岐阜県岐阜市で8月2日、金華山の登山道から男性2人が滑落する事故が起きました。夏の登山の危険性について、現場の登山道で山のプロに伺いました。  8月2日、岐阜市の金華山で、登山に来ていた男性3人のうち2人が、登山道から約10m下に滑落しました。この事故で、男子大学生が頭を打って意識不明の重体、もう一人も軽傷を負いました。登山道は比較的なだらかな、初心者向けのコースだったということです。

グラフは2021年の東海3県の、滑落や道に迷ったなどの山岳遭難者数です。山岳遭難というと冬を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、1年を通して遭難者はいて、冬よりむしろ夏の方が多くなっています。また2021年は、東海3県で21人の方が亡くなっています。

日本山岳会・岐阜支部によると、冬の登山の危険性は良く知られていますが、夏の低い山の登山でも大きなトラブルになることが少なくないといいます。 コロナ禍で密になりにくい登山は人気ですが、低い山でも油断大敵です。夏の登山の危険性について、現地で山のプロに伺いました。  名古屋から車で約1時間、岐阜市にある「金華山」。標高は329mで、低山登山客も多く訪れます。

金華山は10の登山道があり、いずれも山頂までは30分から1時間ほど。今回は事故があった全長2.3kmの「めい想の小径(めいそうのこみち)」を登ります。

一緒に登っていただくのは、日本山岳会・岐阜支部の東明裕(とうめい・ゆたか)さん、登山歴30年の“山の達人”です。

東明さん: 「(めい想の小径は)普通の登山道で歩きやすく整備されています。特に問題なく、お子さんから老人の方まで登れるような感じの道になっています」

「初心者用のコース」と謳われていますが、それでも油断は禁物です。 東明さん: 「この辺とかは結構危険な感じがしますね」 東明さんが指摘した場所は、整備されているものの柵や手すりがない道。下には斜面が続き、先には大きな岩も見られます。

東明さん: 「下に下りていけそうな気がしますよね。谷って結構危なくて、ここから見てなだらかに見えても、あの緑の岩の先がどうなっているのかとか、さらに下りて行ったら道じゃなくて断崖絶壁になっていることも考えられるので」 この場所は、横から見るとかなり急なことがわかります。その先には大きな岩がゴロゴロしていて、滑落すれば大事故につながりかねない危険な場所です。

東明さん: 「我々のセオリーでは“谷を下ってはいけない”というのがありますので、こういう通れそうで冒険したいなと思うルートを見つけても、ちゃんと決められたルートを通っていただくのが安全につながると思います」

初心者コースでも、危険な道があることを認識することが大切です。  さらにその先には、初心者が陥りやすい「盲点」がありました。 記者: 「あれ?こっち(左)じゃないんですか?」

このまま左の方に進んでいけそうにも見えますが…。

正しいのは右の道です。

東明さん: 「足元ばかり見ていると引き込まれるんですけど、ちょっと周りを見てもらうと、(右に)明らかに階段があってきれいな道でロープがついているじゃないですか。こっち(右)が登山道なんですよね。左はいろんな人が間違えて入っていると思うんですけど、踏み跡がしっかりしているので、ここは間違えやすいポイントです」 分岐点は踏み跡で安易に判断せず、周りを見たり地図やスマホのGPS機能も活用しながら、正しい道を選ぶのが重要です。

東明さん: 「山の遭難で一番多いのが道迷いです。分岐だったりという所を間違えて入り込んでいって、自分のいる所がわからなくなって遭難するケースは非常に多いです」

 この日のような雨の時も要注意です。足元が悪いときは、足の裏がしっかりつく場所を選び、一歩ずつ小股で歩くこと。特に木の根っこや岩はより滑りやすく危険です。

不安定な場所では、両手両足のうち3カ所が地面などに接している「3点確保」で進みましょう。

 歩くこと1時間、山頂の岐阜城に到着しました。晴れていれば岐阜の街並みを一望できます。

ここで、東明さんがもう1つ警告を…。 東明さん: 「山の事故は下りで一番起きやすいんです。例えばこのまま前に倒れてしまったら、高い位置から低い位置に落ちますので、衝撃が大きいんです」 登山は登りより下りが危険。頂上についた達成感で油断すると、大きな事故につながります。

 最後に、登山の際の持ち物についても伺いました。東明さんによると、低山であろうと絶対に必要なのは水で、目安は1リットルです。登山道は基本、水飲み場も自販機もありません。

また体力を使うので、糖分をとれるパンやナッツなどの食料や、暑い日は熱中症対策に、塩分補給ができるタブレットなども準備しましょう。