県立浦和高校(さいたま市浦和区)で、二年生約三百六十人が原爆被害者の講演を聴く平和学習があった。広島への修学旅行の事前学習として企画されたが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響で旅行が中止に。それでも教諭らが「修学旅行がなくても被爆者の声を聴く機会を」との思いで実現させ、生徒からは熱心に質問が寄せられた。 (前田朋子)

 講演したのは、県原爆被害者協議会(しらさぎ会)の久保山栄典(よしのり)副会長(83)=八潮市。八歳の時に故郷の長崎市で被爆した久保山さんは、かつて日本原水爆被害者団体協議会の代表理事も務め、核廃絶を訴え続けてきた。講演では原爆投下に至る当時の社会背景を解説し、「地球が爆発し、この世が終わるのか」と思った被爆時の印象や、命を落とした父を一人で葬るまでをかみしめるように語った。

 講演後は生徒からの質問が途切れず、マイクの前に行列ができた。質疑応答は放課後も続き、「戦争を知らない世代の政治家が首相になり、被爆者支援は変わったか」「日本の戦争教育は十分だと思うか」などの質問に、久保山さんは一時間以上、丁寧に答えた。

 「平和学習が主で、修学旅行はその確認の場ととらえていた」という武田大輝さん(16)は、講演を聴いて「原爆についての知識はあり、漫画などでも読んでいたが、(直接話を聴くと)実感が違う。戦争はだめだという枠組みの中で核の問題を考えたい」と話した。

 久保山さんによると、しらさぎ会には例年、修学旅行の事前学習としての講演依頼が旅行会社を通じて七十〜八十校から寄せられる。今年はコロナ禍で修学旅行の中止が相次ぎ、それに伴い平和学習もなくなっているとみられ、会への依頼も激減した。その中で同校は唯一、教諭らが会に直接連絡して実現。企画した渡辺大地教諭(33)は「平和についてしっかり語り合い、実現できる力を意識させたかった」と話す。

 久保山さんは「あと四、五年で経験者がいなくなり、直接伝えられなくなってしまう焦りもある」と明かしたが、この日の生徒の反応に「話しても、共感を得られなければ意味がない。あれだけ質問が来たというのは、深いところで何か感じてもらえたのでは」と手応えを感じた様子だった。