横浜市都筑区の影絵専門の劇団「かかし座」(メンバー40人)が今年、創設から65周年を迎えた。岐阜県下呂市に劇団員が滞在し、地域の民話を紹介する連続公演も10年目の節目となった。今後も、複数の班が全国各地で公演を重ねる。代表の後藤圭さん(62)は「今後も国内外で通用する影絵を追求していく」と、決意を新たにしている。 (志村彰太)

 横浜市都筑区のイベントホールで、かかし座が米国の昔話から構成した「魔法つかいビーストと少年ウィリー」を演じていた。少年を狙うビーストは変身が得意。手影絵でスクリーンにキリン、ゴリラ、恐竜が次々に現れると、見ていた子どもたちから歓声が上がった。後藤さんは「劇団で編み出した手影絵も多い。ゴリラは二人がかりで表現している」と明かす。

 かかし座は後藤さんの父泰隆さん(一九二六〜七九年)が、戦後設立された高等教育機関「鎌倉アカデミア」で創設したサークルを基に五二年に設立。芥川龍之介の「蜘蛛(くも)の糸」やイソップ物語などをテレビ番組で披露していた。この時は、紙などに光を投影する影絵が中心だった。

 当時、劇団事務所は都内にあり、自宅も兼ねていた。演じ終わった影絵の人形が、自宅の窓に貼ってあったという。「想像力をかき立てられた。父は良い仕事をしているんだと幼いながらも思っていた」。ただ、父の後を継ごうとは思っていなかった。

 都内の音楽大在学中、父が急逝。十人ほどの劇団員を抱えていたこともあり、大学を中退して劇団を引き継いだ。ちょうど、テレビ出演も減りつつあり、経営的にも転機だった。

 横浜市に事務所を移転し、公演に注力し始めた八〇年代後半、演出家から思わぬ助言をもらう。「影絵劇団なのに、なぜ手影絵をやらないのか」。ハッとした後藤さんは、手影絵の研究に没頭。「手は立体的だが、影に写すと平面になる。理科的な発想をしないと、手影絵はつくれない」。パンダやブタ、ペンギンなど、これまで百種類を独自に編み出した。

 手影絵の種類の多さに加え、語り手をつけず、影絵を動かす人が、せりふも言い、歌も歌う。「うち以上に高度なことをやる劇団は少ない」と後藤さん。ここ十年はドイツやオランダ、ブラジルなど海外でも公演をこなしている。

 二〇〇八年からは、岐阜県下呂市の観光施設で地域の民話を基にした「しらさぎ伝説」「お美津ギツネ」を演じる。劇団員が下呂市に滞在し、年間二百日以上の公演をしている。

 下呂市での公演は市の事業見直しに伴い、本年度でいったん終了し、来年度以降は未定という。後藤さんは「地元の人には、この昔話ってこんなにおもしろかったっけ、と言われる。文化の地産地消という意味で、一定の役割を果たしていただけに残念」と話す。

 横浜市でも地域に伝わる話を影絵で演じたいという。だが、市立小学校での出張公演の数は減っており、後藤さんは「子どものころに芝居に触れ、面白いなと感じてもらえる機会がつくれれば」と話している。

 横浜市内では二十九日午前十一時、午後二時から戸塚区民文化センターさくらプラザで「ふしぎな時間 もしもの国で」の公演が予定されている。料金は中学生以上千五百円、三歳〜小学生以下千円。

 活動の問い合わせは、かかし座のフリーダイヤル=(0120)088111=へ。戸塚公演の問い合わせは、さくらプラザ=電045(866)2501=へ。