毎年9月9日は「9mmの日」と銘打ち、何らかのリリースやライブを行っているロックバンド・9mm Parabellum Bullet。今年は、初のトリビュートアルバム『CHAOSMOLOGY』と1年5ヵ月ぶりのシングル「白夜の日々」を同時リリースした。ボーカル&ギターの菅原卓郎に訊いた。

「『トリビュートアルバムを作らないか?』っていう話は、去年の結成15周年のタイミングで出てたんです。でも、その時点で既に色々と盛り込み過ぎてたから、『今年はやめときましょう』ってなって。節目とは関係ないタイミングで発表したほうが、集中して作れるんじゃないかっていうところもありました。あまり自分たちから他のアーティストに『トリビュートしてください!』って動くものでもないと思ったので(笑)、レコード会社から提案されるテイで待っていて、今年再度提案してもらったので、出すことにしました」

合計18組が参加した2枚組。DISC2はインスト盤だ。

「ライブのステージングが象徴的ですけど、9㎜はときどきとんでもない轟音を出すので(笑)、そのカオスだって言われてる部分と、あと滝(善充/ギター)が作る楽曲のすごく緻密な部分──対バン相手がカバーしてくれることもよくあるんですけど、『音、リズムの噛み合い方がよくできてる』って分析されることも多くて。それで、“カオス(混沌)”と“コスモス(秩序)”をあわせた“カオスモス”っていう造語に、さらに“コスモロジー(宇宙論)”っていう言葉をくっつけて、『CHAOSMOLOGY』ってタイトルにしたんです。その9㎜の楽曲の特殊な構造については、インスト盤のほうがより見えてくるんじゃないかと思ってて。言葉によるメッセージはとりあえず置いといて、その部分を楽しんでもらえる一枚になるんじゃないかと思ってますね」

歌が入っていなかったとしても、とてもメロディアスでキャッチーさが際立ったカバーばかり。9㎜の楽曲は歌メロの宝庫だということを改めて思い知る。

「参加してくれたアーティストの、メロディを担当してる楽器の歌心にも驚いたんですけど、どの楽器で演奏してても、『やっぱメロディなんだな』って、自分でも思いました。その楽曲のアレンジの向こう側にある、メッセージやメロディを再認識したところはあります。ただ、それぞれのアーティストのカバーバージョンを9㎜で演奏しようとすると、それぞれのバリエーションがすごすぎるので無理がありますけど(笑)」

中でも驚きが大きかったのが、女性ボーカルによるカバーだという。

「FLOWER FLOWERには、『もう好きにやっちゃってください』って言ったんですけど、ほんとに『名もなきヒーロー』を好きにカバーしてくれてて嬉しかった(笑)。チャラン・ポ・ランタンの『ハートに火をつけて』は以前ライブで聴いたことはあったんですけど、音源で聴くとまた迫力がすごい。BiSHの『Discommunication』は、バックバンドがすごく張り切って弾いてくれてて(笑)。滝がライブで弾いてるフレーズがちょこちょこアレンジされて入ってたりしてて、ちゃんと『9㎜のおいしいところはこれでしょ』ってところを盛り込んでくれた。あと、『Discommunication』の歌詞はサビが女性一人称なんですけど、女の人が歌ってるのを聴いて、『あ、こういうことだったんだ』って。当時の僕としては、たまたま女性一人称がフィットしたからそのままにして出したんですけど、これで完成した感覚になりましたね」

菅原と滝のユニット、キツネツキもタブゾンビ(SOIL&“PIMP”SESSIONS)と栗原健とともに「黒い森の旅人」のインストカバーで参加している。

「こっそりと(笑)。去年、ライジング・サン・ロックフェスティバルの9㎜の結成15周年のステージで、タブさんと栗原さんとセッションする予定だったんです。でも、そのライブが台風で中止になってしまって。それもあって、今回是非ふたりには参加して欲しいって思ったんだけど、一緒にやるバンドが9㎜なのはおかしいからキツネツキになりました(笑)。タブさんがアレンジを全部作ってくれて、それをスタジオで一発録りで録っていきました。栗原さんはサックスとフルート。僕は『もうこれはご褒美だ』って気持ちで、できるだけ気楽にセッションを楽しみました。でもちゃっかり、僕と滝のギターソロも入っちゃってるんですけどね(笑)」

■ 音楽を届けに行きたいっていうメッセージを形にしたい。そういう気持ちをこめたラブソングでもあります

シングルの表題曲「白夜の日々」は緊急事態宣言により、一旦レコーディングが延期に。

「3月には曲を選んで作業を色々進めてて、当初5月にレコーディングする予定だったんですが、緊急事態宣言によって中止になってしまって、結局6月に録ったんです。ライブやレコーディングが中止になってる状況でデモを聴いて、最初はどんな歌詞を書けばいいかわかりませんでしたね。5月に東京が天気の良い日が続いている時期があって。様子を伺いながら散歩したりしてたんですけど、こんなに天気良くて、緑も元気で生い茂っていて、悪いことが起きてるって信じられない感覚があって。でも、自分たちはレコーディングやライブの活動はできなくて、どこか現実感がないというか。同じような感覚を持ってる人も少なくないと思ったので、今感じてることを書かないことには曲を作る意味がないなって。今年は9㎜はライブツアーをたくさんやろうと思っていて、それはままならない状況になってしまったけど、でも音楽を届けに行きたいっていうメッセージを形にしたい。そういう気持ちをこめたラブソングでもあります」

