愛知県春日井市にある「寿司竹」の2代目の大将は、SNSで「シェフヒロ」の名で活躍していて、総フォロワー数は800万人を超える人気の寿司職人です。父親が亡くなり、当時は寿司職人として苦しい時期もあったといいますが、1人の少女との出会いで料理の楽しさに気付き、今では確かな目利きとエンタメのギャップで大人気になっています。

■コミカルな動画で一躍人気に 寿司職人「シェフヒロ」さん

 いま、SNSで話題を集めている寿司職人、竹岡広行さん(50)は、愛知県春日井市の「寿司竹」の2代目です。SNSでは「シェフヒロ」の名前で活躍しています。

アイドルをも超える人気の竹岡さん。店には、YouTubeで10万人フォロワーを獲得した際に贈られた銀の盾や、100万人フォロワーの金の盾、TikTokの盾もあります。全てのSNSを合わせたフォロワー数は831万人です。

見た目はいたって普通の中年男性ですが、SNSの世界ではとんでもない有名人です。 竹岡広行さん: 「何が受けている…やっぱりギャップですね」

竹岡さんは目利きの確かなベテランの職人で、踊りながらコミカルに寿司を握る動画で一躍人気になっています。

■楽しいだけじゃない 市場関係者も「背筋が伸びる」シェフヒロさんの“確かな目利き”

 竹岡さんは毎朝の仕入れが日課です。まだ夜が明ける前の午前5時、この日は春日井市の隣にある、豊山町の「北部市場」に。 市場で目を付けたのは、見るからに上質な宮城県産の本マグロです。

竹岡さん: 「宮城の塩釜港。尻尾見ると大体わかる。色と見た目で大体わかります。直接来ないとなかなか良いものが手に入らないし、自分が見ておいしそうなものじゃないと、自信持って売れない」

ズワイガニや白子といった定番に加え、 常連客が喜びそうな高級魚のノドグロも買い付けました。

北部市場は、竹岡さんが長年通ってきた馴染みの場所で、竹岡さんの目利きには、市場の関係者も一目置いています。 市場の関係者: 「(竹岡さんが)現場に来るとピリッとして、すごくこっちも緊張します、背筋が伸びる(笑)」 別の市場の関係者: 「今は話題がどうしてもYouTubeの話題が大きいですけど、でも地場で地域にしっかり根付いた職人さんで、上手にやられていますよね、いまの時代をキャッチして」

■TikTokのフォロワー数が1年で100万人に…店にも続々とお客さんが

 寿司職人一筋だった竹岡さんが、 時代をキャッチするSNSと出会ったのは、2019年のことでした。最初はYouTubeで「おいしそうな映像」を配信していましたが、 あまりウケなかったといいます。

竹岡さん: 「とりあえずいろいろ勉強しようって勉強して、何ができるかなっていったらTikTok。 拡散力がまだ日本にきたばかりだから速いというので、とりあえずYouTubeをやめてTikTokをやろうと」 TikTokを使って、エンタメを前面に押し出した動画にしました。自ら出演し、握った寿司を食べたりダンスをしたりと、従来の寿司職人のイメージからは想像できない内容に。

3000万回以上再生された動画は、コミカルな動きと美味しそうなお寿司のギャップが面白いと大ヒットしました。

竹岡さん: 「(TikTokのフォロワー数が)1年で100万人いって。100万人いったらYouTubeを始めよう思っていて、YouTubeに戻っても1カ月、2カ月で10万人。そこから7カ月ぐらいで100万人。 すっかり有名人となった竹岡さんの店には、開店と同時に、お客さんが押し寄せます。

女性客: 「友達がインスタに載せていて」 別の女性客 「SNS拝見しています。沖縄から(来ました)。1年ぐらいずっと(行きたいと)言っていて。言葉がなくても伝わるというか。それこそ誰が見てもおいしそう、行ってみたいって」 一緒に来た女性客: 「面白いです」 男性客: 「YouTubeで毎日のように見ていて、いつか来たいと思っていました」 食事を終えるとお客さんは、決まって記念撮影します。さらにこの日は、カナダからやってきたという観光客もいました。

竹岡さん:(英語で) 「きょうは名古屋に?」 カナダからの観光客:(英語で) 「はい、きょうだけです。あなたに会うためだけに」 竹岡さん:(英語で) 「あなたも同じ?」 一緒に来た観光客:(英語で) 「はい」 竹岡さん:(英語で) 「ありがとう」 カナダからの観光客:(英語で) 「あなたは最高です」 想定外の反響に驚きつつも、 竹岡さんは今、海外のお客さんとも意思疎通できるよう、 毎日必ず30分、英語を勉強しています。

竹岡さん: 「海外から会いに来てくれているんですよね、高いお金と時間を使って。その中で精一杯やって喜んでくれるけど、会話ができたらもっと満足させられるかなと。 本当、舞台なもんで、どう楽しませるか」

動画の収録は毎日、昼の営業後にしていて、妻のなみこさんが撮影と編集を担当しています。

この日の動画に使うのは、朝仕入れた最高級の「本マグロ」です。 竹岡さんの妻・なみこさん: 「ヒロくんごめん、2センチぐらい横。で回してもらってもいい?」

1カットずつ、丁寧に、撮影は2時間にも及びました。 約2時間かけて撮影しましたが、1分ほどの長さの動画に仕上げるといいます。 竹岡さん: 「いつもそうです。2時間がんばってだいたい1分動画」

■寿司を投げつけられたことも…後を継ぎ苦しんでいたシェフヒロさんを変えた「少女との出会い」

 今ではすっかり人気者の竹岡さんですが、先代の跡を継いで職人になった時は、精神的に苦しい時期を過ごしたといいます。

竹岡さん: 「もともとはお寿司屋さんになりたくなくて大学へ進んで、在学中に親が他界して、長男だから戻って来ざるをえない状況で、嫌々店を継いで、でもお客さんからお寿司は投げられる、『2代目の寿司なんか食べられるか』って投げられたり。いろいろ嫌なことも多くて」

嫌々寿司を握っていた竹岡さんでしたが、「ある少女」との出会いが、彼の生き方を変えました。 竹岡さん: 「近所のすごい料理が上手なお母さんの娘さんが体調を崩した時に、食事が(喉を)通らなくなって、僕が作った料理だけ食べられるっていうのですごく喜んでもらった時に、料理ってすごく楽しいな、やりがいがあるな、面白いなっていうので、すごく人が喜ぶことっていいなって」

■これからは社会貢献を…能登半島地震で被災したラグビー強豪校に海鮮丼の差し入れも

 SNSを駆使して多くの人を喜ばせてきた令和の寿司職人、 今後はお客さん以外の人にも喜んでもらえることを、と考えています。

竹岡さん: 「50歳から社会貢献したいなって、いまはそれがもう年齢的にも50歳だし、何か自分が楽しめる、自分たちでできる社会貢献をしていきたいなっていう感じですね」 「社会貢献をしたい」と話していた竹岡さんは、定休日だった2月8日、51号のお米を炊き、47人前の「海鮮丼」を作っていました。

その大量の海鮮丼を持って向かったのは、岐阜県恵那市にある中部大学の施設です。 中部大学春日丘高校が、能登半島地震で被災した石川県輪島市の「日本航空高等学校」のラグビー部を受け容れ、ラグビー部員は中部大学の施設を借りて、授業や部活動を行っていました。

竹岡さんは知人を通じて、このことを知り、急遽、大盛の海鮮丼47人前を差し入れたということです。 2024年2月14日放送