全国の土産の中でもトップクラスの知名度を誇る「うなぎパイ」は静岡県浜松市の名物ですが、最近は愛知県の名物だと思っている人が増えているといいます。その理由を調査しました。

■本当にいた「うなぎパイは愛知の名物」という人 その理由は?

 はじめにうなぎパイを愛知県の名物だと思っている人が本当にいるのか、名古屋城で観光客に聞きました。 東京から来たカップル: 「うなぎパイって静岡じゃないっけ」

東京都から来た男性: 「浜松!」 兵庫県から来た男性: 「静岡!」 神奈川県から来た女性: 「静岡!愛知なんですか?」 「なぜそんな質問を?」と、戸惑う人もいました。当然のように誰もが「静岡」と答え、うなぎパイを愛知の土産と言う人などいないのではないかと思われましたが、違いました。 群馬県から来たカップル: 「愛知!名古屋!」

2人は「愛知」「名古屋」と回答。 カップルの男性: 「イメージ的に愛知かなっていう」 カップルの女性: 「さっきも(うなぎパイが)名古屋駅にありました」 愛知県や名古屋と答える人は他にもいました。 山形県から来た女性: 「愛知じゃなくて…?愛知じゃないんですか?名古屋」

Q静岡の土産です 山形県から来た女性: 「あーごめんなさい。うなぎだから。売っているじゃないですか、名古屋にも。だから外から来るとそういうイメージで…」 名古屋の様々な場所で見るため、名古屋土産のイメージが強いといいます。「愛知」と答えた埼玉県出身の男性は、別の理由でした。 埼玉県出身の男性: 「愛知じゃないんですか?関東の方の人間だと、こっちの東海の方はぶっちゃけ曖昧というか、そんなに詳しくないんで、愛知も静岡も同じ感じに見えるというか…。そういう理由で、正直どっちでもいいかな」

名古屋城で観光客に聞いた結果、28人中5人が、うなぎパイを愛知県の土産と回答しました。

■土産売場で「うなぎパイ」は愛知の名物に囲まれた配置

 名古屋の文化に詳しいライターの大竹敏之(おおたけ・としゆき)さんは、うなぎパイを愛知県の名物だと勘違いする人が出てきたのには理由があるといいます。

大竹敏之さん: 「自分自身も(うなぎパイが)好きで、ちょっと気になっていたので一緒に調べられると…」 大竹さんには原因について思い当たるフシがあるとのことで、名古屋駅にある「ジェイアール名古屋タカシマヤ」の土産売場を訪れました。

大竹さん: 「ありました、うなぎパイ」

大竹さんはうなぎパイの配置場所に、観光客の勘違いの原因が隠されているといいます。 大竹さん: 「これだと確かに、ここに来られるよそのエリアの人は、『名古屋のお土産なんだな』とイメージしますよね」

うなぎパイは『名古屋』や『金のシャチホコ』が書かれた、名古屋土産に取り囲まれるように置かれていました。

売場の責任者に、なぜこの配置にしているのかを聞いてみました。 売場の責任者: 「静岡県の方には怒られるかもしれませんが、浜松までを私どもは『東海エリア』とさせていただいていることもありまして…」

大竹さん: 「私たちが関西に行くと、京都も大阪も神戸もはっきり線引きできないじゃないですか。ざっくり『東海』という広いエリアで見て、(うなぎパイも)そこの名物なんだという、そういう認識っていうことなんですかね」 浜松も「東海地方」。売場では、“東海土産”という括りで並べて販売されていることが多いため、うなぎパイも名古屋土産と勘違いしてしまう人がいるのでは、と大竹さんは話します。 また、名古屋駅が「うなぎパイ」の一大販売拠点となっているから、という理由も考えられるといいます。 大竹さん: 「(うなぎパイを製造する)春華堂さんにとっても、名古屋って絶対に外せないお土産のマーケットとして、この辺では一番大きなところだったので、積極的に名古屋駅でも売ろうと」 調べてみると、JR名古屋駅だけでコンコースや改札周辺に15店舗、ホームに6店舗の計21店舗もありました。近鉄名古屋駅や名鉄バスセンターなど、周辺には取扱店が他にもあります。

静岡県以外で売場がこれほどある地域はないそうです。

■名古屋でも勘違いしている人も ともに“うなぎが名物”も原因のひとつ?

