名古屋市中村区の名鉄百貨店本店にオープンした「カレーパン」の専門店が人気を集めている。このカレーパンは全くジャンルの異なる名古屋グルメの名店2店が共同開発した。互いの強みを生かした本格カレーパンの開発秘話を取材した。

■「このままでは良くない」創業100年の老舗弁当店がカレーパンに挑戦

 名古屋市中村区の「名鉄百貨店本店 メンズ館」の地下1階に2022年6月にオープンした、カレーパン専門店の「マツウラベーカリー」。

4種類のカレーパンを販売している。

1番人気は「四代目松浦のキーマカレーぱん」(330円)。この「松浦」という名前は、名古屋で有名な老舗の弁当店「松浦商店」のことだ。

大正11年(1922年に)創業した「松浦商店」は、新幹線ホームの販売でも知られ、名古屋の駅弁業者の中で最も古い老舗。

名前は知らなくても、パッケージは馴染みがある人も多いはずだ。

そんな老舗の弁当店が、新たにカレーパンの具を手掛けた。

2022年は、ちょうど創業100年の節目。記念すべき年になぜ「カレーパン」を手がけた理由を社長の松浦浩人さんに聞いた。 松浦商店の松浦社長: 「このままでは良くない、何か新しい挑戦をしないといけない。そんな中で一つの案として、カレーパン事業が生まれました」

多い時は1日2万食の駅弁を作ってきた松浦商店だったが、コロナで状況は一変した。2020年には、GWの新幹線の利用が例年の1割以下にまで減少した影響などで販売が大きく落ち込み、苦境に立たされた。

苦肉の策として、近隣にチラシを配って注文を取り、駅弁を宅配するサービスなどでしのいできたが、根本的な解決には繋がらなかったという。

 そこで思いついたのが、4年前に販売した「冷めても美味しいキーマカレー弁当」だ。

駅弁のノウハウを生かし、冷めても美味しく仕上がるよう工夫を凝らした自信作だったが、「冷めても」というフレーズがマイナスに響いたのか、売れ行きはいまひとつだった。 松浦社長: 「社内評価は非常に良かったんですが、実際に市場に出してみたらあまり市場の評価は良くなくて…」 わずか半年で生産中止に。しかし諦めきれなかった社長は、100周年を機に「もう一度この自信作で勝負を」と、今度はカレーパンとして販売することにした。

■隠し味に八丁味噌とハチミツ…老舗のノウハウ生かした「冷めても美味しいキーマカレー」

 使うひき肉は国産の鶏肉。冷めた状態でもパサつかないようにと、モモ・ムネ・皮を独自の配合で混ぜ合わせた。比率は企業秘密だが、駅弁でも人気になった松浦商店自慢の鶏そぼろだ。

そこにオリジナルのカレースパイスを入れてキーマカレーを仕上げていく。

ここで社長が特にこだわった点があった。 松浦社長: 「名古屋ということで、キーマカレーパンの隠し味に使っているものです」 長年、味噌かつ弁当に使ってきた、本場岡崎の八丁味噌だ。

カレーの風味に奥深さを加える八丁味噌だが、それだけだと味が濃くなりすぎるため、さらにハチミツを加えるのがポイントだ。 松浦社長: 「八丁味噌の奥深さとハチミツのマイルドさを引き立たせるために、どちらも使用しています」

こうして駅弁の老舗ならではの「冷めても美味しいキーマカレー」が完成した。

■パンの知識はゼロ…“行列ができる”人気ベーカリーとコラボ

 しかし、駅弁といえばご飯で、キーマカレーを包むパンの知識はゼロだった。そこで、カレーに合うパン生地をとお願いしたのが、2013年にオープンした名古屋市東区の「テーラ・テール」だ。

北海道産の小麦だけを使って作るモチモチっとした食感のパン「テーラ・テール」(250円)や…。

幾重にも生地が重なるオリジナルクロワッサン「サリュー」(330円)など40種類が揃い、行列のできる人気のパンの店として知られている。

女性客: 「モチモチとかサクサクって皆さん多分好きだと思うんですけど、そういうのをすごく感じます」 別の女性客: 「すごくこだわっているので、なにより美味しいからよく通う」 今回のコラボを決めた「テーラ・テール」のブランドマネージャー・竹内小百合さんは、松浦商店のキーマカレーを絶賛する。 「テーラ・テール」の竹内ブランドマネージャー: 「松浦商店さんの八丁味噌を使ったカレーを最初にいただいた時に、これはうちの国産小麦だけで作った生地とメチャクチャ合うんじゃないかと思って、今回コラボさせていただいております」

コラボメニュー用に開発したパン生地は、カレーのマイルドさを生かすよう国産小麦と牛乳、バターで作り、もっちりとした甘みが出るよう工夫した。

さらにカレーパンの特長であるサクッとした食感を出すため、食パンから作った自家製のパン粉をまぶし、油で4分ほど揚げたら、老舗駅弁店と人気ベーカリーが互いの強みを生かしたキーマカレーパンが完成。

竹内ブランドマネージャー: 「すごくまろやかなので、うちのしっとりした生地とよく合って、食べ応えも十分あるんじゃないかと」 松浦社長: 「『テーラ・テール』さんの生地でキーマカレーを包んだらとても口ほどけが良くてですね、これは唯一無二のカレーパンができ上がったなと」

■「だし巻きたまご入り」や「台湾風」…老舗のノウハウ生かした4種類

 自慢のパンを多くの人に届けたいと、6月から販売をスタート。

女性客: 「カレーパンって脂っこい感じがするんですが、そういうのが無くて、普通の一般のパン屋さんと違って生地の美味しさもすごく感じるので」 他の3種類のメニューも人気だ。料亭からスタートした松浦商店は、職人が作るだし巻きたまごにも自信がある。カレーともパンとも相性もバツグンの、「だし巻たまご」がゴロっと入ったユニークな「だし巻きたまご入りカレーぱん」(380円)に…。

豚ミンチと玉ねぎをゴマ油で炒め、駅弁の煮物にも使っているタケノコを合わせて、辛みのあるオリジナルカレースパイスで仕上げた期間限定の「台湾風キーマカレーぱん」(380円)。

ハムとチーズ入りの「ザクコロカレーぱん」(430円)。

デパートへの出店に加え、8月8日には精米工場として使っていた場所に新店舗もオープンさせた。

初日には早速地元のお客さんが…。 男性客: 「町内にこういう新しいお店ができるのが、楽しみで良かったです」 別の男性客: 「カレーパン好きなので、すごくうれしいです」 100周年という節目にベーカリーとコラボし、新たな人気商品を作り出した駅弁の老舗・松浦商店。もちろん、看板商品の駅弁についてもしっかりと未来を見据えている。

松浦社長: 「コロナで大きい影響を受けたんですけど、今年(2022年)で創業100年を迎えますので、新しい事業としてこちらの事業を頑張っていきながら駅弁の方にも効果があるように、いろんな方にこの商品を食べていただいて新しい顧客をつかんでいきたいと考えております」