まもなく夏本番、花火の季節がやってきます。昔から花火産業が盛んな愛知県岡崎市の「太田煙火(おおたえんか)」では、70年以上前から花火の「ドラゴン」の製造を行ってきました。コロナ禍となり、2020年〜2021年の売上は例年の3割に落ち込みましたが、それでも「国産花火の火は消さない」と、新作花火を開発しています。

■代々受け継がれてきた火薬の配合帳…5代目がつなぐ70年以上続く花火「ドラゴン」

 愛知県岡崎市は、徳川家康が鉄砲の製造を厳しく制限した江戸時代も、特別に火薬の製造が認められるなど、昔から花火産業が盛んな地域です。

市内にある「佐野花火店」には、手持ち花火や打ち上げ花火などバラエティ豊かな商品が並んでいます。

中でも一番人気は、70年以上前に発売され、今もなお愛される「ドラゴン」(110円)です。 佐野花火店の社長: 「私たちは“太田のドラゴン“って言うんですけど、太田さんが作るドラゴン花火、噴き出し花火はすごく人気」

“太田のドラゴン”は、岡崎市にある1928年創業の花火メーカー「太田煙火製造所」が作っています。太田煙火では、火薬の配合やパッケージなどの全工程を自社で行ってきました。

現在5代目の太田恒司さんが営む太田煙火は、ドラゴンを中心に噴出花火と呼ばれる玩具花火を10種類以上製造しています。

太田煙火製造所の太田恒司さん: 「ウチの秘伝、(火薬の)配合帳。どんな原料を合わせるとこんな火薬ができるという、一般の人が見てもわからないようになっています」

初代から連綿と受け継がれてきた火薬の配合帳は、他の人に見られても大丈夫なように、分量などを記号で記した大切な資料です。 太田さん: 「いまだに新しい商品を出す時に参考にしたり…。火薬の基本ベースはだいたい決まっているので、それをどういうふうに配合の比率を変えるか」

屋外の花火は、コロナ禍でも人気があるイメージですが、2020年〜2021年はコロナの影響で売上が例年の3割ほどに落ち込んだといいます。 太田さん: 「よくお盆に帰省されて花火やること多いと思うんですが、それが非常に減っちゃった」

玩具花火は今や9割以上が外国製。このまま国産花火の火を消すわけにはいかないと、太田さんはコロナが落ち着いた今年の夏に期待しています。

太田さん: 「皆さんがお出かけして『花火でもやろうか』って気分になってくれるとありがたい」

■イチから手作りで製造…危険なため山の中で製造されるドラゴン花火

 ドラゴン花火は、今でもイチから手作りで製造しています。以前は岡崎市内で製造していましたが、住宅地や公園などの開発が進んだため、岡崎市の隣・幸田町の山の中に製造拠点を移しました。

太田さん: 「(花火製造の)建物が点在しています。これも、法律でこの作業する建物と他の建物とはこれだけの距離をとらなきゃいけないって決まっている。この建物で紙パイプの中に火薬を詰めてフタをする作業をする」 材料は紙パイプと2種類の火薬と、いたってシンプルですが、実はドラゴンを完成まで作り上げることができるのは、今や日本でただ1人、太田さんだけともいわれています。

太田さん: 「この中に、マグナリウムという金属粉が入っていまして、それを咲かせます」

まずはパイプを37本束ねた状態で、底から火薬を詰めていきます。その火薬に含まれているのが、白い粒の「マグナリウム」で、ドラゴンで最初にバチバチと光る火花のもとです。続いて、ドラゴンの後半の明るく吹き上がる火花のもとになる金属粉「アルミニウム」を入れます。しっかりと火薬を詰めたところで…。

太田さん: 「パッキンをしてフタを。火薬に圧力をかけるので、危険な作業。しっかりプレスしておかないと、燃焼時間が変わったり、現象が変わったりするので、大事な作業の一つ」

作業小屋には照明が無く、薄暗いのには理由がありました。 太田さん: 「電気がきていないのが一番安全。この動力もエアプレスですので、遠くのコンプレッサーからエアーをここまで送ってきています」

火薬を扱うだけに、安全最優先での作業を心掛けていました。最後に、上の噴出口に着火剤を塗った導火線を差し込んだら完成。

堅い紙パイプに火薬を詰めたドラゴンの基本的な作りは、発売以来70年以上変わっていません。子供たちが気軽に買えるようにと、価格は110円〜と価格も据え置いています。

■「3色の花火がきれい」…パリオリンピックを意識した新作花火「栄光の架橋」

 2022年、太田さんはドラゴンの進化版を開発しました。 太田さん: 「3回色が変化する。銅から、銀から、金へ変わる」

新作花火「栄光の架橋」(330円)は、2024年のパリオリンピックを意識して作られました。

吹き上がった火花は、最初は銅からスタート。やがて銀色が噴き出し、最後は金色になりました。

男の子: 「3色の花火がすごいきれい」

太田さん: 「商品に対してファンがついてくれるのが一番。『わ〜』とか『お〜』とか。その言葉が聞ければいい。三河花火の伝統は残していきたい」

太田さんは、“太田のドラゴン”の70年以上の歴史を次の世代につないでいます。