延長十回裏2死二塁。一打サヨナラのピンチで迎えたのは、昨年の秋季大会で本塁打を打たれた浦和学院の4番・蛭間拓哉選手。何とか2ストライクまで追い込んでから、「フッ」と息を吐いて意を決した。

 勝負球は内角低めの直球。捕手のミットが「パンッ」と乾いた破裂音を立てると、球審の手が上がった。思わず「よっしゃー」と雄たけびを上げた。

 中学時代は外野手だったが、強豪・明徳義塾での指導経験を持つ飯野勝監督が投手へ転向させた。制球力とボールのキレが光る貴重な左腕。期待通りに一年生から活躍した。だが、蛭間選手に打たれたあの秋季大会では屈辱の9失点のコールド負け。

 「浦学にはどうせかなわない」−。そんな挫折感もあったが、こみ上げてくる悔しさにリベンジを誓う。冬から春にかけ、球の握り方やリリースポイントを研究した。夏に浦学に勝つために。

 この日は五回まで無失点。内外角を広く使った投球で凡打の山を築き、延長十二回を一人で投げ抜き、最後まで浦学を苦しめた。

 今後、野球を続けるかはまだ決めていない。ただ、「続けるなら、今度は強いところに必ず勝つ」。ミットをたたいた内角低め直球の音が、確かな手応えを残した。 (牧野新)