7月10日の参院選で、国民民主党の伊藤孝恵さんが、愛知で初めて女性で再選を果たした。選挙戦は、「家族との時間を犠牲にしてでも活動すべき」という、選挙の“当たり前”への挑戦でもあった。2人の小学生の娘を育てる母親でもある、伊藤さんの18日間を追った。

■衆院選の応援で家を空け娘が精神的に不安定に…参院選は当落とは別の目標持ち挑戦

 愛知県の参議院選挙で女性では初めての再選を果たした国民民主党の伊藤孝恵さん(47)。この選挙に、勝ち負けとは別の、ある強い決意を秘めてチャレンジした。  伊藤さんは、7歳と9歳の娘2人を育てる母親だ。この6年間、東京で子育てをしつつ、議員としてヤングケアラーや内密出産など、これまで光が当たらなかった課題に取り組んできた。  2期目を目指す今回の選挙で、大きな気がかりだったのが、長女の行里(あんり)ちゃん(9)のことだ。当時3歳だった行里ちゃんには、選挙は「ママを連れ去ってしまう怖いもの」として記憶されていた。

伊藤さん: 「(去年の)衆院選の時は(波が)来ちゃって、あんちゃんが毎日、保健室行くようになっちゃってね、私がずっと遊説していて帰らなかったから…」  2021年秋の衆院選期間中では、伊藤さんが応援のためしばらく家を空けたため、精神的に不安定な状態になっていた。

伊藤さん: 「『選挙の最中18日間我慢すればいいだけでしょ』って考える人もいるかもしれないけど、18日間ほっといていい訳じゃない、子供たちは。『ここだけ我慢すればいいんだから、ここだけ頑張れ』みたいなものって、すごく育児や介護のことを分かっていない人たちの主張だと思う」

■次世代に送るために…選挙活動は午後8時で終えて母に戻る 娘の気持ちにも変化

 公示日の6月22日。伊藤さんは選挙区の愛知で、18日間に及び支持を求めて活動するため、学校がある子供たちは東京に残る。平日は、離れ離れの生活だ。

伊藤さん: 「私の選挙はつまり、次世代のお母さんたちにここに入ってきてほしいと。もっと色んな人が国会に来たら変わるはずだからって発信してきた私が、次世代に送るための選挙をやるって心に決めている」

 選挙は、朝から晩まで街頭で声を枯らして演説したり、企業や団体回りをしたりと、家族との時間を犠牲にして活動するのが“当たり前”とされてきた。子育て中の人が選挙に参加するのは容易ではない。

選挙の“当たり前”を変えたい。伊藤さんは毎日午後8時に活動を終えると決め、代わりに毎晩TwitterやYouTubeでライブ配信することにした。

伊藤さん(ライブ配信): 「みなさんこんばんは。選挙戦9日目、振り返りです」

早く帰ることで、子供たちと話せる時間を作った。 伊藤さん(ビデオ通話): 「明日、あんちゃんと帆那(はんな)ちゃん来るの待ち遠しいな」

伊藤さん: 「あんちゃん、ママいなくて大丈夫なの?」 行里ちゃん: 「寂しいけど、今は我慢してる」

「候補者」から「ママ」に戻る時間だ。 週末、子供たちが東京から名古屋に。夜、実家で久しぶりに家族と一緒に過ごした。心配していた子供達の様子は…。

伊藤さん: 「あんちゃん、帆那ちゃん、お風呂入るよ!」 はんなちゃん: 「やだ〜見たい見たい!」「逃げろ!」

伊藤さん: 「まあね、ママが選挙で疲れているからといって、子供が言う事聞いてくれるわけではない。すごく疲れてるはずなんですけど、元気ですね不思議と。これですね、これこれって感じですね。全然いう事聞かない、これこれっていう」 Q.寂しくない?(記者) 行里ちゃん: 「前はママの仕事の大変さが小さい頃だったからよくわからなかったけど、今になってママが大変だなっていうのがよくわかる。できれば一緒にいたいけど、ママにはやらなくちゃいけないことがあるから」

頑張るママの姿に、子供達の気持ちにも変化があった。

■「8時からママに戻ってもいいじゃない」…最後の訴えに娘も涙

選挙活動最終日の7月9日午後7時、最後の訴え。 伊藤さん(演説で): 「選挙活動を8時で終えて、8時からママに戻ったっていいじゃないですか。私は始発から終電まで街頭には立てないけど、24時間戦えないから、あなたと全く一緒だから、あなたの声の代弁者になれる。幼い子供の成長を見届けたい、そんな親としての切なる願いすら奪われるのが政治なんだったら、誰も政治家なんて目指さない。それを変えたいんです」

夫の祐介さん(46): 「ママの話(演説)聞いてたら、(行里ちゃん)泣けてきたって」 行里ちゃん: 「確かに前は選挙怖くて嫌だったんだけど、今の選挙は楽しいから別にいいと思う。みんなが笑顔で何にも苦しそうじゃない」

 ママの想いは、娘にしっかり届いたようだ。そして、選挙戦を終え、陣営にも挨拶。 伊藤さん: 「私がなんも言う事聞かないもんだから、皆さん大変ご苦労なさったと思います。今日まで本当にありがとうございました!」

選挙戦で力になった選対のメンバーも家族はいる。伊藤さんは、皆が自分の家族に会えていないことがありながら、自分がいかに家族と会えるかを考えてくれたことに精一杯の感謝の気持ちを示した。

■深夜に“最後の当選確実”…ママも参加しやすい政治にこれからも

 参院選の投開票日、7月10日午後8時。選挙の結果を子供たちと待った。 伊藤さん: 「(行里ちゃんに)ママね、1つ決めていることがあるの。(落選しても)『申し訳ありませんでした』って絶対に言わないの。『ありがとうございました』って言うの。だって、みんなで頑張ったでしょう」

深夜まで、焦れる時間が続く…。午後11時30分。覚悟を決め、事務所へ。

伊藤さん: 「もう3つ目(の当確)まで出たんだね…」 記者: 「あとひとつです」 伊藤さん: 「そっか…。両方とも書いてあるから…。敗戦の弁も」 そして、午後11時50分、事務所に向かう車内で…。 伊藤さん: 「おお…当確が出たよ!ありがとうございます!それを同級生たちからのラインで知るっていう…」

事務所で、たくさんの拍手に包まれて迎えられた伊藤さん。 事務所: 「バンザーイ、バンザーイ」

伊藤さん(支援者に挨拶): 「こんなじゃじゃ馬に未来を見て、思いを託していただいた愛知県のみなさま、私をこれまで支えて下さった仲間たち、恩人たち、心の底から家族にも御礼を申し上げます。本当にありがとうございました」 子育て中のママも政治に参加しやすくするために、選挙の“当たり前”を変える。

その1歩を踏み出した伊藤さんの歩みは、これからも続く。