49歳とは思えない若々しい顔に、見事な“細マッチョ・ボディー”で男女問わず多くのファンの心をわしづかみにしてきた俳優、西島秀俊。アダルトな魅力がほとばしる彼の華麗な役者人生を、今ここで足早に振り返ってみたい。

■ ハードボイルド作品の軌跡

ハードボイルドな西島秀俊像を決定付けた作品として真っ先に思い浮かべるのは、香川照之とのタッグで話題となったWOWOW&TBSの合作ドラマ「ダブルフェイス」シリーズ(2012)で演じた麻薬密売組織に潜入する捜査官の森屋役や、ドラマ版から劇場版へと発展した「MOZU」シリーズ(2014〜2015)の警視庁公安部捜査官の倉木役、いや、さらにさかのぼって、竹内結子が姫川玲子を演じた「ストロベリーナイト」シリーズ(2010〜2013)の警視庁捜査一課巡査部長、菊田役(実は甘いモノが好きというギャップもいい!)だという人も、きっと多いに違いない。

その後も、小栗旬主演のドラマ「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」(2017)で演じた警視庁公安部巡査部長の田丸役などを通じ、「クールな表情でバリバリのアクションもこなせる、実は“脱いだらすごい“細マッチョ・ボディー”を持つ俳優」として、西島秀俊はTVとスクリーンの間を自在に行き来し、お茶の間(という古風な表現がまだ通用すればの話だが……)にその名をとどろかせてきた。

■ デビュー後、「はぐれ刑事純情派V」「あすなろ白書」へ出演

西島の俳優としての本格デビュー作がドラマ「はぐれ刑事純情派V(1992)」の新人刑事役というのも、彼が後に何度も刑事役を演じることになったのを考えれば、非常に興味深い。

そしてデビューからおよそ1年後、西島はドラマ「あすなろ白書(1993)」で、主人公、掛居保(筒井道隆)にひそかに想いを寄せる御曹司、松岡役を演じて一躍アイドル的な人気を誇るが、「ともに女性作家による人気コミックが原作」といった条件も踏まえた上で言うならば、こちらは“刑事役の原点”ならぬ、“ゲイ役への布石”といっても、あながち過言ではないのかもしれない。

つまり、2019年に放送され内野聖陽演じるケンジとのほほ笑ましい掛け合いで「西島&内野が互いに新境地を切り開いた作品」としても話題になった、ドラマ「きのう何食べた?(2019)」で演じた料理上手で倹約家のシロさんにつながる……、というわけだ。

■ 活動拠点を、“TV”から“映画”製作の現場へ

だが、もともと横浜国立大学の工学部在学中に「映画関係の仕事に就きたい」との思いで芸能事務所に履歴書と写真を送り、オーディションを経て俳優デビューを果たした西島にとって、当時あくまでこだわりたかったのは、華やかな「TVの世界」ではなく、どこか泥くさくも、より一層、自由なにおいがする「映画の世界」だったことから、西島はドラマで手にした人気や知名度を惜しげもなく手放すような形で、自身の活動拠点を「TVから映画製作の現場」へとシフトする。

この頃の西島といえば、既に「あすなろ白書」でかなり顔が知られていたにもかかわらず、特段変装もせずに日夜名画座に通い詰め、“古典からアート系まで新旧あらゆる映画をむさぼるように観る映画狂”として、映画好きの間で話題となったものだった。今となってはもはやそれは都市伝説であるかのようにも聞こえるが、事実、筆者は都内の名画座のロビーや階段で、何度か“素の西島秀俊”と擦れ違っていた。

■ えたいの知れなさから来る妙な色気

当時、立て続けに出演していたミニシアター作品において西島は、どちらかといえば影のある人物を多く演じていたことからも、一見すると物静かな風情だが、実際は何を考えているのかよく分からない、えたいの知れなさから来る妙な色気を強く放っていた印象がある。中でも西島の色気がほとばしる作品をいくつか挙げてみると……。

諏訪敦彦監督のデビュー作『2/デュオ(1997)』での売れない俳優が醸し出す繊細さや、瀬々敬久監督作『冷血の罠(1998)』で演じた、妻を自殺へと追い込んだ犯人を執拗に追い詰める夫の鬼気迫る狂気。北野武監督の『Dolls ドールズ(2002)』で見せた、自らのせいで正気を失った恋人を赤いひもで引いてぶざまに歩き続ける男の艶めかしくも空虚な顔……といったように、20代半ばから30代前半にして既に西島はそこはかとない、独特の雰囲気をまとい始めていた。

中でも特に衝撃的だったのが、南Q太の人気コミックを古厩智之監督が映画化した『さよならみどりちゃん(2004)』で演じた超いい加減な男ユタカだ。「勝新太郎に憧れて、太ることにとりつかれていた」という西島が本作で披露する分厚い男の背中は、今の引き締まった細マッチョの西島秀俊からは想像もつかないだらしない男の色気がダダ漏れなのだ。

さらに、西島秀俊の色気を存分に堪能できるという意味では、中山美穂との大胆なぬれ場が話題となったイ・ジェハン監督の映画『サヨナライツカ(2009)』も外せない。

■ アクションシーンに挑み続ける40代

そんな西島がアクション俳優としても頭角を現すきっかけとなったのは、イラン出身の名匠アミール・ナデリ監督がメガホンを取った映画『CUT(2011)』あたりからだったのではないかと記憶している。

はれ上がった顔から血をにじませながら、映画のために身を投じる狂気の映画監督を全身全霊で演じ、第68回ヴェネチア国際映画祭でも熱狂的なスタンディング・オベーションを浴びた西島は、本作以降、先述した数々の刑事ドラマや日韓合作映画『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間(2013)』などで、40代という年齢をものともせず、超本格的なアクションシーンに挑み続けているのだ。

■ “最強のえたいの知れない色気”漂う作品とは?

そして、今年芸歴28年を迎える俳優・西島秀俊の役者人生において、現時点での集大成的な役柄の一つとも呼べるのが、映画『空母いぶき(2019)』(6月27日(土)夜8:00、WOWOWシネマほか)で彼が演じた「どんな時も冷静沈着で迷いのない、航空機搭載型護衛艦いぶきの艦長、秋津竜太役なのではないだろうか。

西島扮する秋津が劇中で時折浮かべる不敵なほほ笑みには、まさにこれまで西島が数々の映画やドラマで演じてきた役柄を凝縮したかのような“最強のえたいの知れない色気”が詰まっている。『空母いぶき』で共演した佐々木蔵之介と並び、長らく“独身最後のとりで”のうちのひとりとしても知られていた西島も、いまや二児のパパ。映画のみならず、ドラマやCMでも八面六臂の活躍を見せる西島秀俊の歴史を振り返ると、まさにこれまでのすべてが役者としての成長の糧になっていたことが、きっと手に取るように分かるに違いない。

■ 文=渡邊玲子

インタビュアー・ライター。「DVD&動画配信でーた」「キネマ旬報」「キネマ旬報NEXT」「nippon.com」などでインタビュー記事やレビューを執筆中。国内外の映画監督や役者が発する言葉に必死で耳を傾ける日々。(ザテレビジョン)