名古屋市中区の大須で長年愛されてきた老舗餃子店の「百老亭」は、4年前に一度は閉店したが、2022年7月に復活し、待ちに待った客で連日完売が続いている。

■名古屋・大須の餃子の名店が4年ぶりに復活 再開を待ち望んでいたファンで連日大盛況

 名古屋市中区大須。赤門通本町の交差点を西に進み、細い路地を左に曲がると見えてくるのが、餃子専門店「百老亭(ひゃくろうてい)」。2022年7月、4年ぶりに“復活”した。

自慢の「焼餃子」は、モチモチの皮にあっさりとした味で、後を引くおいしさだ。

メニューはこの「焼餃子」だけ。

この日も店の再開を待ち望んでいたファンで、店内はあっという間に満員になった。

男性客: 「今日は久しぶりにオープンしたから、楽しみに来ました」 別の男性客: 「やっとオープンしたというのを聞いて、足を運びました」 女性客: 「ここの味が忘れられなくて、再開ってなったから絶対来なくちゃと思って。全然味は変わらないし、おいしいです」

■60年以上の歴史に一度は幕 復活の立役者は2人の若者

 昭和28年(1953年)創業の「百老亭」は、大須観音の境内で営業していたラーメンの屋台がその始まりだという。

自慢の餃子を看板商品に、3代続く人気店として知られてきたが、4年前の2018年、店主の体調不良で惜しまれつつ閉店した。

 しかし2022年7月、以前の店舗の向かいにある、かつて餃子の製造所として使っていた建物を改装し、4年ぶりに“復活”した。

復活の立役者は、新しく店主になった小林利起(こばやし・りき)さん。

そして、前の店主の次女・美奈子さんの2人だ。

美奈子さん: 「大変なんですけど楽しいです。(百老亭の餃子を)食べたいって周りに言ってくれる人がいっぱいいたので、それをまたできることは嬉しいです」

■材料も作り方も以前と同じ 野菜が多めでヘルシーな一口サイズの餃子

 材料はもちろん、作り方も以前と全く同じ。餡は、白菜、タマネギ、ニラをみじん切りにし、豚ひき肉と合わせ、よく練り込む。肉が3割、野菜が7割と、野菜が多めのヘルシー餃子だ。

毎朝の皮作りは小林さんが担当。何度も機械を通し、5ミリほどの厚さにしたら…。

専用の道具で丸く切り抜き…。

一つ一つ丁寧に手で餡を包む。

小ぶりで一口サイズな餃子に。

このサイズも創業以来の伝統だ。

■モチモチの皮にあっさりの餡 伝統の焼き方は「茹でるように焼く」

 ファンを虜にする餃子には、焼き方にも大きな特徴がある。 小林さん: 「一回、水をめちゃめちゃ入れるんです。普通に焼くというよりも、茹でてから焼くっていう感じになります。その工程を踏むことによって、普通の焼き餃子よりも皮がモチっとする」 百老亭の餃子といえば、鍋に大量の水を入れ、茹でるように焼く独特のスタイルが有名。

1分茹でたらお湯を捨て、焼き目をつけて出来上がり。創業から代々守り続けてきた伝統の調理法だ。

小林さんは、鈴木さんからこの焼き方を教わり猛特訓し、数か月かけて百老亭の味を再現することができるようになった。

復活を遂げた「焼餃子」(10個550円)。

モチモチの皮とあっさりとした餡。自家製タレとの相性も抜群だ。ラー油も自家製で、じっくり半年寝かせて作る。

こだわりのラー油を、直接餃子に付けて食べる常連客も多いという。

■『お父さん』を元気にするため…京都出身の男性が再開に尽力した理由

 小林さんは京都出身で、名古屋に来たのは8年前だ。なぜ百老亭の再開に携わったのか? 小林さん: 「こういう古いお店、継ぎ手がいないというのでつぶれていくことに寂しさがあったので。百老亭を復活させたいのももちろんあったんですけど、『お父さん』をまず元気にするために何が必要かって考えたら、百老亭の復活やなと思った」 小林さんが『お父さん』と呼ぶ、前の店主の鈴木忍さん。

2人は5年前に知り合い意気投合。百老亭の餃子の味はもちろん、人柄にも惹かれていたという小林さんは、鈴木さんの生きがいでもあった百老亭の復活を提案した。

イチから餃子作りを教わり、伝統の調理法を習得した小林さん。今は鈴木さんも体調が回復し、店を手伝っている。 前店主の鈴木忍さん: 「周りからは言われとったもん、『はよやれはよやれ』って。お店を再オープンしろって。だけど1人ではできない。そういう点では、利起(小林さん)には頭が上がらない、感謝しかないね」 小林さん: 「僕も当然おいしいと思っていたけど、僕以上に百老亭のファンである人とか、『復活させてくれてありがとう』と言ってくれる人がたくさんいたので、町のためになっているなという感じはすごくします」

■再開した店は開店と同時に客が続々と…思い出を口にするファンも

 午後5時。開店と同時に次々と客がやってきた。

男性客: 「焼餃子40個」 美奈子さん: 「お願いします、皿(焼餃子)120です」 早くも厨房は大忙しだ。次々と入る餃子の注文を、小林さんが手際よくさばいていく。目の前で焼かれる餃子の音が、食欲をそそる。 小林さん: 「お待たせしました、餃子20個です」

男性客: 「モチモチしています、皮が」 店内は、カウンターとテーブルでの立ち食いスタイル。

女性客: 「もう最高です」 男性客: 「やっとオープンしたというのを聞いて足を運びました。待ちに待っていました」 どのお客さんも、とにかく嬉しそうだ。 大学生の4人組は、小さい頃から食べていた思い出の味だという。

男子大学生: 「僕が来たのは中学生の時なので、再開したと聞いたので、どこかのタイミングで行きたいと思っていたんですけどなかなかタイミングが合わなくて。今回みんな揃ったので行こうかなって」 テイクアウトの注文に来た常連客の女性も思い出があった。

女性客: 「おじいちゃんが大須界隈で仕事の帰りによく飲んでいて、ここを見つけて。『絶対においしいよ』って来ていたものですから。再開してから買いに来て『やっぱりおいしい』って」 客の人生に欠かせない店、百老亭はそんな存在になっているようだ。

■「名古屋と言えば百老亭」に…2人の若者が次の時代に繋ぐ老舗の味

 午後6時。厨房には前店主の鈴木さんが立っていた。「店は利起にまかせた」と言いながらも、忙しくなるとついつい手伝ってしまうという。

鈴木さん: 「心配だね、まだ。(注文が)数きた時にお客さんの対応しないかんし、なかなか回らない。みんなが『おいしいおいしい』って食べてくれるから、楽しいです」 小林さん: 「めっちゃ安心感があります。厳しいことも言ってもらえるので、すごく前向きにためになるなと思っています」 一度は途切れた老舗の味。後継者と愛娘、若き2人の力で再び次の時代へと繋いでいく。 閉店まで30分を残し、この日用意した餃子1500個が完売した。

小林さん: 「まずは、僕が餃子をちゃんとできるようになるっていうのが大前提なんですけど。そこからは、名古屋っていろんなお土産があるじゃないですか、なごやめしと言われる。そこの部類に百老亭をひとつ入れて『名古屋といえば百老亭』っていう風に、若い力を使って発信していけたらなと。百老亭は大須で長年愛されている味なので、これを後世にバトンをパスして受け継いでいけたらなと思っています」