多くの家庭や喫茶店で使われていたプリントのグラスが復刻し、「昭和レトロ」として人気になっている。花や動物をモチーフにシンプルで飽きのこない「アデリア」と呼ばれるデザインで、愛知県岩倉市のガラスメーカーが製造している。若者たちも虜にする「アデリア」の魅力を取材した。

■“昭和の流行”を現代風にアレンジ…いまアツイ「ニューレトロ」

 昭和の喫茶店かと思いきや、実は3年前の2019年にオープンしたばかりのカフェ。名古屋市中区の松坂屋名古屋店にある「昭和喫茶ロマンス」。

昭和喫茶ロマンスの店長: 「昭和30年代をイメージした作りになっています。ご年配の方も懐かしいと来店していただけるんですが、若い世代の方にも多数ご利用いただいております」

店内には、昭和の喫茶店でよく見かけたインベーダーゲームが遊べるテーブルや…。

懐かしい“星座占い”ができる「おみくじ機」などもあった。

提供するメニューも、もちろん「ザ・昭和」。ケチャップをかけた「懐かしのケチャップオムライス」(1000円)は、中身もケチャップライスで昭和の味。

一番人気のメニューは、名古屋の喫茶店で昭和30年代に生まれたといわれる「鉄板ナポリタン」(1000円)だ。

 昭和に流行した懐かしいものを、現代風にアレンジした「ニューレトロ」と呼ばれる商品が、食べ物からインテリア、食器まで若い人たちの間でも人気になっている。

男性客: 「今はおしゃれなカフェが増えているので、逆にこういうところが新鮮」 女性客: 「実家の片付けをして、古臭いコップだなと思って捨てたけど、今ガラスのコップとかも流行っているから、もったいなかったなと。なんかうれしいですね、(若い人が)昔のものが好きだと言ってもらえると」

■バッグに財布、切手もコラボ!…ニューレトロブームに火をつけた「アデリア」

「なつかしくって新しい」をテーマに2022年6月、名古屋市中村区の「ジェイアール名古屋タカシマヤ」で行われたイベント。

昭和に流行した商品の復刻版などが一堂に会した「レトロマーケット」だ。

当時を知る人には、“懐かしい”ものばかりが並んでいるが、若者にとっては…。 女性客: 「今はない色合いだったりとか、花柄でも表現の仕方が違う。インテリアとしても映えます。“アデリア”とか雑貨屋さんでよく見かけるんですけど…」

 若い女性の口から飛び出した、ニューレトロのキーワード「アデリア」。アデリアとは、昭和36年に発売がスタートしたガラス食器のブランド。

花や動物をモチーフにしたシンプルで飽きのこないデザインで、昭和40年(1965年)代に流行したものを、4年前に「アデリアレトロ」として復刻。瞬く間に96万個を売上げる大人気となった。

女性客: 「花柄とかがかわいい。逆に新しい感じがします。こうやって飲みたいです。かわいい」

 名古屋市中区の矢場町にある「ロフト名古屋」では、ここには「アデリアレトロ」のコーナーが常設されていた。

「自宅で楽しむ昭和純喫茶」をテーマに、コロナ禍で増えた「おうち時間」をレトログラスで楽んでもらおうと提案。こちらも2022年に入り、売上が伸びているという。

アデリアレトロのデザインを使ったコラボ商品も登場している。

バッグや財布、時計に文房具をはじめ…。

カプセルトイ用のミニチュアや…。

マスキングテープにも。

2022年の春には…。

アデリアレトロの切手まで登場した。

■創業200年以上の超老舗『石塚硝子』…アデリアは発売4年で累計96万個の大ヒット

 引っ張りダコの「アデリアレトロ」。製造しているのは、愛知県岩倉市にあるガラスメーカー『石塚硝子』だ。

江戸時代末期に創業し、200年以上ガラス製品を作り続けてきた“超老舗”。

コップに限らず清涼飲料水の瓶やビール瓶など、幅広いラインナップを揃えている。

石塚硝子の広報担当者: 「こういった果実酒瓶からウイスキーやビール瓶などガラス瓶と、プラスチックや紙パックも手がけています」

石塚硝子の広報担当者: 「実は、こちらに“石”という字が刻印されていまして、飲み会などで社員はこれを見て『うちの工場で作ってるね』と盛り上がるんです」

どこかで目にした事があるものばかりだが、石塚硝子で1961年に販売が開始されたオリジナルブランドが「アデリアグラス」だ。当時斬新だったプリントデザインは、飲食店や家庭に広く普及した。

