地球温暖化の問題では、特に飛行機から排出されるCO2の量を減らすことが求められています。そんな中、原料にミドリムシを活用する新しい燃料「SAF(サフ)」が注目を集めています。カーボンニュートラルの社会を目指して、CO2削減効果が6〜8割あるといわれる燃料「SAF」を普及させる取り組みが始まっています。

■原料にはミドリムシも活用…持続可能な航空燃料「SAF」

 愛知県豊山町の県営名古屋空港から羽ばたいたヘリコプターの燃料は、環境にやさしい次世代バイオジェット燃料「SAF」です。

SAFとは、Sustainable Aviation Fuelの略で、“持続可能な航空燃料”のことです。従来の石油などの化石燃料を使わず、使用済みの食用油やごみ、植物などから作られます。

今回は、ミドリムシや使用済みの食用油を使ったSAFを10%、従来の燃料を90%を混ぜた燃料でのヘリの飛行に問題がないかチェックをしていました。

中日本航空の担当者: 「積極的にSAFを使っていきたい」 エアバス・ヘリコプターズ・ジャパンの社長(日本語訳): 「エアバス・ヘリコプターズは、SAF100%での飛行に取り組んでいます」 今この次世代燃料のSAFが注目を集めています。

■鉄道の5倍のCO2を排出…環境に大きな負荷をかける航空機

 2020年10月、菅義偉前首相によって、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする「カーボンニュートラル宣言」が表明されました。 気候変動への対策に待ったなしの今、政府が掲げた目標に向けていかに実行していくかが問われています。

中でも、航空機のCO2排出量はバスの1.5倍、鉄道の5倍と、他の公共交通機関より多くなっていて、航空機を使うことは「フライトシェイム=飛び恥」ともいわれています。

スウェーデンの環境活動家であるグレタ・トゥンベリさんが、飛行機での移動を避け、ヨットで国際会議に向かったことも話題になりました。

海外では「反フライト」運動が起き、ノルウェーでは2020年から燃料の0.5%、フランスでは2022年から燃料の1%にSAFを使うことが法律で義務付けられました。

■日本の市場規模は2050年に2.3兆円…需要拡大を見越しSAFの開発に取り組む

 日本でも動きが活発化しています。2022年3月2日の「SAFの日」に、航空会社や石油会社、プラント建設会社などが集まって「ACT FOR SKY(アクト・フォー・スカイ)」という団体を設立。

今は世界の航空燃料の0.03%に過ぎないSAFですが、市場規模は2050年には日本だけでも2.3兆円になると見込まれており、需要拡大を見越して企業も動き出しています。

 原料としてミドリムシを活用したSAFは、横浜市鶴見区の「ユーグレナ」で製造されています。

ミドリムシのSAFを作っている「ユーグレナ」は、“世界から食料不足をなくす”ことを目的に2005年に設立されたベンチャー企業で、食用のミドリムシを培養して飲料やクッキーなどを作ってきました。

「航空分野でもミドリムシが貢献できるなら」と、2010年にバイオジェット燃料の開発をスタート。培養したミドリムシの油脂を使った燃料の製造に乗り出しました。

ユーグレナの担当者: 「FDAのフライトが2022年3月に行われました。この製造実証プラントが完成してから最初のフライトまで、およそ2年半かかっています」

長い道のりをかけてできたバイオ燃料ですが、実用化されればCO2の排出量は5分の1になるといいます。 しかし、まだ減らないのがコスト。工場の生産能力は年間125キロリットルで、コストは1リットルあたりおよそ1万円。大量生産ができる新たな工場を作り、3年後には1リットル250円で販売することを目指しています。

同・担当者: 「コストもまだまだ高いので、さらに頻度を多く飛行機を飛ばしたい。大量のバイオジェット燃料を提供するためのインフラづくりには、民間も取り組みますが政府の支援もいただきたい」

■地球をカーボンニュートラルなものにするために…国と民間・オールジャパンで取り組む

 愛知県常滑市の中部国際空港に隣接する国交省の「飛行検査センター」には、“空のドクターイエロー”とも呼ばれる6機の飛行検査機があります。

ここは、飛行機が安全に飛ぶために、地上の無線設備や航路の点検をするための検査機を飛ばす全国唯一の拠点です。

 国は2022年秋に、この検査場を「SAFの拠点」とすることに決定。2022年度中に、2か月続けてこの検査機にSAFを給油して、燃料の輸送や保存のノウハウを蓄積するといいます。目標は、国全体として2030年に日本の飛行機のすべての燃料を10%、SAFに置き換えることです。

国交省航空局 大臣官房参事官の大塚大輔さん: 「SAFはCO2削減効果が6〜8割あるといわれていて、非常にCO2削減の寄与度合いが高い手段。まずはマイルストーンとして(SAFを)10%。2030年に向けてしっかり取り組んでいく」

世界的にSAFの供給量は少ないものの、海外ではフィンランドの石油会社「NESTE(ネステ)」がすでにSAFを商用化。ミドリムシでSAFを作るユーグレナも、生産能力2000倍の25万キロリットルのプラントにすることで、コストを下げると同時に供給量を増やし、世界に追いつきたい考えです。

ユーグレナの担当者: 「オールジャパンで取り組む問題。関連する省庁、民間企業のみなさまとともに、地球をカーボンニュートラルなものにするために進んでいきたい」 カーボンニュートラルの実現に向けて。「ミドリムシで空を飛ぶ」時代は、すぐそこまで来ているのかもしれません。