「うつ病気味の兄弟との接し方が分からない」「夫が発達障害かもしれない」。なかなか周囲に理解してもらえない家族について、悩みを共有する場「コルデサロン」を今年五月、立ち上げた。こうした家族のことを、コルデサロンでは「ちょっと変わった家族」と呼んでいる。「障害」や「病」という言葉だと、自分には当てはまらないと考え、足を踏み入れるのを躊躇(ちゅうちょ)してしまいがちだから。

 水戸市内で月一回、コルデサロンを開く。セラピスト、元看護師の女性スタッフと三人で運営し、参加者同士で悩みを打ち明ける。世間話で参加者の気持ちを和らげるなど、家族の悩みが自然に口にできるよう雰囲気づくりに心を砕く。司会者役だが、「当事者としての意識は忘れない」と、自らの体験も伝える。

 小さい頃、母親から暴力を受けて育った。訳も分からず殴られて、母親に理由を聞くと、「何のこと? なぜ怒っているの?」と聞き返された。娘を殴ったことを覚えていないことに衝撃を受けた。大人になり、母親を病院に連れて行くと「強迫性障害」と診断された。

 二〇〇八年、長男の出産をきっかけに、母親から受けた虐待の記憶がフラッシュバックするようになった。子育てに追われながら「どうして母は娘を殴ることができたんだろう」と考えるとつらかった。フラッシュバックは突然起こり、気分が落ち込んだり、体調を崩したりした。

 一一年、夫に勧められ、親から虐待を受けた人たちが集うサロンに参加した。自分の体験を口にするうちに、だんだんと心が軽くなっていくことに気づいた。「同じ経験を分かち合うことでこんなにも楽になるなんて」。三年ほどサロンに通うと、フラッシュバックもなくなった。

 この経験を生かし、自分に何ができるか考え、サロンに参加するまで時間がかかったことを思い出した。「虐待」や「病」という看板がハードルになり、「私の悩みなんて、たいした悩みじゃない」と遠慮して、気軽にサロンに入っていけなかった。「虐待を虐待と意識していない人も多い。虐待でなくても、家族のことで悩んでいる人は、きっといる」。子育て支援団体の後押しもあり、気軽に相談できる場を作ることに決めた。

 コルデサロンは始まったばかり。今後、回数を増やし、参加者を医療機関につなぐネットワークづくりにも乗り出すつもりだ。「どんな小さな悩みでも構わない。気軽に足を運んで」。ハードルを低くして、参加を呼び掛けている。 (山下葉月)

<すずき・まき> 1968年7月、日立市生まれ。県立高萩高卒。水戸市内のアパレル店に勤めた後、NPO「セカンドリーグ茨城」に就職。子育て支援団体のサポートや、子どもや地元住民が気軽に立ち寄れる「310(さんいちまる)食堂」(水戸市)の運営などを手伝っている。