コロナ禍によって思うような補強が行えないクラブが多い中、これまでと変わらずスーパースターを積極的に補強し続けるクラブがある。パリ・サンジェルマンだ。今夏にはスペインで長きにわたってライバル関係にあったメッシとラモスの共闘を実現させるなど、今やチームは「新銀河系軍団」と呼ばれるほど豪華な陣容に。ビッグイヤー獲得の悲願達成へ向けて本気度が伺える。

 そんなPSGをラウンド16で迎え撃つのが、かつて「銀河系軍団」と呼ばれたレアル・マドリード。2000年代前半ほどの華やかさはないかもしれないが、モドリッチ、クロース、ベンゼマ、ヴィニシウスと十分に豪華だ。CL3冠を成し遂げたメンバーもまだ多く在籍しており、PSGとはチームとしての年季が違う。

 欧州トップクラスの豪華なメンバーが集結するだけでなく、ラモスの古巣対戦など見どころが多い銀河系対決。ラウンド16最注目と言っても過言ではないこの好カードを制するのはPSGか、レアルか。

 レアル・マドリードが「銀河系」と呼ばれたのはフロレンティーノ・ペレス会長の第一次政権のときだった。ルイス・フィーゴ、ジネディーヌ・ジダン、ロナウド、デイビッド・ベッカムと当時のスーパースターを毎年1人ずつ獲得していく絢爛豪華なチームだった。

 レアルの陣容が豪華なのは1950年代からで、スタジアムにその名が冠されているサンチャゴ・ベルナベウ会長の時代を再現しようとしたのが「銀河系」の時期である。

 ラウンド16で対戦するパリ・サンジェルマンも豪華さではレアルを上回るかもしれない。ネイマールとキリアン・ムバッペにリオネル・メッシを加え、さらにセルヒオ・ラモスまでレアルから獲得した。こちらはレアルと比べると歴史は浅いが、カタール資本の導入から大補強を繰り返して現在に至っている。

 どちらが「銀河系」に相応しいかはともかく、この両チームはかなり似ている。スターコレクションのような編成と、それに伴う「人」を軸にしたプレイスタイルだ。

 選手にプレイスタイルが左右されるのはどのチームも同じだが、PSGとレアルは選手への依存度が高い。PSGならメッシ、ムバッペ、ネイマールのFWだけでなく、マルコ・ヴェッラッティがいるかいないかで全体のプレイの質が変わってくる。レアルはルカ・モドリッチ、カゼミロ、トニ・クロースのMF3人こそCL3連覇の土台になっていて、この3人がいなければもはや違うチームといっていい。戦術に合わせて選手を獲ってきているのではなく、選手ありきの補強なので選手が代われば自ずと戦い方が変わってしまうのだ。

 例えば、マンチェスター・シティは戦術が先にあって選手がその中で動いている。左サイドを形成するトライアングルがジョアン・カンセロ、ケビン・デ・ブライネ、ラヒーム・スターリングの場合と、オレクサンドロ・ジンチェンコ、イルカイ・ギュンドアン、フィル・フォーデンのときで、そんなに機能性に違いはないし威力も変わらない。誰がプレイしても戦術は一貫している。ところが、レアルの左からクロースやヴィニシウスが抜ければ機能性も威力も落ちてしまう。ただし、人さえ揃っていればシティの左サイドにも遜色はない。これはPSGにも同じことがいえる。

 PSGとレアルの対決でカギを握るのは、あくまでも人だ。まずはベストメンバーが揃えられるかどうかで大きく状況は変わってくる。

 PSGで軸になっているのはCBのマルキーニョス、プレスネル・キンペンベ。MFのマルコ・ヴェッラッティ、そしてメッシ、ムバッペ、ネイマールの「MMN」だが、ベストメンバーはいまだに確定していない。

 アンヘル・ディ・マリアを起用してメッシをトップ下に置く[4-2-3-1]は攻撃面で最も威力があるが、そのぶん守備は薄くなる。とくに左サイドはネイマールでもムバッペでも守備のタスクを負いきれるかどうかの不安は残る。

 一方、レアルは形が決まっている。左サイドはフェルランド・メンディ、クロース、ヴィニシウスのトライアングル、右はダニエル・カルバハル、モドリッチ、マルコ・アセンシオ。そこへCFのカリム・ベンゼマが絡む。右のウイングはアセンシオかロドリゴか、右SBがカルバハルかルーカス・バスケスかは不確定だが、クロースとモドリッチが司令塔になっているかぎり安定感はある。もちろんアンカーはカゼミロ。ダビド・アラバ、カゼミロ、クロース、モドリッチ、ヴィニシウス、ベンゼマが不可欠な選手となっている。

 どちらもスター満載だが、FWの威力ではMMNを擁するPSGが1枚上だ。ゲームの流れに関係なくゴールを叩き出せる個の力は世界最高だろう。ただし、前記のとおりチーム全体の機能性を見いだせていない。ポテンシャルはPSGがレアルを上回っているけれども、完成度はレアルが上というのがよく似た両雄の現在の力関係である。

 がっぷり四つの戦いが予想される。どちらもテクニックに優れ、ボールを保持しながら守備では厳しいプレッシングを行う。DF陣の個の能力も高く、GKもハイレベルだ。

 正面からぶつかり合う展開では、完成度の高いレアルが少し有利な流れになりそうだ。レアルはCBエデル・ミリトンの足下にやや不安があり、そこを狙ってプレスをかけていけばPSGが高い位置で奪って即ゴールという展開はありうる。しかし、レアルのビルドアップにミスがなければ、MMNのプレッシングは継続しないのでレアルは中盤を支配するところまでは持っていけるだろう。

 PSGは押し込まれてもMMNのカウンターが炸裂すれば得点はとれる。問題はレアルに支配されたまま守備陣が持ちこたえられるか。マルキーニョス、キンペンベのコンビはゴール前で無類に堅いので可能性はあるが、より可能性を高めるならセルヒオ・ラモスの起用が考えられる。

 ラモス、マルキーニョス、キンペンベの3枚で中央を固めれば守備はより堅固になる。システムは[5-2-3]だ。MMNを守備ブロックに組み込むのが難しい以上、どういうシステムでも7人で守らなければならない。押し込まれるのを前提にするなら、5バック+2ボランチのほうが堅さは出る。中盤は放棄する格好になるが、ラモス、マルキーニョス、キンペンベが構えるゴール前を破るのはレアルにとってかなり困難だ。

 左右のトライアングルでのパスワーク、主にクロースのサイドチェンジによって安定的に攻め込む力のあるレアルだが、そこから先はヴィニシウスとベンゼマにかかるところが大きい。ベンゼマ1人の空中戦は分が悪く、対人能力抜群の3バックを並べられると地上戦も難しくなる。PSGは守備が万全なら、レアルが前がかりになればなるほどMMNの威力でカウンターが大きなチャンスになるはずだ。マウリシオ・ポチェッティーノ監督が定番の[4-3-3]または超攻撃型の[4-2-3-1]ではなく、守備型を選択するかどうかは興味深い。

 PSGがこれまでどおりなら、おそらくレアルがやや有利。しかし、ラモス投入の3バックならPSGにチャンスがある。

文/西部 謙司

※電子マガジンtheWORLD265号、1月15日配信の記事より転載