美しい音色を奏でる、天才ピアニスト辻井伸行さんが2020年にYouTubeで配信した演奏は、530万回以上再生されました。コロナに戦争、人々の沈んだ心に音楽を届けたい。辻井さんは、平和への願いを込めて演奏を続けています。

■目標があると燃える…楽譜に書いてあることを説明してもらい新しい曲を覚える

 生まれつき目が見えないピアニスト辻井伸行さん(33)。2022年5月、名古屋など国内4都市をめぐるツアーを開催し、ショパンの2つのピアノ協奏曲などを演奏しました。

辻井さん: 「ショパンは特に歌を大事にしていたので、“ピアノで歌う”曲が多い」

エネルギッシュでありながら、透き通るような美しい音を奏でる辻井さんのピアノ。辻井さんは、どのように新しい曲を、自分のものにしているのでしょうか。 辻井さん: 「僕の場合は楽譜が読めない。全部録音してもらったテープで聞いたり、楽譜に書いてあることも全部説明してもらったり。目標があると燃えるタイプだし、いつも良いことしか考えてないので、たぶん嫌にならない」

■「普通の人と同じようなことをやらせてくれた」…才能に気づいてくれた母への感謝の思い

 4歳で本格的にピアノを始めた辻井さんは、10歳でオーケストラと初共演。

20歳のときに国際的コンクール「ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール」で優勝。その頃、常に近くで支えてくれたのが家族でした。

辻井さん: 「小さい頃から『ピアノやりたい』ってことに(母は)すごく喜んで、一生懸命サポートしてくれました。小さい頃から美術館で絵の説明をしてくれたり、花火を見せてくれたり、普通の人と同じようなことをいっぱいやらせてくれて、すごく良い母でよかったなと」 母のいつ子さんへの深い感謝の思い…。20歳で自立した辻井さんは、今はマネージャーと各地を飛び回る日々を過ごしています。

辻井さん: 「(母は)僕の才能に気付いてくれていたと思いますし、良いことしか言わない。小さい頃からいつも褒めて育ててくれたので、本当によかった」 怒られたことはないそうです。 辻井さん: 「ないです。逆に父の方が厳しくて、『もっとピアノ以外の勉強も』ってすごく言われて。中学生の時には『うるさいな』と思って…。母親には反抗期はなかったんですが、父親に対しては反抗期あって」

母のいつ子さんとは対照的に厳格という父の孝さんですが、20歳での国際コンクールの優勝を機に、ピアニストとして認めてくれたといいます。 辻井さん: 「両方厳しくされても嫌だし、両方に褒められてもどうだったのかな」

■音楽は“世界共通”…コロナの収束願いYouTubeで配信した演奏は530万回以上再生

 世界中で猛威を振るった新型コロナウイルスの影響で街からは人が消え、コンサートも中止に…。 辻井さん: 「生の音楽が届けられないことが、本当につらかった。でも、音楽を届けたい思いでYouTubeチャンネルを立ちあげて…」

コロナ収束を願い、2020年4月に配信した名曲「春よ、来い」は、530万回以上再生され、人々の沈んだ心に、あたたかい「春の風」をもたらしました。

辻井さん: 「僕は、言葉で表現するより音で表現する方が得意なので、言葉にするより音にする方がより伝わりやすい。音楽って世界共通のものですし、音楽家の一人として、少しでも音で思いを伝えたい」

ロシアによるウクライナへの侵攻など、世界には不安が渦巻いています。 辻井さん: 「音楽でみんなが救われる部分もたくさんある。戦争とかコロナとかありますけど、音楽で世界が平和になって普通の日常が戻ってきて、みんなが笑顔になってほしい」

■沖縄の美しさや平和が続くように…辻井さんが作曲した「沖縄の風」

 辻井さんが作曲した「沖縄の風」。大好きな沖縄の美しさ、平和がいつまでも続くようにと作った曲です。

辻井さん: 「音楽は一生勉強だと思いますし、弾ける限り弾きたい。これからもいろんな曲に挑戦して、弾ける限りもっといい演奏を追求し続けていきたい」

伝えたい思いは、音にのせて…。心優しい音楽家の人生は、これからもピアノとともに続いていきます。