 名古屋の人にも、うなぎパイがどこの土産かを聞いてみました。 女性: 「静岡」 別の女性: 「浜松」 男性: 「浜松」 Q愛知のお菓子と思っている人もいます 男性: 「本当?それはないな。うなぎパイは有名だから」 大半の人は静岡県の土産と知っていましたが、そうではない人もいました。 若い男性: 「うなぎパイ…愛知県?いや、静岡…?わからないです」 若い男性: 「うなぎってひつまぶしとかあって、愛知県なのかなみたいな感じで…」

3人組の女性: 「三重!」「静岡!」「愛知!」

3人組の女性は、答えがバラバラでした。 「愛知」と答えた女性: 「(愛知の)お土産屋さんに絶対置いてあるので、愛知なのかなって思っていました」 観光客も地元の人も勘違いする要因として、1.名古屋駅周辺でよく見る、2.名古屋土産と一緒に陳列されている。

3.愛知県と静岡県が地理的に近い、4.名古屋に「うなぎ」のイメージがある、といったことが理由のようです。

■「それはちょっと腹が立つね」ピリつく浜松の人

 この「勘違い」について地元・浜松の人はどう思っているのか。浜松駅前で聞きました。

Qうなぎパイを愛知名物と思っている人が結構います 浜松の女性: 「え〜!ちょっとびっくり。うなぎパイといったら浜松…」 別の浜松の女性: 「え〜、ありゃりゃりゃ。聞いたことない、本当に聞いたことない」

かなり衝撃を受けた様子です。 浜松の若い女性: 「ちょっと複雑ですね、なんか…。浜松の名産のうなぎパイなのに、愛知のものと言われちゃうのはちょっと…」

笑ってはいたが、少しピリついた空気に…。 浜松の年配の女性: 「それはちょっと腹が立つね。浜松のうなぎパイがすごく有名になったからって、よその人が来て持ってっちゃいかんね。あなたどう思う?浜松のうなぎパイを勝手に持っていかれるって」

と、怒りの声も…。 浜松の年配の女性: 「名古屋ってうどんじゃんね、味噌(煮込み)うどん。それ宣伝すりゃいい!」 心外だという声が多かったが、中には気にしていないという人もいました。 浜松の男性: 「愛知名物といえば、愛知名物でいいんじゃない。愛知は近いもん。別に構わないんじゃない?」 浜松の女性: 「自分のところの名物だと思いたいくらい、イイものだと思えばいいのかな」

■メーカーの受け止めは「好意的」 広報担当者も実は…

 そして、うなぎパイを製造する春華堂にも、この状況をどう受け止めているのかを聞くため、本社を訪ねました。

対応してくれたのは、胸元にうなぎパイのブローチを付けた、うなぎパイ愛に溢れる広報担当者。

春華堂の広報担当者: 「静岡を越えて名古屋・愛知のみなさんにご愛顧いただいてうれしく思いながら、お客さまからも愛知のお菓子だと思っていたという声をいただいたりします」 状況については春華堂としても把握していて、好意的な受け止めでした。また、この担当者の女性は愛知県出身で、昔はうなぎパイが愛知のものだったと思っていたといいます。 春華堂の広報担当者: 「私自身も愛知県出身なんですが、小さい時からうなぎパイが身近にあって、大きくなるまで私自身も愛知のお菓子だと思っていたところがあって…」 名古屋と浜松には共通点がいくつもあり、他の地域の人からは「一緒」に見えるのかもしれません。 春華堂の広報担当者: 「浜松も名古屋もうなぎを食べる文化がもともとあって、ほかにも徳川家康ゆかりの地がそれぞれ愛知、浜松にあったりだとか、実は浜松の人もドラゴンズファンが多かったりだとか…」

浜松の街頭インタビューでは「持っていってはダメ」と怒っている方もいましたが、愛知の人が「意識的に」自分たちの名物にしようとしているワケではないことはわかりました。 2022年11月23日放送