素朴なデザインのプリントは長年愛されたが、いつしか下火に…。ところが、「ニューレトロ」ブーム以前の2018年に、か突然「アデリアレトロ」という名前で復活した。

石塚硝子の広報担当者: 「当社の若手女性社員がSNSで『#アデリア』で検索したところ、当社の昭和40年代の製品が沢山でてきたんです。こんなにもてはやされているのなら、いま復刻したら人気が出るんじゃないか、売れるんじゃないかということで…。発売4年で累計販売数は96万個。ここまで沢山売れるとは想像していなかった」

■“昭和”はかわいい!?…若い女性が新鮮と感じるデザイン

 アデリアレトロは2022年6月、東京プリンスホテルとコラボし、期間限定でスイートルームの宿泊プラン「泊まれる純喫茶 IN ROOM Retoro」を始めた。(9月11日まで)

部屋は、ベッドカバーから枕、クッションに壁の装飾までアデリアレトロ一色に。

昭和の喫茶メニューのサービスもあり、週末はキャンセル待ちが出るほどの人気だ。

【宿泊料金】(カフェメニュー・オリジナルグッズ付き) 1名の場合 40,600円〜 2名の場合 44,600円〜

 そんなアデリアに代表される昭和の雰囲気に憧れて2021年4月、名古屋市西区にお店までオープンさせてしまった女性がいる。平成生まれの28歳、中村茜音さんだ。

中村さん: 「店に入った瞬間から昭和を感じていただきたいので、かわいいものを皆さんと共有したくて」 名古屋市西区に2021年4月1日にオープンした「食堂カフェ むむむ」。

ランプシェードや窓ガラスなど、インテリアも「昭和」のものを探して使っている。

使用されているグラスは、もちろんアデリアレトロだ。

アデリアレトロだけでなく、店内のグラスは中村さんがコツコツ集めた昭和のグラスで統一されている。

人気メニューはクリームソーダだが、人気のヒミツは味というよりも、クリームソーダ専用にしているアニメのキャラ入りグラスだ。これがSNS映えすると人気だ。

女性客: 「めっちゃかわいい。最近のデザインにはないから」 別の女性客: 「来る度に違うグラスに入っているので、それを見るのも楽しみ。昭和のものは味があるじゃないですか。今の既製品にはないデザイン」

中村さん: 「(Q.アデリアレトロの魅力は?)シンプルで昔の雰囲気があって色もかわいくて、単調で同じ柄なのにすごくかわいく見える。今にはないグラスの形をしていたので、うちの店にピッタリだと思って使わせていただいています」

昭和40年代のデザインを忠実に再現した、アデリアレトロ。価格は770円から3850円までと、決して安くはないが、とにかく売れているという。

アデリアレトロをはじめとした、“ニューレトロ”ブーム到来の理由を、北名古屋市にある歴史民俗資料館「昭和日常博物館」の学芸員に聞いてみた。

昭和日常博物館の学芸員 伊藤明良さん: 「ここ数年は、若い世代のグループの来館が増えています。若い世代の方だと、自分たちの身の回りにはないデザインとか、色使いとか、かたちとか、そういったものに興味を持つ。特にホーロー看板は目立つ色使いで原色の配置が強烈なんですけど、今にはないような柔らかさを感じられたりするので、デジタルが進んで身の回りにいろんな物があふれてますが、レトロな雰囲気が今の時代にないものとして受けているんではないかと思います」