と無邪気に感想を尋ね、観客は爆笑。

生真面目でマイペースな調査官を演じた奇想コメディ『プリンセス トヨトミ(2011)』(2月24日[月・休]午後2:45 WOWOWシネマほか)の完成披露会見では、舞台となる大阪城を眺めながら共演の堤真一に「お寺って、やっぱりいいですよね〜」とのたまい、「え、お寺!?」とツッコんだ堤に「あ、間違った、神社だ!」と返したという、驚愕のエピソードが堤から暴露された。

銀幕から飛び出してきた映画のヒロインと、現実世界の青年との恋を描いた『今夜、ロマンス劇場で(2018)』(2月24日[月・休]午前10:45 WOWOWシネマほか)の試写では、司会者に「恋人を振り回すほう? 振り回されるほう?」と尋ねられ「結局、手のひらで転がされている」と答えるつもりが「手の内で殺されて…」と言い間違い、会場を笑いの渦に巻き込んだ。

これだけ天然エピソードに事欠かない大人物ではあるが、素顔の綾瀬は、実は努力の人でもあるという。“座頭市の女性版リメイク”となる時代劇『ICHI(2008)』(2月23日[日・祝]午後5:00 WOWOWシネマほか)では、未経験だった殺陣を華麗にマスター。

『万能鑑定士Q モナ・リザの瞳(2014)』(2月24日[月・休]よる6:45 WOWOWシネマほか)では、何でも鑑定する博識の鑑定士という役柄上、立て板に水のごとく語る膨大な長ゼリフがあるのに加え、かなりな量のフランス語セリフまで、サラリとこなしてみせた。

SFコメディ『本能寺ホテル(2017)』(2月24日[月・休]午後4:45 WOWOWシネマほか)では、もうひとつの彼女の武器でもある豊満なバストを強調すべく、ほぼ全編トップスの上からポーチを斜めがけするスタイルで京都の街を駆け回る、体当たり演技を披露した。

そんな彼女に魅了されたのは、記者たちだけではない。脚本家で監督の三谷幸喜は「綾瀬さんは日本のジュリー・アンドリュース」とベタ褒めし、自身初のSF作品となった『ギャラクシー街道(2015)』(2月23日[日・祝]午後3:00 WOWOWシネマほか)ではそのクラシカルな魅力が活きる、明るくキュートな宇宙人の若妻役を当て書き。

その際、綾瀬と親交のある長澤まさみからの「綾瀬さんは食べ方がかわいいから、ものを食べているシーンを入れたほうがいい」というリクエストも受け、食べるのが最も難しいハンバーガーを食べさせた、と三谷は語っている。長澤も絶賛したその食べっぷりは本編で確認してもらうとして、この逸話は、名だたる脚本家も共演女優も、彼女の魅力に陥落した証左だろう。

最後に参考までに、綾瀬と共演経験のある香川照之がラジオで絶叫していた一言をお伝えしておこう。

「綾瀬はるか! あいつは頭いいですよ、気を付けないと。彼女をね、ボケてるだ天然だって言ってるようじゃ、もう綾瀬はるかの手のひらの上で転がされてるようなモンですから!」

香川が共演中に綾瀬の何を見たのかは不明だが、その天然キャラも、努力家の彼女があえて磨いた“技術”のひとつなのだとしたら…? もちろんその答えは、映画を観るにおいてはどちらだって構わない。

ただそんな想像を膨らませながら彼女の映画を観るのも、まんまと“手の内で殺される”のも、既にその魅力に完落ちしたファンには、至高の喜びなのだ。

■ 文=magbug

テレビ誌、女性情報誌の編集を経てライターに。WOWOWは開局以来のヘビーウォッチャー。30年以上ノルマに課す「TV放送された映画の録画」は現在1万本超え。(ザテレビジョン)