三重県いなべ市の郊外に2022年11月、日本茶のカフェがオープンしました。老舗のお茶農家がお茶畑の真ん中で始めたこのカフェは、交通の便が良くないにもかかわらず、たくさんの外国人観光客も訪れる人気スポットになっています。

■人気は自分で淹れるほうじ茶…三重ののどかな茶畑の真ん中にあるカフェ

 名古屋から車で約1時間の三重県いなべ市の郊外、茶畑が広がるのどかなエリア。

ここにたくさんの外国人観光客が集まっています。

訪れたのは創業約150年、お茶の製造・販売を営む「マル信緑香園(まるしん・りょっこうえん)」が茶畑の真ん中に2022年11月にオープンした、直売所を兼ねたカフェです。

店内もお客さんでいっぱいです。

女性客: 「今日は、おいしいお茶が欲しくてここまで来ました」 男性客: 「景色も良いですし、自然に囲まれていい空気を吸いながら、おいしいお茶が飲める」 ここで味わえるのは、コーヒーや紅茶ではなく、お茶。煎茶や、玉露など4種類。

お客さんが自分でお茶をいれるスタイルですが、例えば煎茶は1分ほど急須にお湯を入れて、最後の一滴まで注ぎきるなど、やり方は教えてくれます。

「急須でゆったり(煎茶)」(495円) 女性客: 「甘いです」 別の女性客: 「おいしいです」 また別の女性客: 「おいしい!やさしい甘みで、苦みもあるので、すごくおいしいです」 一番人気は「自分でほうじ茶」(825円)。

「ほうろく」という土鍋を使い、お客自身で緑茶を煎って、ほうじ茶に仕上げます。

女性客: 「ちょっと変わってきた。香りが変わっていくのが分かりますね、だんだんほうじ茶の香りに近づいてきた。最初はお茶屋さんの緑茶の匂い」 お湯を入れ、1分ほど待ったら飲みごろです。

女性客: 「味がすごく出ていて、甘くておいしいです。自分好みに育てて、楽しいですよね」 別の女性客: 「こんな風に自分でやったのは初めてだから、贅沢。色が変わっていくのが楽しい」 絵里子さん: 「お店で茶香炉を炊いているんですけど、あの匂いがすごくいいとみなさん言ってくださって、それを感じてもらおうと」 また、お茶を使ったスイーツも豊富で、お茶のプリン「いなべの茶っぷりん」(308円)は滑らかさに加え、お茶の甘みや苦みが楽しめます。

そして、ふわっふわの氷に、特製のお茶シロップをたっぷりかけたかき氷「石榑氷(いしぐれごおり あんこ付)」(825円 ミニサイズは550円)。

人気のレギュラーメニューです。

■品評会で3度の最高賞を受賞…カフェを営むのはお茶の直売所

 ここはお茶農家が栽培するお茶の直売所で、店内では急須でお茶を楽しむこともできるカフェです。5代目の伊藤典明さんと…。

妻の絵里子(えりこ)さん夫妻で、店を営んでいます。

三重県は全国有数のお茶の産地で、特にこのいなべ市の石榑(いしぐれ)地区では、一年を通して朝晩の寒暖差が大きいことなどから、いいお茶が育つといいます。

中でも「マル信緑香園」は、品評会で最高賞の「農林水産大臣賞」を3回も受賞したことがあります。

栽培、加工から販売まですべて自ら行っています。

■機械で分別できないものは手作業で…いいお茶を作るにかける「手間暇」

 良いお茶には手間暇が欠かせないと典明さんはいいます。収穫2週間前に、黒い布をかぶせ、直射日光を遮ることで、渋みの元になる「カテキン」が少なく、甘くまろやかな味わいになるということです。

それが、この地域で主に作られている「かぶせ茶」です。

収穫した茶葉は、畑近くの工場でお茶に加工します。

典明さん: 「これは畑で収穫したお茶をいったん飲めるようになった状態なんですが、この状態を荒茶といいまして、ここから商品にするために、細かい部分と粗い部分とか、軸の部分とかを選別していく仕上げ作業に入ります」

大きさの異なる茶葉を機械でふるいにかけ、葉っぱの大きさを揃えます。お茶を淹れたとき、格段に香りが良くなるといいます。

さらに、機械で分別できないものは、手作業でしていました。

典明さん自慢の「特選 かぶせ茶」は、直売所で100グラム864円から購入できます。

こうして作ったお茶を販売しながら、カフェのメニューにも使っています。

典明さん: 「かぶせ茶のこの香りは、すごく幸せ感じます。今年も良かったという満足感はありますね」

■フランス人観光客も大満足…老舗お茶農家の続く挑戦

 茶畑広がる郊外にわざわざカフェを作ったのには、理由がありました。 妻の絵里子さん: 「やっぱりティーパックがいいと言われたりとか、家に急須がないとか言われる人が結構多い。急須でじっくり出したお茶って全然違うので」

典明さん: 「危機感しかないです、常に。新たなお茶の魅力を伝え続けないと、沈んでいくのかなという気がします」 緑茶を飲む人は年々減っていて、急須でいれたお茶のおいしさを改めて知ってもらいたいと、2022年にカフェスペースを作りました。 6月4日、カフェにたくさんのフランス人観光客がやってきました。海外で、日本茶は今ブームになっています。

今回は「自分でほうじ茶」を体験してもらいました。典明さんはインバウンド需要を見込み、いなべ市と4年前から調整を進め、ようやくこの日、はじめての海外客を迎えました。

典明さん: 「もうちょっとした方がいいかな、ほわほわほわーんと煙が出たら…」 言葉はわかりませんが、身ぶり手ぶりで説明しました。ほとんどの人が初体験で、とても楽しそうです。

外国人客(日本語訳): 「おいしい」 別の外国人客(日本語訳): 「この経験は初めて。とてもおもしろい」 評判は上々です。お茶を飲んだ後は、カフェに併設された直売所で訪れた観光客が、両手いっぱいに買って行きます。

絵里子さん: 「これも、一緒?」

典明さん: 「メルシー」 会計も大忙し、この日は大成功に終わりました。お茶の魅力をもっと伝えたい、老舗お茶農家の新たな挑戦です。 絵里子さん: 「今日は外国の方に来てもらっていたんですけど、言葉は通じませんでしたけど、身振り手振りでこちらの想いは伝わっている感じはしたので、国籍は関係ないなと思いました」 2023年6月15日放送