城の後ろに合成写真のように大きな満月が写った写真が、SNSで大きな反響を呼んでいる。この写真を撮ったのは、岐阜県在住で写真家の小林淳さんだ。小林さんは、岐阜の人たちにとってお馴染みの風景を幻想的に撮影して発信し続けている。なぜ地元の写真を撮り続けるのか。

■Twitterで4万いいね!…地元の写真家が撮影した「月と岐阜城」

 街中で立ち止まってはカメラを構える男性。岐阜県在住の写真家・小林淳さん(39)だ。 小林淳さん: 「歴史が残っていて、それが面白い被写体として残っているのはいいなと思って」

次の画像は、空色にペイントされた壁とジャージが気に入り、シャッターをきった。

 小林さんはある写真がきっかけで有名になった。 小林さん: 「限られた被写体をいろいろなアプローチで撮ることによって、違う表情をどんどん見せていくというのが得意で。まさに『月と岐阜城』なんてその通りで…」

「月と岐阜城」…。金華山の頂上にそびえる岐阜城の背後に、巨大な満月がくっきりと輝いている。

撮り方を解説したツイッターに4万件以上の「いいね」がつくなど、大きな反響を呼んだ。

■市の観光ポスターにも採用…「月と岐阜城」はどのように撮影したのか

 小林さんはどうやってこんな写真を撮っているのか、案内してくれたのは、長良川の堤防道路。城から5キロ以上も離れた所からシャッターを切っていた。

小林さん: 「近づいたら城に対して月が小さくなる。離れれば城に対して月が大きくなる」

遥か彼方の月はどこから撮っても同じ大きさだが、城は離れれば離れるほど小さくなる。そのため、遠くから望遠レンズ越しに見ると、月だけが大きく見える。

この「月と岐阜城」は、岐阜市の観光ポスターにも採用されていた。

岐阜市観光コンベンション課の担当者: 「このポスターを発表してから一般に浸透したと思いますし、岐阜市のシンボルとして新しい観光資源として、より広く伝わったと思います」  小林さんは、岐阜伝統の「鵜飼」の現場にも足繁く通う。

狙うのは「総がらみ」。鵜匠たちが乗った鵜舟が一斉にアユの追い込みをかける、鵜飼のクライマックスだ。 小林さん: 「一番手前の鵜匠の方の動きがかっこいいので、顔までもう少し撮れていればよかったなと…。1年に1枚も撮れないですけどね、そういうのは」

みんなを唸らせるような1枚は、そう簡単に撮らせてはもらえないようだ。

■きっかけは「たまたま」…幻想的な岐阜城との出会い

 小林さんは、建築士としての本業を持つ“兼業写真家”だ。10年ほど前から独学で撮影法を身に着け、コンテストへの応募を繰り返してきた。そして出会ったのが、普段見慣れた岐阜城が見せる別の顔…。

小林さん: 「6年ぐらい前、満月の夜に長良川の河川敷を車で運転していたら、(月と)重なりそうな瞬間にたまたま出会ってしまって、狙えばちゃんと重なってすごい作品が撮れるぞというのにたまたま気付いてしまった」

当たり前のように見てきた景色が、実は美しかったことに気づき、それから毎月のように河川敷に通うようになった。 こんな奇跡的な1枚も…。

小林さん: 「これは本当に反響があった作品で、決して着色しているわけではなくてですね、肉眼でも赤い日だったんです。僕もこれ、すごく驚いたんですけど、僕に対しての贈り物のような1枚ではあった」  もう1つの代表作は「宝石箱」のような作品だ。薄い霧が岐阜市内を覆い、月明かりや街の灯が照らす。

小林さん: 「もしこの夜景の上に雲海が出たら、たぶんとんでもない風景になるだろうなっていう予想があって、夜な夜な登山してみてダメだった。また登ってみようを繰り返して、4年かかったぐらいでこれが撮れたので、すごい思い入れがありますね」

■「写真で地域を盛り上げていくことが究極と思っている…」小林さん挑戦と今後の思い

 自分たちの住むまちの素晴らしさを、写真という形でもっと知ってもらいたいという小林さんはいま、岐阜市で写真展を開いている。(岐阜市のマーサ21で7月31日まで) 小林さん: 「(岐阜駅前の高層ビルの)屋上に上がって俯瞰で見ると、ここまで華やかで都会っぽいんだなっていうのは自分自身も驚きで…」

小林さん: 「生まれ育って愛着があって恩返ししたいとい思いが一番。戦国時代の歴史であったり、鵜飼であったり、そういう僕らが大切にしなきゃいけないものというか、子供たちにも語り継ぎたいものが多いので、それを写真で残すことで、或いは発信することで、より魅力的に伝えることができるのかな」

これまでの経験を生かして、新たな活動もしている。地元の「岐阜グランドホテル」とタッグを組み、自らが講師となった撮影ツアーの企画を始めた。この日はツアー本番を控えた現場の最終チェック。建物の屋上へと上がる。 小林さん: (担当者とのやりとり) 「岐阜城のちょい右に上がって、きょう風があるのは逆にかっこいい花火になるかもしれない。流れる花火。それがちょっと楽しみかな」

ツアー参加者たちと狙うのは、鵜飼の開始にあわせて打ち上がる花火と、岐阜城のコラボ写真だ。刻々と空の色が変化しマジックアワーの時間帯に。

いよいよ花火が打ち上がる瞬間がやってきた。ところが…。 小林さん: 「なんで(ライトアップを)しないのかな、今日しない日なんですかね?」 なぜか肝心の岐阜城が暗いまま。

小林さん: 「たまにしない日があるんですよ。いろいろな事情で…。」 この日に限ってライトアップが行われないというハプニング。写真の世界に絶対はないようだ。それでも撮影すると…。 岐阜グランドホテルの担当者: 「こんなの撮れたらうれしい」

小林さん: 「うれしいですよね。ここでしか撮れないので…」 ちなみに条件が揃えばこんな幻想的な光景も。

まさに“奇跡の1枚”だ。 小林さん: 「奇跡の瞬間を狙い続けたい気持ちは、10年前も今も変わらない。プラス、観光のためになるとか、地域の盛り上げのためになるとすごくうれしくて。趣味でやっていたものがそういう風に波及して、仕事にもなって、雇用を生むとか、人が住むとかというのが写真で地域を盛り上げることによって繋がっていくことが究極だと思っていて、そこまでのことが一枚の写真でできたらメチャクチャ夢があると思います」