2022年10月、三重県四日市市にオープンしたカフェ「tsukuroi」(ツクロイ)」は、豆にこだわった「スペシャルティコーヒー」という質の高いコーヒーとスイーツを楽しめる店だ。 これまで鈴鹿市でスペシャルティコーヒーの店を営んできた夫婦が、その素晴らしさを広めたいと“姉妹店”としてオープンさせた。

■安全で質の高い「スペシャリティコーヒー」

 三重県鈴鹿市で2018年に営業を始めた「coffee uno(コーヒー ウノ)」。

店主の樋口晶生(ひぐち・あきお)さんと…。

妻の晴加(はるか)さんの夫婦が営んでいる。

女性客: 「今まで飲んでいたのは苦かったりとか…、別物に感じますね」 男性客: 「なんならもともとコーヒーちょっと苦手やったんですけど、香りとかを楽しむものなんやなっていうのをここで知りました」 世界各地の豆を使い、自家焙煎したコーヒーを飲むことができる。

樋口さん一番のこだわりが、“スペシャルティコーヒー”だ。

樋口晶生さん: 「豆の特徴、農園の特徴っていうのがしっかり出ていて、わかるような豆ですね。いろんなお客さんにスペシャルティコーヒーを楽しんでもらいたい」 スペシャルティコーヒーとは、豆の管理が徹底され、味や香りなどの基準を満たした質の高いコーヒー。

生産者がわかるため安全性が高く、その農園で採れた豆だけを使用していることから、雑味が少なく風味がいいとされている。

■2店舗目ではコーヒー豆を使ったスイーツも

 樋口さんは、まだまだ知られていないこのスペシャルティコーヒーを広めようと、四日市市に姉妹店のオープンを進めていた。今回は、“スイーツ”も提供するカフェだ。

晶生さん: 「新しくできる店の方では、ブレンドすることによっていろんなことができるので」 晴加(はるか)さん: 「コーヒーとスイーツのお店。うちのコーヒーを使ったコーヒーのシュークリームとかやりたいなって」 晶生さん: 「ちゃんと経験のあるパティシエのスタッフも入れて、しっかりケーキ屋さんとしても恥ずかしくないようなものを提供していきたい」 専属のパティシエに依頼し、“スペシャルティコーヒー”を引き立たせるためのメニューをだすことにしていた。

パティシエの川邊渚(かわべ・なぎさ)さん: 「コーヒーに合うように配合を変えたりとか、程よい甘さのデザートを作れるように。お砂糖の配合を少なくしたりとか、他のものでコクを出したりとか」 パティシエの川邊さん。砂糖に頼らず、素材の味を活かした甘さを引き出す工夫していた。

そのメニューが季節の果物をたっぷりと使ったフレッシュなタルト。ラ・フランスを贅沢に使っている。

他にも、チョコレートをたっぷり使ったチョコチャンククッキーや、焦がしバターの風味が楽しめるフィナンシェなどの焼き菓子に…。

“この店ならでは”のメニューもある。 川邊さん: 「コーヒーを使ってデザートに取り入れていきたい」 コーヒー豆を使ったスイーツ。「コーヒーエクレア」だ。

焙煎した豆を漬け込み、コーヒーの香りや味をうつした自家製の生クリームを使った。

川邊さん: 「深煎りの豆なので、コクが出て苦みとマッチする感じ。コーヒーを飲んで、コーヒークリームを『こんなに香りが立つんだ』っていうのを実感してほしいです」 オープン3日前、樋口さん夫婦を交えて初めての試食会。

晴加さん: 「おいしい!でも、もっとコーヒー(風味に)やな」 晶生さん: 「ちょっと漬け込み時間を延ばす?」 川邊さん: 「今やってる配合じゃなくて、プラス5グラムして…」 スイーツ単体での美味しさは文句なし。ただ、“コーヒー感”をもっと前面に押し出したいと要望した。 川邊さん: 「もっと濃いコーヒークリームに仕上げるために、少し追加しました」 豆を追加し、コーヒーの風味をより強くした生クリームを作ることにした。

■「エスプレッソマシンが届かない」「給湯器が壊れる」 オープン直前にトラブル

 オープン3日前、トラブルが発生していた。 晴加さん: 「やばいな…。エスプレッソマシンない、お湯出ない」 晶生さん: 「お湯は間に合うかと思ったけどな…無理やな」

