2020年版が放送中の連続ドラマ「ハケンの品格」シリーズ、“月9枠”での特別編放送決定が話題になった「やまとなでしこ」、脚本を手掛けているのはともに中園ミホ。期せずして中園の2作が、同期間のゴールデン・プライム帯(夜7時-11時)でオンエアされることになった。中園は他にも「ドクターX」シリーズ、連続テレビ小説「花子とアン」、大河ドラマ「西郷どん」などを手掛けるヒットメーカーだ。中園脚本の何が、視聴者を引きつけるのか。フリーライターでドラマ・映画などエンタメ作品に関する記事を多数執筆する木俣冬が解説する。

■ 徹底した取材で“女性の本音”描き出す

スーパーハケン・大前春子(篠原涼子)が正社員たちを圧倒するドラマ「ハケンの品格(2020年版)」(毎週水曜夜10:00-11:00、日本テレビ系)は2007年に放送されたパート1の放送から13年の時を経て、なお多くの視聴者から支持を得ている。

2020年4月から大企業で同一労働同一賃金制度がはじまったことによって、正社員も派遣社員も労働条件に区別がなくなるように改善がされてきているとはいえ、まだまだ道半ば。中小企業の施行は2021年からとなる。

派遣社員は相変わらず楽ではない。そんなシビアーな実情が第1話から描かれた。第1話は派遣に人事がセクハラし、それを告発すると部ぐるみで隠蔽しようとする。

第2話では、派遣には企画を提案する権利がないとされる。社員たちがふりかざす理不尽にじっと耐える若手派遣たち。最初は我関せずに見える春子がここぞというとき立ち上がる。

春子が正社員に負けないのはスキルがあるから。誰よりも勉強していて知識があり仕事も早い。だからこそサービス残業はしないし、就業時間でも余分な仕事は決してやらない。「それが何か?」といつだって強気である。

13年前と比べてコンプライアンスが厳しくなっているいま、ここまであからさまなセクハラやモラハラはないのではないかという意見もあるが、建前上は厳しくても根本的な差別意識はなくなっていないことが、今回の「ハケンの品格」を見ていると感じられる。だからこそ春子の復帰と活躍が歓迎されるのである。

脚本家・中園ミホは執筆にあたり、派遣社員の人たちを取材し、本音を春子のセリフに盛り込んでいるそうだ。

彼女の脚本は「ハケン〜」に限らず徹底した取材によるリアリティーに定評がある。

テレビドラマを見ていそうな、働く女性たちの本音がつまった親しみやすいドラマ。例えば、特別編としての再放送が発表になって話題の「やまとなでしこ」(2000年、フジテレビ系※特別編は7/6・13夜9:00-10:48放送)は婚活に励む女性の本音にあふれている。

主人公・桜子(松嶋菜々子)は美人の客室添乗員だが、貧乏な家庭に生まれたためお金に過剰な執着があり、ある程度のお金持ちでは満足しない。大金持ちと結婚しようと婚活に励む。この人!と思ったら決めセリフ「運命の人に巡り会えたかもしれない」でロックオンする。

住居は貧乏でそれをひた隠して生きているところは魅力的な桜子だが、男性の人格ではなく資産しか見ていないところはいかがなものか。欧介(堤真一)が哀れでならないのだが、松嶋菜々子の魅力も手伝って桜子にかわいげがある。幸福になりたい女性の本音には罪がない。

■ “自らの力”で道ひらくヒロイン

中園ミホの描くヒロインは凛として明るく、うじうじした被害者意識を決して出さない。スキルを磨き己の力で生きる糧を得ていく。

第6シーズンまで放送されている長寿作「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」(テレビ朝日系※第1シーズンは2012年)では「私、失敗しないので」が決めセリフのフリーランスの天才外科医・大門未知子(米倉涼子)が主人公。

「ハケン〜」の大前春子の外科医版といった趣で、病院で地位と名誉を守りたいだけの人々の鼻を医療スキルのみで明かし、高額なギャラを獲得する。

いつだって痛快な中園ドラマ。会社の年下男子との恋を描いた「anego(アネゴ)」(2005年、日本テレビ系)も働く女性が主体的に生きる姿を描いていた。2010年代に好まれた女性主人公のお仕事ドラマの基本が中園ミホにあるように思う。

正社員と非正規社員の差も、男女差も、年齢差もそれまでのその差にあきらめていた人たちにあきらめなくていいと手を差し伸べてくれるのが中園ミホドラマなのである。

だからこそ中園が朝ドラ「花子とアン」(2014年、NHK総合)を書くことは必然だったと思う。

なぜなら、朝ドラはまさに女性のためのドラマで、女性の地位が明らかに男性より低かった戦前戦後の日本を舞台にしたものが多く、そのなかで主人公が自分の意思で恋したり働いたりしていくからだ。

「花子とアン」は主人公・花子(吉高由里子)が「赤毛のアン」を翻訳する翻訳家として自立していく話を軸に、親友・蓮子(仲間由紀恵)は家を守るために結婚した相手と別れ好きな人を選ぶ。ふたりの生き方はどちらも輝いていた。

「曲がり角をまがったさきになにがあるのかは、わからないの。 でも、きっといちばんよいものにちがいないと思うの」と「赤毛のアン」から引用したセリフが花子たちの人生のみならず、見ている視聴者を支えた。

大河ドラマ「西郷どん」(2018年、NHK総合)は珍しく女性が主役ではなかったが、幕末の時代を改革していく西郷隆盛と仲間たちの青春群像は清々しく、西郷の島の妻・愛加那(二階堂ふみ)の愛の形も胸を打った。

中園ミホのドラマは、女性を中心に、たくさんの今を生きている人たちに自ら道を切り開く勇気をくれる。(ザテレビジョン)