◆やまゆり園家族会・大月和真会長(67)

 誤った差別思想を打ち消し、共に歩む社会を実現したい−。十九人が刺殺された相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」の事件で、逮捕された植松聖(さとし)被告(27)は本紙記者に寄せた手紙で、障害者への差別思想を今も持ち続けていると明かした。手紙を読んだ被害者家族や福祉現場の関係者たちは、被告のゆがんだ考えを強く否定し、教訓を受け継ぐ大切さを訴えている。二十六日で事件から一年となる。

 私たち入所者家族にどれだけの悲しみと迷惑をもたらしたのか、全く分かっていない。手紙には犠牲者や家族への謝罪の言葉がない。少しも反省していない、というのが一番の感想だ。

 植松被告はもともと、施設で支援をしてくれていた職員。「いいやつだった」と言う家族もいる。あれだけのことを実行してしまう引き金は何だったのか。

 手紙の大きな間違いは「意思疎通がとれない人間を安楽死させるべきだ」と、必要な人とそうでない人を勝手に分けていること。重い知的障害があっても幸せに生きる権利があるし、一緒にいて幸せを感じる。

 三十六歳の息子は自閉症で、生まれてから一度も言葉を話したことはない。それでも、思いや感情を通い合わせることができる。

 例えば、ひげをそってほしいと顎を突き出すようなしぐさをする。「お風呂だよ」と言うと自分でパジャマと下着を持って来るし、「ご飯だよ」と言うとテーブルに座って待っている。

 彼なりの楽しみもある。私がゴルフ好きでよくテレビ中継を見ているからか、コンビニに行くと必ずゴルフ雑誌を「買ってくれ」と手に取る。それで気に入ったページを破って、大事に取っておく。

 チョコレートを買って置いたままにすると、目を離した隙に全部食べてしまう。気に入ったことをしているときは、楽しくて仕方がないというように笑う。

 手紙には「重度・重複障害者を育てることが、莫大(ばくだい)なお金と時間を失うことにつながる」とも書かれている。育てるのに苦労があるのは、ある意味事実。小学校卒業まで、服や靴を自分で身に着けられなかった。それでも、障害がある中、自分なりに人生を全うしてくれれば、親として一番うれしいことだ。

 今は、二週間に一度施設から自宅に連れて来て、一緒にご飯を食べ、お風呂に入れて、一晩寝て翌朝戻る。何と言うことのないことだが、その時間を一緒に共有できることが幸せだ。

 障害者たちが少しでも生きやすくなるように、全身全霊、生涯をかけている人たちがたくさんいる。やまゆり園の職員たちもそう。大変な仕事だが、利用者のうれしそうな顔、笑った顔を見て、やっていてよかったなと感じてくれているのだと思う。植松被告が知らない世界がいっぱいある。

 私たちを傷つけた言葉を取り消し、早く自分の間違いに気付いてほしい。 (聞き手・加藤豊大)

<おおつき・かずま> 1949年8月生まれ。相模原市緑区の知的障害者施設「津久井やまゆり園」家族会の会長を2015年から務めている。自閉症がある息子の寛也さん(36)が同園に19歳の時から入所。同市中央区在住。