2024年のパリ五輪まであと2年。三重県四日市市出身の、女子レスリング・藤波朱理選手は公式戦で破竹の100連勝を遂げ、世界選手権の日本代表に選ばれた。大活躍の陰には父親の献身的なサポートがあった。

■“レスリング王国”・三重県からまた新星「無敗でパリで金メダル」目指す藤波朱理選手

 吉田沙保里、土性沙羅、向田真優…。数々の五輪金メダリストを生んだ三重県から、また新星が誕生した。三重県四日市市出身の藤波朱理選手(18)だ。

2021年末の全日本選手権でも優勝を果たし、中学2年生から続く公式戦の連勝記録は、大学入学時点ですでに「90」。2022年6月の選手権で連勝記録を「100」に伸ばした。  2022年春に入学した日本体育大学では、約2000人の新入生を代表し決意表明した。

朱理選手: 「負けなしで無敗でいって、パリで優勝できるように2年間頑張っていきます」

目標は「パリ五輪で金メダル」。春からその目標を叶えるため、新しい拠点での生活が始まった。

■高校も大学も「父の元で」…三重を離れ東京で父と2人暮らししながら目指すパリ五輪

 6月2日に道場を訪れると、全日本クラスのレベルの高い選手たちを相手に練習に励む、朱理選手の姿があった。その横で厳しく指導しているのは、日体大レスリング部のコーチであり、朱理選手の父でもある俊一さんだ。

俊一さんは2021年3月まで、朱理選手が在籍していた「いなべ総合学園高校」で教員をしながら、レスリング部の指導に当たっていた。しかし朱理選手の進学に先立って、34年間務めた教員を辞め、コーチとして誘いのあった日体大へ移った。

朱理選手: 「ずっと一緒にいるので、うっとうしいなと思うこともあるんですけど、自分のことを一番に考えてくれていて、本当に感謝していますし、勝って恩返しをしたい」

今は朱理選手と大学近くのアパートで2人暮らしをしながら、二人三脚でパリ五輪を目指している。  俊一さんは、三重に住んでいたころにはしていなかったという料理も始めた。

俊一さん: 「手の込んだのをね、これ(料理本)を見ながら。(Q.得意料理は?)まだないですね…」 朱理選手: 「(Q.お父さんが作る料理で何が好き?)この前、麻婆豆腐美味しかったです」

大学生の娘と父。少し距離感はあるが、共通の1つの目標で固く強い絆で結ばれている。

■始めたころは負けて涙も…道を示してくれた父は「心強い存在」

 レスリングの指導者だった父の影響で、4歳から競技を始めた朱理選手。

今では無敵の強さを誇る朱理選手だが、始めたころは負けて涙することも多かった。

それでも、父の言葉で前向きになれたという。 朱理選手: 「『やりたかったらやれ、その代わりやらんかったら負けるぞ』と伸び伸びとさせてくれた。(父が)おらんかったら、父が父じゃなかったら自分はどうなっていたのかというくらい、心強い存在です」

負けず嫌いの性格から、次第に自ら父に教えを乞うようになった。

■身近だった“金メダリスト”に受けた刺激…遠かった夢は「目標」に

朱理選手: 「これは自分が小学生の時に書いたドリームマップです」 朱理選手の実家には、小学生の頃に書いた「夢」が掲げられている。 『レスリングでオリンピックに出場し優勝する。そして歴史に名を残す』  そんな夢が目標に変わったのが、2021年の東京五輪だ。朱理選手は、同郷の先輩、向田真優選手の準決勝を見ていた。身近な選手が金メダルを次々と獲得する姿が、朱理選手の気持ちに火をつけた。

朱理選手: 「今までずっと、オリンピックって遠くかけ離れた夢の舞台だなって…。合宿で昨日あった人が金メダルを獲っているので、より出たいなって。出たいし、あの舞台で活躍したいと思いました」

 日体大に入学してからは、外部コーチとして招聘された「五輪4連覇」の伊調馨さんがスパーリングなどの相手をしてくれたこともあり、より五輪を意識できるようになった。 朱理選手: 「伊調馨さんから学ぶことが本当に多くて、自分も馨さんからどうやってポイントを取ろうって、いつも考えていて。馨さんからポイントが取れたら、今の同じ階級のレベルの人には絶対に取れると思うので、今はまだまだなんですけど、絶対に(馨さんに)勝てるように頑張りたいです」

■父には「本当に感謝」…強敵破り公式戦100連勝達成

 6月18日の「明治杯全日本選抜選手権」。優勝すれば、公式戦100連勝と同時に、2連覇のかかった世界選手権への代表権が手に入るというメモリアル・ゲームだ。 決勝の相手は、2017年、18年と世界選手権で優勝した奥野春菜選手だった。 開始1分、タックルから素早く相手のバックを取る攻撃で2ポイントを先制。しかし、その後は両者譲らず。 朱理選手: 「負けたらどうしようっていう不安も出てきたんですけど、そういった不安を消すために毎日レスリングに取り組んでいて、さらに成長しているかなと思います」 するとその言葉通り、開始1分でタックルから素早く相手のバックを取る攻撃で2ポイントを先制。第2ピリオドでもしっかりとポイントを奪い、1ポイントも取られることなく公式戦100連勝の快挙を達成。  親子の絆で2021年末の全日本選手権に続けて優勝し、2022年9月の世界選手権への出場権を手に入れた。

カメラマン: 「(お父さんと)肩を組んでもらっていいですか?」 朱理選手: 「えーやだやだやだ」 記者: 「明日(6月19日)は何の日か分かりますか?」 朱理選手: 「父の日…」 俊一さん: 「私、一度もプレゼントもらったことないですよ」 朱理選手: 「普段は言っていないんですけど、本当に感謝しています」

朱理選手の強さの秘訣を、俊一さんはこう分析する。 俊一さん: 「負けず嫌い。これが一番ですね」 「負けることが嫌い」。この強い気持ちを持った18歳は、2年後のパリ五輪を見据えている。

朱理選手: 「これからオリンピックが懸かる大会が始まってくるんですが、その前(9月)に世界選手権があるので、しっかり勝って2連覇して、その先のパリの予選につなげていきたい」