新監督の招聘が決まらないトッテナム。業を煮やしたダニエル・レヴィ会長は経験豊富な参謀を迎え入れ、難局を乗り切る策に出ました。

 ジョゼ・モウリーニョ監督を解任したのが4月19日。ライアン・メイソン暫定体制で残りシーズンを戦いながら、会長は新体制の準備を進めていました。ところがバイエルンのハンジ・フリックやアヤックスのエリック・テンハーグとの交渉は不調に。マウリシオ・ポチェッティーノの1年半ぶりの復帰を画策したもののパリ・サンジェルマンから交渉の余地なしと告げられると、インテルを退任したアントニオ・コンテにも接触したことが明らかになりました。

 そんな迷走する状況下でレヴィ会長が着手したのが、実績のあるスポーツダイレクターの招聘でした。ファビオ・パラティーチ、48歳。ユヴェントスで11年に渡り同職を務め、数々の選手補強に尽力した実績の持ち主です。3年前にはクリスティアーノ・ロナウドの移籍を実現したことで知られる存在となりましたが、費用対効果を求めるレヴィ会長が認める交渉術も兼ね備えています。

 2012年、19歳だったポール・ポグバをフリートランスファーでマンチェスター・ユナイテッドから獲得。ユナイテッドが再契約した際には8,900万ポンドの違約金収入を計上。アーセナルで不遇だったポーランド代表GKのヴォイチェフ・シュチェスニーにローマへのローン中に目をつけ、わずか1,000万ポンドで獲得、ブッフォンの後継者として成長させました。またアンドレア・ピルロやアーロン・ラムジーなどをフリートランスファーで迎え入れるなど仲介人などとの水面下の交渉にも長けている人物です。

 パラティーチのスポーティング・ダイレクター就任は6月12日に正式に発表され、ファーストチームの編成に関わる全権が与えられるゼネラル・マネージャーとして手腕を発揮することになります。すでに新監督招聘に向けて動き出しているはずの彼にとって、唯一、交渉の条件となるのがクラブのDNAを尊重できる人材であるということです。“流動性があり、攻撃的であり、魅力的なフットボールをする。そして若手選手を成長させる”こそが、トッテナムのDNAであり、レヴィ会長が求める絶対条件なのです。

 コンテサイドとの交渉が決裂したのも、このDNAが要因とも言われています。ハリー・ケインの進退にも関わる重要な新監督人事。パラティーチの手腕に注目です。

文/西岡 明彦

※電子マガジンtheWORLD258号、6月15日配信の記事より転載