晴加さん: 「ここにマシンが入るんですよ、エスプレッソマシンが。もう完全にこれは届かないんで…」 海外からの輸入コンテナの遅れで、エスプレッソマシンが届いていない。

さらに…。 晴加さん: 「あーちゃん、早よ直しやアレ(給湯器)」 晶生さん: 「直せへんかもコレ。そもそもこれ(コンセントの形状)が違う?」 コーヒー作りに欠かせない給湯器が使えない。

慌てて部品を調達しに向かったが、間に合うのか。 晴加さん: 「もうお互い『ヤバイ、ヤバイ…』ずっとヤバイしか言ってないです」

■自慢のメニューが並びオープン当日迎えるも給湯器は

 そして迎えた姉妹店オープンの日。店名は「tsukuroi」(ツクロイ)」にした。

開店を前にショーケースには、生クリームを使った濃厚な「コーヒーのブラマンジェ」(380円)や…。

自家焙煎したコーヒーを使った「ティラミス」(500円)が並べられた。

改良し豆の風味をさらに強くした、あの「コーヒーエクレア」(380円)も無事完成していた。

そして、コーヒーにもさらなるこだわりがあった。鈴鹿の店では1つの農園の豆だけを使ったコーヒーを提供していたが、新店では複数の農園の豆をあえてブレンド。

ミックスすることでより飲みやすくなり、パンやスイーツとの相性もバツグンになるという。

給湯器の部品は、間に合ったのか。 晶生さん: 「沸かないです。象印のやつ買ってきて、それでお湯を沸かしながらやります」

部品は間に合わなかったため、当面は電気ケトルで対応することにした。

■コーヒー風味を強くしたエクレアも狙い通りの反応 コーヒーもスイーツも好評

 午前11時にオープンすると早速、客が訪れた。

女性客: 「フラットホワイトって…」 店員: 「今日はまだマシンが届いていないので、 今日はハンドドリップのみのコーヒーになります。申し訳ありません…」 エスプレッソマシンが間に合わず、ハンドドリップで作れるコーヒーのみの提供に。

それでも、スペシャルティコーヒーの味に変わりはない。初めて飲んだという客に感想を聞いた。 女性客: 「おいしいです。みんなに口受けがいいように作られていると思うので、すごくおいしかったのでまたゆっくり飲みたいと思います」 鈴鹿店の常連や、噂を聞きつけた近所の人たちなど、次々と客がやってきた。 晶生さん: 「真ん中ぐらいのブレンドなんで、そんな苦みは出してなくて」 女性客: 「その方がありがたい、苦いのはどうも苦手みたい」 晶生さん: 「そうなんですね、じゃあちょうどいいかもしれないです。もっとフルーティーなのがよければ、もっと浅煎りのやつもあるので…。お待たせしました」 女性客: 「近所なんです。今日オープンだからと思って、ちょっと楽しみにして」 新店のウリである「スイーツ」を食べた客に、コーヒーとの相性も聞いた。

女性客: 「おいしい、合います。すごくおいしいです。ティラミスが濃厚やから、浅煎りですごくサッパリして合う」 そして、改良したコーヒーエクレア。豆の風味を強く押し出したが…。 男性客: 「コーヒーの(味)、そんなにエクレアも甘すぎないので、コーヒーとよく合う」 狙い通り、名物メニューになりそうだ。 給湯器やエスプレッソマシンなど想定外の事態もあったが、その後も続々と客が訪れ、無事に初日の営業を終えることができた。

スタッフ: 「1日通してどうでしたか?」 晴加さん: 「疲れました!」 晶生さん: 「グランドオープンって言っているんですけど、プレオープンに近い感じなので…」 晴加さん: 「いい機会やったな。練習ができたみたいな感じで、週末に向けて頭の中整理して挑みたいなと思います」 トラブルも2人にとってはいい経験に。新店オープンをきっかけに、コーヒー愛がさらに深まったようだ。

晶生さん: 「スイーツとのペアリングだったりとか、いろんなコーヒーの可能性というか…を広げたくて。最終目標としてはスペシャルティコーヒーの魅力を伝えたい。入りは何でもいいので、いろんなお客さんにスペシャルティコーヒーを楽しんでもらいたい」 2022年11月9日放送