究極の場面でおまえを出す−。大会前の約束通りだった。

 七回表。2点差を追いつき、なおも1死一、二塁。勝負どころで、監督から「行くか」と声がかかった。

 背番号13の代打の切り札にとって、これ以上の見せ場はない。打席に入ってバットを相手投手に向け、「シャー」と叫ぶ。気合を入れるための動作に、いつも以上の力が入る。

 苦い記憶があった。今年の春季大会。好機で代打に出たのに、見逃し三振。「なんで振らなかったの」。仲間の声が悔しかった。

 あのころは、打とうと考えれば考えるほど体が動かなくなった。「結果は気にしないで、どんな場面でも自分のスイングをしよう」。そう考えることで、打撃に思い切りが出てきた。

 それでも、この日の相手は強豪浦和学院。鋭い直球とスライダーは、簡単に見分けられない。中途半端なスイングと見逃しで、あっという間に追い込まれる。

 「最後の1球は自分のスイングと決めていた」。心を落ち着け、力いっぱいバットを振ったが、空を切って三振。後続も続かず、好機を逃したチームはサヨナラ負けを喫した。

 甲子園を目指す日々が終わった実感は、まだ湧かない。でも、「やり切りました。悔いはないです」。最後に振り抜いたからこそ、そう言えた。 (井上峻輔)