9月12日(土)の「テレメンタリー2020」(毎週土曜深夜4:30-5:00[日曜朝4:30-5:00]、テレビ朝日、※系列各局で放送)は、名古屋のミニシアター「シネマスコーレ」のコロナ禍の中での奮闘を追った「コロナとシネマ〜”密”を巡る攻防〜」を放送する。

新型コロナウイルスの感染拡大で、至る所で“密”が避けられている。名古屋にある定員51人のミニシアター「シネマスコーレ」もその影響に苦しんでいる。

1983年に映画監督の若松孝二が立ち上げた映画館。支配人である木全(きまた)純治さんは、全国ロードショーではかからない個性的で魅力ある作品を精力的に上映することを続けてきた。

作品と観客の距離を近づけ、いわば“密”を売りにすることで映画館の斜陽期を生き抜いてきたのだ。

37年の歴史で、上映のない日は1日もなかったが、新型コロナウイルスの影響で、2020年4月、開館以来初めて「休館」に追い込まれた。

映画文化の多様性を支えてきたミニシアターは、新型コロナ禍をどのように乗り切ろうとしているのか。秘蔵映像などをひもとき、「新しい日常」の中で試行錯誤を続ける木全支配人らの奮闘を追う。

制作はメ〜テレ(名古屋テレビ放送)、担当プロデューサー・村瀬史憲、担当ディレクター・菅原竜太。ナレーターをドキュメンタリー番組は初挑戦の島津咲苗メ〜テレアナウンサーが務める。

一昔前からシネマスコーレを取材し、2017年には同映画館を扱った「シネマ狂騒曲〜名古屋映画館革命〜」と題するドキュメンタリーを放送。その後同作の劇場版も公開するなど、劇場との関係性が深いメ〜テレ。「シネマ狂騒曲」でもプロデューサーを務め、今作も担当する村瀬プロデューサーに番組の制作意図を聞いた。

■ 村瀬史憲プロデューサーに番組の制作意図を聞く

――まず、番組の制作に至るいきさつをお聞かせいただけますか。

メ〜テレ報道とシネマスコーレの付き合いは長く、1990年代前半にさかのぼります。2012年に若松孝二監督が不慮の事故で亡くなった際には、夕方のニュース情報番組で追悼企画を放送しました。そして2017年に放送・劇場上映した「シネマ狂想曲」(監督:樋口智彦)によって、関係はより濃いものになりました。

私自身は映画への造詣が深いわけではないのですが、「シネマ狂想曲」の制作にプロデューサーとして関わりました。また、生前の若松監督からシネマスコーレに対する思いを直接聞いたことがあります。

シネマスコーレにおける人と人との距離は、ほぼ接触に等しく、まさに「密」。雑多で、型にはまらないシネマスコーレの盛衰は社会の多様性を示すバロメーターだと思っています。

コロナ禍をどのようにして乗り切るか、気になって今年4月から継続的にニュース用に取材を進めました。開業以来、37年間営業してきて初めて休館したと聞いた時は、本当につぶれるかもしれないと思いました。つぶれるのであれば最後を見届けるつもりで、「テレメンタリー」に企画提案しました。

――シネマスコーレはつぶれるかもしれないという窮状にあったのですね。

全く客が来なかった時期(国の緊急事態宣言が出ていた間)に、シネマスコーレには、個人向けの特別定額給付金を除き、公的な支援が全く届いていませんでした。クラウドファンディングの分配金(「ミニシアター・エイド基金」)がなかったら、シネマスコーレだけでなく、かなり多くのミニシアターが倒れていたのではないかと思います。

――本ドキュメンタリーのテーマはどういったことになるでしょうか。

制作意図は、新型コロナ禍で「当たり前」と捉えがちなことを、時には疑ってみる必要があるのではないか、という問い掛けです。

新型コロナの感染拡大により、「3密を避ける」、「ソーシャルディスタンス」が当然の世の中となりました。新型コロナへの感染は人命にかかわることであり、蔓延すれば医療や経済など既存の社会システムを崩壊させる恐れさえあることは理解しています。

しかし、私は行政やメディアが発信する情報や指針を、ただ無批判に受け入れることには抵抗があります。ずっと鵜呑みにしていたら、知らず知らずのうちに、失ってはいけない“大切な何か”を失ってしまうのではないか。そんな恐れがあるからです。

シネマスコーレの木全純治さんが取材の中で口にした「過剰防衛して、監視社会にしてはいけない」という懸念には共感するものがあります。

――木全さんについて少しお話いただけますか。

本作の主人公は、支配人の木全さんです。何より映画が好きで、東京の文芸座に勤めていましたが、ビデオの時代が来ると聞いて郷里の愛知県に戻り、映画ビデオのセールスマンをしていたところ、若松監督から白羽の矢を立てられ、支配人になった人です。

人柄は極めて温厚。アポなしで訪ねて行っても、嫌な顔ひとつせず、話を聞いてくれます。普段怒るところを見たことがなかった木全さんが、取材中に見せた“怒り”が、番組の核になっています。

木全さんたちシネマスコーレのスタッフは、直接作品を届けたい気持ちが強いのだと思います。配信にも実験的に取り組んでいますが、劇場で映画を観るという、元の姿に早く戻したいと考えている。安全性が確認できているのならば、直接見に来てもらっていいじゃないか、という思いがあるのでしょう。

――他に見どころがあればお聞かせください。

シネマスコーレにまつわる人たちの“個性”も番組の見どころです。木全さんや副支配人の方、手掛けた映画を上映してもらえることになった監督さん。若松孝二監督はあくの強い人でしたが、それを受け継いだかような個性ある人々が集まっていて、とても面白い。

――今後も追い掛けられますか?

シネマスコーレの取材は今後も続けます。お客さんは少しづつ戻ってきていて、収益にも回復の兆しが見られているようです。これからも「映画の楽しみ方」を提案していってほしいです。(ザテレビジョン)