歌い出しの歌詞は“君に会えなくなって 100年ぐらい経つけど/思い出せなくなって しまえば楽になれるの”。苦悩から曲が始まり、これまでの世界と決別し、新たな覚悟を決めるという心境の変化が1曲の中で綴られている。

「仕事でも人に思うように会えない生活が続いて、そういう中で少しずつ自分の気持ちも変化していって。『やるしかないのかな』って心境になったから、この1曲の中でもそういう風に展開しようって思ったんです。適当に歌ってると勝手に言葉がついちゃう時があるんですけど、そういう風にして一番最初の“君に会えなくなって 100年くらい経つけど”っていう歌詞が出てきて。そこから手紙を書く感じで書き進めました」

爽快な疾走感とシャープな切れ味が共存したサウンド・デザインが新鮮だ。

「9㎜の曲の中では、例えば『Black Market Blues』みたいに叩きつけるような激しさがあるわけでもなく、爽やかめの曲だなって思ってて。作ってる時の初夏っていう季節に合ってたのかもしれないです(笑)。それも歌詞を書くのにいい作用があったんじゃないかな。音のバランス感覚としては、インディー時代に近いっていうか。そこまでメタリックな要素を入れるんじゃなくて、演奏してる人が見える生々しい感じにしたくて。前のアルバムの『DEEP BLUE』とか、その前の『BABEL』は、とにかく激しくして厚みを作ろうと意識してて。ライブも当時はサポートメンバーも入れて5人編成で、曲自体にフレーズをたくさん入れても再現できる。でも『白夜の日々』は、CDで言うと、左側に僕のギターが鳴ってて、右に滝のギターが鳴ってて、あとはベースとドラム。オーソドックスではあるんですけど、9㎜としてはそのシンプルなバンドらしいバランスは久しぶりで。滝からも、『サポートなしで4人のバンドサウンドを作りたい』っていう話があって。そういう動きと、歌詞とかの風通しの良さも全部繋がってると思いますね」

シングルの2曲目には、ミドルテンポで、影の深いセンチメンタルが漂う「ロードムービー」が収められている。作曲は菅原と滝の共作だ。

「2月くらいに、滝とふたりで事務所のちょっと作業するスペースで曲作りについて話してたんです。そこで僕が冒頭のフレーズをぺけぺけ弾いて、それに割と手応えがあったんで、その日にもうアレンジだけ作っちゃって。整合性で言ったら、最後にまた転調して戻ってきそうなんですけど、『戻らないままもう終わりでいいよ』とか言いながら作りました(笑)。実験的に楽しく作ったところもあって、『カップリングにいいんじゃない?』って言ってたのがそのまま実現した(笑)」

3曲目のインスト曲「Calm Down」は、まさに気持ちを落ち着かせるような、肩の力が抜けたようなムードの曲だ。

「『Calm Down』は、去年の『DEEP BLUE』のアルバムツアーの時に、僕が喉の調子が悪くなっちゃって。それが2〜3本続いて、ちょっとこのまま歌えないなって思った日があって、一回ステージを降りたんですね。その時に他のメンバーが繋ぐ目的で演奏してくれてたセッションをもとに作った曲なんですよ。僕としては、そこで一回切り替えられて、すごく楽になって、そのあとステージに戻れた。その日以降、結局ツアーファイナルまでそのセッションをやっていって。それで今回曲名どうしようってなって、『じゃあ“Calm Down”で』って(笑)。『ロードムービー』も、『ロードムービーっぽい曲だな。じゃあ曲名もそれだ』って決まりましたし。曲の印象からそういう印象を持ったなら、そこに間違いはないはずで。やっと肩肘張らずにそういうことができるようになってきたなと思っています」

ニューシングルで聴ける3曲からは、前のアルバム『DEEP BLUE』にあった、軽やかでポップな日常感の影響も感じられる。

「その流れもありますね。実体験を書いてるわけではないけど、自分の記憶や感情をもとに書いてるわけで、“この歌詞を書いているのは、菅原卓郎って人なんだな”っていうのがより出てきてると思うんですよね。今はそういうモードなので、それ以外は装ってる感じがしてしまう。だからしばらくは、より等身大に、サウンドも音も落としどころを見つけていく作り方が続くと思ってます。『僕たちこういう人だし、しょうがない』っていう開き直りっていうか(笑)」(ザテレビジョン・取材・文=小松香里)