ファブレ体制下で苦しんだ理由を語る

加入当初は低調なパフォーマンスが続いたものの、彼は今季に入ってようやくドルトムントで本領を発揮し始めた。その選手とは、ベルギー代表DFトマ・ムニエ。移籍初年度の昨季は散々なシーズンを送ることとなったが、この右サイドバックは今やチームに欠かせない存在となりつつある。

2020夏にアクラフ・ハキミの後任としてドルトムントに加入したものの、ルシアン・ファブレ体制下では本来の実力を発揮できていなかったムニエ。当時、攻撃面ではチームのサイドアタックに変化をつけることができず、守備面でも相手に裏を取られるシーンが散見されたことはまだ記憶に新しいところ。そして、終盤戦にはファブレからバトンを受け取ったエディン・テルジッチ暫定監督の下で試合に絡めない日々も経験。加入当初はハキミの後釜として期待された男だが、ドルトムントでの1年目は向かい風にさらされることになったと言っていい。

しかし、新たなシーズンを迎えると同時にムニエは甦った。開幕こそ新型コロナの影響で出遅れたものの、以降の彼はマルコ・ローゼ新監督の下で重要な戦力として機能。どこで炸裂するかわからない右サイドでの攻め上がりは相手にとって大きな脅威となっており、現地時間14日に行われたフライブルク戦ではヘディングで2ゴールを決める意外性も見せている。

だが、彼がドルトムントで実力を発揮するまでにはなぜここまでの時間がかかったのだろうか。パリ・サンジェルマン時代にも今のような攻め上がりは見せていたことを考えれば、昨季1年を通してのインパクト不足は少し疑問と言えるかもしれない。そんななか、ムニエ自身はチームへの順応が遅れたことについて次のように語っている。

「ファブレのサッカーはムバッペやネイマール、ディ・マリアといった選手が揃っているPSGみたいだったよ。前線の個人に頼る部分が大きいんだ。サンチョやレイナといった選手が優秀だったから、そうなるのも無理はないんだけどね。でも、それは僕が得意とする形ではなかったのさ。僕が好きなのはチーム全員が自分のやるべきことを理解して、そこから連動性を作っていくサッカーなんだ。だからこそ、今の僕は本当の力を発揮できているのだと思うよ」(独『Sport 1』より)

ドルトムントのサッカーが強烈な“個の力”頼みではないものに変化したからこそ、自分の良さが生きているとムニエ。はたして、自身にとって良い環境が揃った彼は今後どこまでその評価を上げていくことができるのか。まだ改善点も少なくないが、ベルギー代表DFの大逆襲劇には大いに期待したいところだ。