いま空前の「サウナブーム」と言われている。しかし、実は、新型コロナの影響で閉店も相次いでいる。閉業した岐阜県岐阜市の老舗サウナを復活させようと立ち上がった「サウナー」飲食店の社長を追った。

■空前のブーム「サウナ」にもコロナの影…利用者4割減で老舗の閉店相次ぐ

 熱波を浴びて水風呂へ…。いま空前のブームとなっている「サウナ」。

漫画やドラマなどをきっかけに、「ととのう」や「サ活」という言葉が浸透。

「サウナ好き=サウナー」の存在も一般的になってきた。しかし、新型コロナの影はここにも…。

 岐阜市の繁華街・柳ヶ瀬のほど近く、裏路地にたたずむ1棟のビル。

ここは、かつて「GANT(ガント)」というサウナ店だった。

創業から30年にわたって地元で愛されてきたが、2年前に閉店した。

サウナーの男性: 「毎週行っていました。残念でなりません」 別のサウナーの男性: 「水風呂と位置関係がすごく良くて、よく繰り返し入っていましたね。岐阜でサウナがほとんどなくなっちゃって、ちょっと残念な思いをしているところだったんです」  一大ブームのサウナだが、実は2021年末、業界団体が行ったアンケート調査では、新型コロナへの警戒感からサウナに行く人が前年(2020年)の4割減と、大きく落ち込んでいた。

全国で老舗のサウナ店が相次いで閉鎖に追い込まれ、「GANT」もその1つだった。

■本業の危機に難航する資金繰り…心の支えは「サウナ復活」への思い

 2022年7月、2年前に閉店した「GANT」のビルで、工事が進められていた。そこに1人の男性が訪れていた。岐阜市内で飲食店を経営する西山誠(43)さんだ。

西山さん: 「1年半ぐらい前なんですけど、コロナのタイミングで閉館するということで話を聞いて、築30年ですけどもしかしたらできるかもな、なんていう淡い心で」 自身もサウナーだという西山さん。そんなサウナ好きが高じて、「GANT」を復活させることを決意した。

西山さん: 「(GANTが)閉館するギリギリまで来ていました。(閉館すると聞いたときは)結構ショックだったんですけど、この先、飲食店だけご飯食べていくっていうのも難しい時代が来る可能性があるよねってことで、違う業態もちょっと攻めていこうというところで、ちょっと人生賭けて」  しかし、道のりは平たんではなかった。築30年になる「GANT」のビルは、全面改装するため1億円以上の資金が必要に。

西山さんは資金調達のため、コロナ社会を支援する国の「事業再構築補助金」を申請したが、最初の申請は「不採択」だった。 西山さん: 「(当時のツイートを読みあげる)『久々にかなりへこんだ。6000万のあてがなくなったが、3次がどうなるか。しかしお金がないのに事業進める恐怖と戦いながら1億集める。絶対集める。今日は寝られないなぁ〜』って。これね、仕事が終わって家帰ったら(不採択の)メールが来ていたので、やけ酒飲んだんじゃなかったかな、確か…」

さらに、緊急事態宣言で西山さんが経営する飲食店も休業に。 西山さん: 「飲食店10年やってるんですけど、コツコツ溜めてきたお金が、3か月で全部なくなったので。寝て起きたら20万〜30万無くなるような世界だったので、さすがに震えましたけどね、あの時は」 資金繰りも厳しかったが、サウナ復活への思いを奮い立たせていた。 西山さん: 「営業できない状況だったので、(営業)してもまたすぐ休業って形だし、かといって休業している2か月間とか何もしていないわけにもいかないし…。何ができるかといったら、サウナの話はあったのでそれの書類づくりとか専念したりしていましたね」

■“がっつり”ハンバーグに飛騨牛の牛丼…本業生かした充実の「サメシ」

 西山さんは、この日、経営する飲食店でハンバーグの仕込みをしていた。本業の飲食のノウハウを生かし、「サウナ飯=サメシ」を充実させる計画だ。

西山さん: 「評判いいので、向こう(サウナ)でもと思って。改良して作ってみました」 男性専用の店でサウナ―に満足してもらうため、200グラムのビックサイズにするなどガッツリ仕様に。

ほかにも、岐阜らしさを打ち出すため、飛騨牛の牛丼を作るなど試作を繰り返していた。

西山さん: 「もともと俺、こういう盛り付けあんまり好きじゃないんだよ、取りづらいから。でも、最近こういうの流行りじゃない?」 店のスタッフ: 「映えますからねえ…」 店のスタッフは、西山さんが突然始めた「サウナ復活計画」には驚いたようだ。 店のスタッフ: 「一番最初は…『え?』。(サウナが)好きなのは知っていたので、一緒に行ったりもしたことあったんで。突然『サウナやるわ』って言われたんですけど。でもわくわくしましたね、とっても」 「GANT」復活に向け、「サメシ」のメニューも固まった。

■“サウナー”のこだわりが随所に…予算数千万円オーバーも「感無量です」

 7月末、岐阜の老舗「GANT」の跡地に「新岐阜サウナ」が遂に誕生。

こだわりを盛り込みすぎ、予算が数千万円もオーバーしたが、その分、立派な施設がオープンした。

こだわりのサウナは、「個室」を3つも設置。温度調節ができ、自分だけの空間を堪能できる。

さらに「サ活」の重要ポイント、水風呂も2つ増設。

西山さん: 「7度まで下げようかなと思って。7度というと、ちぎれちゃうくらい冷たい感じになります」 通常17度ほどの温度を7度に。岐阜県内“最低温級”だという。

サウナーの男性: 「気持ちいいですしか言えないです。うれしいですね。岐阜でこういう施設まだないので、サウナ特化型というんですかね」 別のサウナ―の男性: 「いや〜気持ちいいです。いまちょっと語彙力無いんですけど、とにかく気持ちいいです。サウナと水風呂の温度のバランスが絶妙なので」 また別のサウナ―の男性: 「家から近い所にできるので、毎日来ちゃいそうです」 西山さん: 「感無量ですよね、人生賭けてやりたいなと思っていたので。これが継続できるように、よりいっそう皆さんに喜んでもらえるように努力していきたいと思います。人が集まってはいけないといいますけど、人々の癒し、食もそうですし、こういった温浴施設もそうですけど、そういうところに反映していけたらと思います」

 心も体も“ととのう”サウナ。コロナにあえぐ岐阜の現状も「ととのえて」くれそうだ。