豊かな自然が残る蓮田市の黒浜沼。上沼(うわぬま)(二・六三ヘクタール)と下沼(二・五ヘクタール)からなり、周辺には湿地やヨシ原、屋敷林、田園風景が広がる。保全活動に取り組む「NPO法人黒浜沼周辺の自然を大切にする会」の会長、渡辺弘司さん(76)は「狭い場所なんですけど、生物が多様性に富んでいる」と魅力を語る。

 沼周辺では、少し歩いただけでも、トンボやヘビ、カエルなど普段見かけない生き物が次々と目の前に現れる。野鳥は約百四十種類が確認されている。「五月半ばぐらいに渡り鳥のオオヨシキリの鳴き声が聞こえてくると、今年も子育てをしているのかと感じる」

 ほかにもジョウロウスゲやナガボノアカワレモコウなどの絶滅危惧種も含め多様な植物も生育しており、「自然の宝庫」といえる。一九七九年には県の自然環境保全地域に指定された。

 会が発足したのは八七年(NPO法人化は二〇〇〇年)。釣り人らによる多量のごみ投棄がきっかけだった。地元有志らが立ち上がり、ごみ拾いから活動を始めた。数年後に当時の会長に誘われて入会したが、そのころも環境は悪化しており、「きれいにしなくてはいけないと思った。沼には生活雑排水が流され、水質も悪かった」と振り返る。

 良好な自然環境のバロメーターといえるホタルもほぼ姿を消す中、会は九九年に沼の近くにホタルの水場「ホタルの里」を作った。その後、会の活動や下水道の整備などで環境は改善。毎年夏になるとホタルが光を放っている。

 現在の会員数は百四十五人で、草刈りなどの保全作業や市内の小中学生への環境学習支援など幅広く活動している。指定管理者として管理・運営している市環境学習館では、野鳥や野草の観察会も開催している。

 最近問題となっているのは沼周辺の湿地の乾燥化だ。乾燥してくると、水辺特有の植物以外の植物が入り込んで生態系に影響を及ぼすといい、「絶滅危惧種が本当に絶滅してしまう」。

 沼で自生するハスの消滅も気掛かりだ。例年夏にハスの葉が水面の一部を覆うが、昨年と今年は姿を現していない。外来種のミシシッピアカミミガメによる食害などが考えられるが、原因ははっきりせず、市と連携して原因究明に乗り出している。

 新たに出現する脅威の数々。希少な生物が生息する貴重な自然環境を守るのは容易なことではない。「われわれボランティアだけでやるのは資金的にも人的にも限界がある。行政と一緒になってやり、市民ぐるみで対応していくことも大事。環境を維持し、次の世代に何とか残したい」

  (中西公一)

<わたなべ・ひろし> 東京都出身・蓮田市在住。電通大卒業後、都内の貿易商社に入社。1970年に同市に引っ越す。2014年に黒浜沼周辺の自然を大切にする会の会長に就任。同会は8月26日に黒浜沼周辺と近くの市環境学習館で「トンボ観察会」を開催する。問い合わせは同館=電048(764)1850=へ。