名古屋めしの「きしめん」が、「ころ」きっかけに、再ブームが到来している。人気回復にのろしを上げたきしめんの「逆襲」を調べた。

■28人中「よく食べる」は3人…「讃岐」に押されて?地元の「きしめん離れ」

 まずは、名古屋に観光に来た人に「きしめん」を食べたことがあるか聞いてみました。 徳島県から来た男性: 「好きですね。こっちに来た時には結構よく食べに行きます」 福井県から来た女性: 「好きです。結構つるつるとしていて、ノドごしがよくておいしい」 東京都から来た男性: 「今日も食べようかなと思ったのもありますし、子供も好きなので」 大阪府から来た女性: 「うどんと違って食感がいい。今回も、みそ煮込みうどんかきしめんかどっちかを食べようと」 やはり「名古屋といえばきしめん」というイメージの観光客は多いようだ。  では、地元の人に聞いてみると…。 女性: 「最近あまり食べていないですね。5年くらい前になるかもしれない」 男性: 「少ないです。全然ラーメンとかの方が食べますね」 別の男性: 「それこそ、2〜3年に1回食べるくらいの頻度ですかね。例えば手羽先だったら『山ちゃん』があったりすると思うんですけど、あんまり有名なお店がないからですかね」 若い人を中心に「あまり食べない…」という声が多い。年配の方は…。 女性: 「あんまり食べないね」 別の女性: 「きしめん?最近食べないね。好きだけど、食べるお店が少ない」 別の女性: 「讃岐うどんに押されて、きしめんが衰退しちゃったんじゃないかな」

コシのある讃岐うどんにとって代わられつつあるのではないかという見事な分析。実際、28人に聞いて「きしめんをよく食べる」と答えた人は、わずか3人だった。

名古屋めしの中で、地元ではマイナーな存在になってきているようだ。

■きしめんの“逆襲”は「きしころ」から…冷たくすることで生まれる潜在能力

 そんな中、人知れずきしめんの「逆襲」が始まっているという。情報源の名古屋めしに詳しいライター、大竹敏之(おおたけとしゆき)さんに話を聞いた。

大竹さんと待ち合わせたのは、名古屋市東区のうどん店「角丸(かどまる)」。

大竹さん: 「『きしめん離れ』っていうのはずいぶん前から言われていることなんです。ですけども、人気がグイグイグイっと盛り返してきている。その原動力になっているメニューが、ここで食べられるんです。かなりきてますね。逆にそれを知らないというのは、ちょっと遅れているかも」 V字回復の原動力になっているというのが、この冷たい麺、名古屋でいうところの「きしころ」だという。 角丸の3代目: 「すだちとわかめのきしころ、白つゆです(980円)」

すだちもたっぷりで、見た目も華やかな一杯だ。器もつゆも冷たくなっていた。 リポーター: 「めちゃくちゃおいしいです。食感がつるんとくるこの感じと、冷たさがたまらないですね」 大竹さん: 「冷たいぶん、勢いよくすすれると思いますね。魅力のひとつです」 夏に冷たい麺というだけでなく、冷たくすることで、きしめんの潜在能力が引き出されるという。 大竹さん: 「きしめんはきしめんだけでしか味わえない、ペロペロっと舌の上で滑るような食感がある。冷たいと麺がしまるし、勢いよくすする食べ方ができるので、きしめんだからこその魅力をより体感できると思います」

きしめんの最大の特徴である、平たい麺の舌触りとノドごし。冷たいと一気にすすることができ、その魅力が格段にアップ。さらに、冷水で締めることで“弱点”だった歯ごたえも出ると、きしめんにとって理想の状態になるという。

角丸には、讃岐のうどん屋が食べに来て、店の関係者も驚いたとい。きしめんの「逆襲」は本当かもしれない。

■みそベースのスープにパクチーのせ…SNS映え狙って若い人達にアピール

 大竹さんよると、これまでの常識を覆すような新しいスタイルのきしころが若者にウケている店もあるという。その店がきしめんの専門店「星が丘製麺所」。この夏、名古屋市東区にできた新ビル「アーバンネット名古屋ネクスタビル」にもある。

店構えは、若い人たちにも入りやすいオシャレでポップな雰囲気だ。

星が丘製麺所の担当者: 「おいしいきしめんのお店があっても、なかなか今の人には入りづらかったりとか、昔からの常連さんでないと入れないという雰囲気ができてしまっていたりとか…」 この店で食べられる新スタイルの冷たいきしめんが、名古屋めし代表の「みそ」ベースのスープにパクチー、揚げも乗った斬新なメニュー「星麺(冷)」(820円)。

もちろんおすすめは、冷たく味わう「きしころ」で、他であまりみられない幅の広い麺を使っているのが目を引く。 星が丘製麺所の担当者: 「ちょっとインパクトというか、食べ応えとか…。今の方は写真も撮られるので、そういうことも意識して、ちょっと驚いてもらおうかなというところはあります」

星が丘製麺所の担当者: 「きしめんといえば、温かい赤いおつゆに、かつおぶしとかかまぼことか、もう決まった盛り付けがきしめんはでき上がりすぎてしまって、きしめんを今後はやらせていくためにバリエーションを広げていろいろ作っています」 「冷たい」「温かい」だけでなく、スープの味、具材も好みのものを選びカスタマイズできるのがこの店の特徴だ。

こうした斬新なスタイルが評判になり、SNSを中心に若者たちにも人気となっている。

星が丘製麺所の担当者: 「よりできるだけ身近に、お客さんに食べてもらえるように気軽に入ってもらって、名古屋の軽食といえばきしめんっていうのをね、もう一度復活させたいなと」

■古民家カフェもきしころに参入…「蕎麦×きしめん」で風味アップ

 きしめんの「逆襲」は名古屋の名所でも始まっていた。2022年7月にリニューアルオープンした、名古屋市東区の徳川園にある古民家カフェ「蘇山荘(そざんそう)」だ。

この店では「そば粉」を配合したきしめんが楽しめる。

風味をよくするために、そば粉を含んだきしめんを使用した新メニューの「冷やし蕎麦きしめん」(1100円)。みょうが、ねぎ、揚げナスなどが盛り付けられ、さっぱりしたきしめんだ。

そば粉が入っていることで、上品なコクがある感じのきしめんに仕上がっていて、ボリュームも満点だ。 蘇山荘のスタッフ: 「徳川園が尾張地方の顔になる建物になるので、ここでしかお召し上がりいただけない名物となるようなオリジナルのきしめんを開発させていただきました」 多いときは1日50食出るという。こうしたきしめんの広がりを見ると、確かに「逆襲」は始まっているのかもしれない。