ペップを彷彿とさせる青年監督

「ペップは選手を楽しませることを忘れない。これほど練習がおもしろい監督は初めてだ」。

これは、ジョゼップ・グアルディオラ政権時に、当時バイエルン・ミュンヘンに所属していた元フランス代表MFフランク・リベリが残したコメントだ。ユニークな戦術を用い、そのためのトレーニング方法も画期的なことで知られるグアルディオラ監督。就任初年度の2013-14シーズンにはブンデスリーガ史上最長の19連勝も記録したチームを率いた名将は、稀代の戦術家でありながら、選手たちをトレーニングで飽きさせない“モチベーター”の側面も持っていた。当時のバイエルンが強かったのは、こうした指揮官の工夫も大いに関係していたのだろう。

そして、そんなグアルディオラの退任から5年の時を経て、バイエルンにはまたも戦術家とモチベーターの要素をハイレベルに兼ね備えた指揮官がやってきた。その指揮官とは、近年ブンデスで急速に頭角を現したユリアン・ナーゲルスマン監督だ。ホッフェンハイムやRBライプツィヒでの実績を引っ提げ、34歳の若さで今季からドイツの絶対王者を率いることとなった青年監督。戦術のスタイルこそ異なるものの、同監督の順調な出世ぶりや指揮官としての特性にはどこかスペインの名将と重なる部分がある。緻密な戦術とそれに飽きをこさせないチームマネジメント能力。2021-22シーズンのバイエルンは開幕から好調を維持(公式戦11試合で9勝1敗1分)しているが、その秘訣はここにあるのかもしれない。

「ナーゲルスマンは世界のフットボールを理解している指揮官だ。彼はその戦術が優れているだけでなく、選手たちのモチベーション管理も本当に上手いんだ。それは彼が優れた監督である何よりも証拠だよ。バイエルンのようなクラブですぐに結果を残すのは本当に難しいことだが、ナーゲルスマンは豊富な戦術トレーニングで僕たちを飽きさせない。フリックの練習も楽しかったけど、今はもっと楽しくトレーニングができているんだ」

「その内容は本当に細かいんだけど、わかりやすい。そして、彼は選手たちに2週間も同じ内容のトレーニングはやらせないんだ。メニューは週末の試合の対戦相手によって変わるし、常に準備されている感じがするね。バイエルンの選手たちがすぐに彼のフットボールに適応することができたのは、こういう部分が大きいと思うよ」(独『Sport 1』より)

そんなナーゲルスマン監督の手腕に関しては、DFリュカ・エルナンデスもこのように絶賛の言葉を送っている。自身が理想とする戦術を新たなチームに落とし込むため、様々な内容のトレーニングを駆使しているという同監督。この若手指揮官は理想を掲げるだけでなく、そこへ辿り着くための豊富な手段も持ち合わせている。それはこの短期間で選手たちも理解しているようだ。はたして、そんなナーゲルスマン監督に率いられる今季のバイエルンは、これからどこまで強くなっていくのだろうか。これまでもドイツでは圧倒的な強さを誇っていた同クラブだが、更なる進化を遂げる予感がしてきた。